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デジタルマーケティング部隊は社内に抱えるべき
──reluxを立ち上げた2013年4月から、認知度拡大のためにFacebookを活用されています。貴社のマーケティング戦略とはどのようなものでしょうか。
篠塚氏: 実は最初からソーシャルメディア1本で行こうと決めていました。その理由は明確で、2013年当時、Facebookをマーケティングプラットフォームとして使っている企業は、今と比べるとまだまだ少なかったです。いわば“ホワイトスペース”で、また今後成長する市場だという確信もありました。また、ソーシャルメディアと旅行領域との相性が非常によいと感じていました。
もちろんリスティング広告で「relux」や「高級旅館」というキーワードを買っておくということは粛々とやっていますが、それ以上のことはほとんど行っていません。たとえば広告媒体としてグーグルやヤフーは優れていますが、先行する大手宿泊予約サイトでは年間20億円以上もの費用を使っています。そこに我々が1,000万円程度のコストを投下したところで、到底太刀打ちできません。
そこで何かよいメディアはないか、空いている広告スペースはないかと見回した時に、目に留まったのがFacebookでした。ようやくFacebookページというものが認知されて多くの企業が作りはじめていた時期で、これしかない、と思いました。
また2013年当時公開されていたFacebookの国内会員数は、2012年9月の時点で1500万人でしたが、米国や台湾での利用状況を見ていると、国民の約40~50%は利用するようになるだろうと確信していました。現在Facebookの国内会員数は2400万人(2015年6月末時点)まで来ていますが、非常にタイミングのいい時期の参入だったと思います。
旅行領域との相性の良さというのは、Facebookページでは“keep in touch(=お互いに連絡を取り合うような)“のコミュニケーションができることです。これがECサイトやメールマガジンでのコミュニケーションなら、これを買いませんか、あれを買いませんかという形になりがちで非常に難しいのですが、Facebookならかなりゆるいコミュニケーションをとり続けることができます。
日々旅行の楽しさや観光地のすばらしさを情報として発信すれば、押し売りではなく、自然に流れてきて、ただ見ていても気持ちのいい情報を提供することができる。そして、年に1~2回の旅行に行きたいタイミングで思い出してもらえるのがreluxだ、という仮説で取り組みました。
──最近ではFacebook広告も広告主が増えてきました。まだ費用対効果はあるとみているのでしょうか。
篠塚氏: まだまだあると考えています。今はFacebookページでのファンの数が31~32万人になり、かなりレバレッジがかかるようになってきました。ようやく今、という感じです。Facebookにも大いに成長の余地があると見ていて、引き続き投資を行っていきます。
ただし1本の矢だけでやっていくつもりはなく、TwitterやInstagram、LINEなど他のソーシャルメディアの利用にも力を入れ始めています。先ほども少し述べましたが、たとえばLINE@(ラインアット)で会員の方の旅行相談を受け付けています。
──ソーシャルメディア活用を成功に導くポイントを教えてください。Facebookなど発展途上のサービスの場合、仕様の変更も少なからずあります。
篠塚氏: 私が考える最大のポイントは、変化に柔軟に対応できる組織作りが重要だということです。エンジニアは内製化して社内でやろうという風潮がありますが、マーケティングチームのすべてを社内で管理している会社は少ないと思います。当社は広告出稿から運用までを社内で行っており、旅行キュレーションメディアの「relux Magazine」なども社内のメンバーで運営しています。
だからこそ、仕様の変更はむしろ新しいチャレンジができるチャンスです。たとえば社外の代理店などに依頼してしまうと対応には数日かかります。それを当日、あるいは数時間以内に対応できれば、大きな差別化につながるでしょう。エンジニアの次に、マーケティング部隊の人数を増やしているのはこうした考えに基づくものです。とにかく高速でPDCAをまわすには、社内ですぐそこに座っていることが大切なのです。
ファンは潜在顧客、参考にしているのは自動車メーカーのマーケティング
──最後に今後の成長戦略と、その中でデジタルマーケティングが果たす役割について、お聞かせください。
篠塚氏: これまでのreluxは、日本人に対して高級旅館や高級ホテルの情報や宿泊予約サービスを提供する領域だけでしたが、この3月には中国や台湾、韓国などからの訪日宿泊者をさらに拡大し、活性化していくことを目的として、上海に営業所を立ち上げました。これがまず事業拡大の1つの大きな柱です。
また我々が目指しているのは、宿泊者と宿泊施設との「いいマッチングを増やすこと」です。そこで事業拡大の2つめの柱としては、現在対象としている高級旅館や高級ホテルに加えて、中価格帯の宿泊施設やチェーンホテル、さらには海外の宿泊施設もどんどん取り込んでいきたいと思っています。さらにその先には、飛行機やレンタカー、バスの手配サービスなども実現して、我々の提供する旅行領域のバリューチェーンを広げていきたいと考えています。
あとはまったく違った方向性として、reluxと同様のスキームで飲食店舗や美容室の予約サイトなども実現したいと思っています。いわばreluxのノウハウを横展開していくというアプローチですね。
デジタルマーケティング戦略については、基本的に今注力しているソーシャルメディアを使ったマーケティング活動を引き続きメインに据えて、展開していきます。Facebookのファン、あるいはrelux Magazineの読者の方などはいわばリード(潜在顧客)です。これをreluxカスタマープラットフォームと呼んでおり、そうした人たちが旅行に行くタイミングでreluxを使っていただいて、顧客として顕在化していくよう試みています。
旅行はそう頻繁に行くものではありませんし、1回あたりの単価も決して安いものではありません。なので、実はこうしたデジタルマーケティングへの取り組みに当たっては、購買単価の高い自動車メーカーのマーケティング戦略なども参考にさせていただいています。
──本日はどうもありがとうございました。
(聞き手、構成:編集部 松尾慎司 執筆:西山毅)
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