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厳選した旅館とホテルのみを提供する会員制宿泊予約サイト「relux(リラックス)」を運営するLoco Partners。2013年に立ち上げたreluxはわずか2年程度で約20万人もの会員を獲得し、急激な成長を続けている。宿泊予約サービスの領域は、じゃらんや楽天トラベルなどの圧倒的な大手が存在し、ハイブランド市場も一休という競合がいるが、そうした中でなぜreluxはこれほどの飛躍を遂げることができたのか。Loco Partners 代表取締役の篠塚孝哉氏にデジタルマーケティング戦略などについて話を聞いた。
(聞き手は編集部 松尾慎司)
お客さまの満足度とは期待と結果のギャップ
──そもそも「relux」を立ち上げようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
篠塚氏:私は以前、リクルートに勤めていたのですが、常々「クライアントオリエンテッド」なサービスが多いと感じていました。たとえば宿泊者の満足度が高いか低いかではなく、クライアント(広告出稿主=宿泊先)の広告費やその他の工夫によって検索結果の上位表示に持ってくるといった状況で、宿泊者の満足度を最優先に考えているサービスはあまりないのではないかという疑問です。
そこで、とにかく宿泊者が満足するかしないかだけを評価基準に据えた「100%カスタマーオリエンテッド」なサービスモデルを作りたいと考えて立ち上げたのが「relux」です。現在、約700社の宿泊施設と契約しており、会員数は約20万人、また非会員でサイトを閲覧されているアクティブユーザー数はその数倍にもなります。
──じゃらんや楽天トラベルなどの大手はもちろん、高級感を打ち出した宿泊予約サイトでは一休.comなどもあります。reluxならではの差別化ポイントを詳しく教えてください。
篠塚氏:具体的には、「厳選」「使い勝手」「お得」という3つの差別化ポイントがあります。
まず1つめの「厳選」については、まさに宿泊者目線に立った厳しい掲載審査を行っています。審査は、部屋/風呂/料理/サービス/空間という大きく5つのカテゴリで合計約100個の掲載審査項目を設けており、営業担当者が必ず現地に赴いて調査を実施しています。
実際に泊まっているお客さまの顔を見せていただいたり、働いている方とコミュニケーションを取らせていただいたり、お部屋やその他の空間を見せてもらったりして、最終的に掲載可否のジャッジをするというスキームです。さらに、それに基づいてStandard、1つ星から3つ星、そして最上位のThe MUSEUMまで5段階に分けています。
──宿泊先から掲載料をいただくというビジネスモデルは他のサービスと変わらないわけですよね。Standardと判定されたら掲載を断られませんか?
篠塚氏:もちろん問題となることは少なからずあります。それでも、最も重要なことは宿泊者の方が満足することです。宿泊者が満足するからこそクライアントの売上につながり、また満足につながるという順序で考えています。また、Standardだから満足度が低いというわけではありません。Standardランクでも、非常に厳しい審査を通過していることには変わりがなく、むしろ期待値の調整も事前にされているので逆に満足度が高まるということもあります。
お客さまの満足度とは、期待と結果のギャップにあると考えています。事前の期待値が高過ぎるとガッカリしますし、また適切であれば満足していただけるものだと思います。価格が安くても期待を上回る体験が得られれば、お客さまは高い満足度を示されるでしょう。その結果、予約が入りやすくなるので、クライアントの売上は上がっていきます。広告費などの力でどうにかするのではなく、もっとサービスレベルを上げていきましょうというご提案もさせていただきます。
大手企業ができないことをやる
篠塚氏:2つめの「お得」については、reluxに掲載されている宿泊施設にはすべて「最低価格保証プラン」をうたっています。これは万一、他のサイトで、同じ内容の宿泊プランでreluxより安いところがあった場合には、その差額分を返金するというシステムです。また、他社サイトでは宿泊料金の1~2%のポイントを会員に還元していますが、reluxではこれを5%に設定しています。
3つめの使い勝手は、サイトの見え方や操作性、おもてなしレベルの優位性ですね。ユーザーインタフェースはサイト内での動線も十分に考えて作っているので他のサイトよりも迷わないですし、掲載する写真にも一定の基準を設けています。会員の方からは写真を見ているだけでも旅行気分を味わえるといったお声も寄せいただいています。
また無料の旅行コンシェルジュデスクを設けているのも大きな特長です。一般的に旅行に出かけるのは年に1~2回ぐらいだと思いますが、高級旅館はそれなりに高額です。そこで旅館選びに失敗したくないということで、結構悩まれる方が非常に多いのです。
ニーズがぼやっとしている段階から、海がいいですか、山がいいですか、あるいは和食がいいですか、洋食がいいですかといった要望をヒアリングさせていただいて、具体的なプランをご提案させていただくサービスです。Webサイトの問い合わせフォームやお電話、あるいはスマホで相談できるようになっています。完全に人が介在しているサービスで、これも我々の大きな差別化ポイントの1つです。
──かなり手間をかけていますね。また、いずれも大手では決して真似のできないサービスばかりです。
篠塚氏:大手ができるかできないかではなく、あくまで宿泊者が求めるサービスを提供しており、それが結果的にマネしづらいものであったと考えています。手間やコストはかかりますが、それこそが「100%カスタマーオリエンテッド」につながるものだと考えています。
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