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- 2018/09/11 掲載
Engadget、ハフポスト、TechCrunch、今後のメディアは「コミュニティ」がカギ
3メディアの現在の戦略
アドバタイジングウィークアジアで行われた3者のセッションで司会を務めたYahoo! JAPANの岡田 聡氏は、まず登壇者が所属するメディアの取り組みについて訊ねた。
口火を切ったのはEngadget 日本版の編集長を務める矢崎 飛鳥氏だ。Engadgetは、テック系ブログメディアの先駆けとして2005年に登場し、最新ガジェットや家電などに関するニュースとレビューを届けている。
Engadgetと同様のブログメディアとして始まったのが、TechCrunchだ。同メディアは、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、業界の重要なニュースを扱う米国発のグローバルなテクノロジーメディアとして知られている。
TechCrunch Japanの編集記者である木村 拓哉氏は「ブログとしての従来の文体を継承し、自分たちの言葉でニュースを伝えられるよう努力してきた」と説明する。
ハフポスト 日本版の編集長である竹下 隆一郎氏は「ある出版社では、本のタイトルや表紙を決める際、数百人の仲間を巻き込んでいるという。彼らが本づくりから関わると、出版時には何冊も購入してくれるので一気に販売数を増やし、メディアに取り上げられてヒットする。出版界ではマスに引っかかる前に、まず数百人規模で刺さるような作り方をしている。これを参考に、我々もまずは小さなコミュニティを意識している」と語り、新しいアプローチを考案中だと説明する。
新しい指標やコミュニティづくりで読者行動を促す
木村氏は「メディアとしての特色は大切なので、文体などの“らしさ”は文化として残していきたい」と強調。
この点については「Engadgetも同様だ」(矢崎氏)という。
岡田氏は「情報を届けたいユーザーにリーチするには、プラットフォーマーへの対応も必要だ。メディアは単なるコンテンツメーカー以上の役割が求められる。大量の情報が流れる中で、伝える・伝わるための手法や行動につながる情報を提供するために各メディアではどんな取り組みをしているか」と問いかけた。
ハフポスト日本版の竹下氏は「次の行動につながることを大事にしている。2017年から数十人規模のリアルイベントを増やした。読者が足を運んでくれることは、相当なエンゲージメントとなる。参加メールにコメントも書いてくれる。そういった指標やコミュニティづくりのイベントを通じて、次のアクションを考えている」と語る。
イベントという点では、毎年2000人を超えるスタートアップの大きな催しを開催しているのが、TechCrunch Japanだ。木村氏は「特にスタートアップ業界では、コミュニティに参加することが大切。イベントを通じて参加者につながりができ、実際に出資してもらえたこともあると聞く。その評判が伝わり、次の行動につながる機会も増えている」と評価した。
Engadgetでは、さまざまな新商品の記事を提供している。矢崎氏は「新商品の情報は、メディアに頼らなくてもブロガーでも発信できる時代となっている。そこで我々はプロとしての誇りをもって、素材をどう料理するかという点で勝負したい」と強調する。
ユーザーの心に突き刺さるコンテンツとは?
次に岡田氏は、早いサイクルで流れる情報に対し、ユーザーの心に刺さり、定着するようなコンテンツをどうつくるかと質問した。ハフポストでは、ストック型の情報としてキャンペーンを張っているという。
「“#MeToo”も同様の流れで広がった。自分たちが報道する理由も発信したり、専用のメール窓口も用意したりしている。そうすると読者が繰り返し記事を読んでくれる。こうしたキャンペーンについては今後もこだわりっていきたい」(竹下氏)
一方、「ストック型は難しい」と語るのは矢崎氏だ。
「テクノロジー系は新情報に対する価値が最大のバリュー。そういう点でEngadgetではストック型の展開が難しいので、アーカイブで評価してもらっている。また特化型メディアとしてビデオにも挑戦中だ。米国で提供されている英語のコンテンツを自動翻訳して出す取り組みを行っている最中だ」(矢崎氏)
またTechCrunchの米国版では、その日の重要なトピックスを3分間ニュースとして動画で配信しているという。「日本版ではそれほど動画に力を入れていないが、音声なしで動画だけを出している。これは、満員電車の中でも安心して見てもらえる工夫だ」(木村氏)
動画は競争が厳しいため、短いものを制作しているというハフポスト。「AbemaTVのようにリソースを投下して本気でやっている企業に勝つのは大変。我々は学生インターンが多く、彼らが面白い動画を制作してヒットすることもある。彼らには品の良いYoutuberになってほしい」と竹下氏は語る。
【次ページ】コンテンツの良し悪しを図る重要な指標
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