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2017年10月06日

ナカヤマン。氏とワコール猪熊氏「インフルエンサーマーケティングに興味ない」と一蹴

コンテンツマーケティングやインフルエンサーマーケティングを、情報感度の高いユーザーを対象に先行体験してきたファッション業界。その先行事例から見えたすべての業界に応用できるデジタル戦略とは? ワコール 執行役員の猪熊 敏博氏と彼が指名したデジタルクリエイター、スクリイム・ラウダア 代表のナカヤマン。氏が解き明かす。

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一番広いキーノートの会場が満席に。インフルエンサーマーケティング、ラグジュアリーブランドの最新事例、コンテンツクリエイションの思考法など、アドテク界隈では聞けない貴重なセッションとなった

「深さ」を手放した現代、広告は文化であるべきか

 京都/大阪/神戸の3都市開催された「第4回アドテック関西」。その最大規模で行われた初日京都のキーノート講演では、『全ての業界に適用可能なデジタル戦略とは?−インスタグラム以降のデジタル戦略、インフルエンサーマーケティングは本当に重要か』と題し、2名の語り手がリレー形式で登壇した。まず京都に本社を置くワコールでエンドユーザーとの関係構築を手がける猪熊 敏博氏が登場。クライアントサイドの目線で語った。

「ワコールもファッション業界の一員として存在していますが、今日のテーマは僕でも難しい。カルチャーを発信する側、トレンドを生み出す側であるファッション業界が先行体験したコンテンツマーケティングの進化、これは非常に興味深いテーマだと思う」(猪熊氏)

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ワコール 執行役員総合企画室 広報・宣伝部 部長
猪熊 敏博氏


 ナカヤマン。氏がメインテーマを語る前に、猪熊氏が企業から発信するメッセージ、コミュニケーションについての視点を展開した。自戒を含めたような問題提起であった。

「昔より受け取る情報がつまらなくなったように思う。広告を売り上げに繋げたいという欲に寄りすぎているんじゃないでしょうか」(猪熊氏)

 予算と手間暇をかけてブランドカルチャーを育てるのは難しい時代になったのかもしれない。SNSが普及し、多様な情報が可視化される現在、現場では広告・宣伝・販促の境界を越えた数値実績が求められている。しかし猪熊氏が用いた「広告は文化である」というフレーズが向かうべき方向にも感じた。

「改めて、ストーリーやドラマが求められる時代に戻っていると感じます。電車の中でみんながスマホを見ています。でも見ているだけなんですよ。テレビ、ラジオ、雑誌、交通広告、なんでもそう。今の世の中は簡単に情報を得る利点と引換えに、深さを手放してしまった気がします」(猪熊氏)

 能動的に情報を取りに行かない時代に、インスタグラムやインフルエンサーが注目を集めるのはなぜか。共感とは別の、何かしらの嗅覚、琴線に触れる肌感、つまりカルチャーの香りがあるからではないだろうか。

インフルエンサーに興味はない、“木を見て森を見ず”になるから

 今年に入り、ユニクロやジーユーなどを手がけるファーストリテイリングは、自らを製造小売業(SPA)から“情報製造小売産業”への抜本的変革を提言した。情報戦略を“デジタル”や“SNS”など単焦点で捉えているだけでは、いずれ限界が訪れるということを、先行体験しているのがファッション業界かもしれない。一方でファッション業界の内部は旧態依然としたアナログ文化から変化しようとしない側面も強い。

 そんな難易度の高いファッション業界に特化したデジタルエージェンシー「ドレスイング」の代表を、SNS黎明期の2007年の設立から務めてきたのがナカヤマン。氏である。SNSを用いたコンテンツマーケティングを、ルイ・ヴィトン、グッチ、ディオールなど有名ブランドをパートナーに実施してきたデジタルクリエイターである。

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[scream louder] Inc. USA代表
デジタルクリエイター ナカヤマン。氏


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 猪熊氏から“長年の憧れの人”であり”ファッション業界で最も愛されるクリエイター“として壇上に招かれたナカヤマン。氏。本講演の副題には『インスタグラムとインフルエンサーマーケティングは重要か』とあった。氏がこれまで手掛けてきた数々の成功事例では、SNSやインフルエンサーが重要な役割を担っているというのにだ。その真意は、講演冒頭に会場に投げかけられた質問で明かされた。

 「皆さんに質問です。本当にインスタグラムやインフルエンサーに興味ありますか?」この問いに当然だが会場の大半が手を挙げる。しかしナカヤマン。氏はこう続ける。

「僕は興味ないですよ。インフルエンサーの友人も多いので愛情はありますが、ビジネス上の興味はないです。そこに興味を注ぐことは、まさに“木を見て森を見ず”の状態だからです」(ナカヤマン。氏)

 次々に起こる新しいトレンド。そのひとつひとつに一喜一憂することはマネージメントのレイヤーがやることではないとナカヤマン。氏は話す。本質に立ち返り、思考を変える方向に導いていく。そして、どんな未来が来ても対応可能なスキームこそがデジタル戦略において最重要だと、冒頭から明快なメッセージを提示した。

「2010年にある出版社から依頼を受けました。2010年から2015年までのデジタル戦略を提案して欲しいと。ボクはSNSの浸透、進化、雑誌の部数減少などのトレンドをファッション誌の性質に当てはめて、5つの提案をしました」(ナカヤマン。氏)

 講演でお披露目された当時の提案は、ファッション誌が2016年から慌てて対応し始めた、インスタグラマーの囲い込み、インスタグラムエージェンシーとの協業、オンライン記事のタイアッププランなどを見事に言い当てたものだった。そのクライアントが2010年時点から採用していたら一人勝ちの状況が作れただろう。そして続ける。

現在は“不完全な未来”、逆に言えば”理想の未来”は独占できる

「つまり、現在は“不完全な未来”と言えます。現在は、過去に想像し得たベストな状態には構築されていません。2010年まで、たった7年さかのぼるだけでも説明がつくのです。逆に言えば、理想の未来と現実の差分を埋めれば、”理想の未来”は独占できる。時間を巻き戻して、それを実現するのが企画であるべきです」(ナカヤマン。氏)

 ナカヤマン。氏は過去の数々の成功事例に共通する企画コンセプトがその「不完全性の解消」だと語る。そして2015年以降、彼が企画に用いているのが「Single, Powerful Contents for Multiple Channel」という戦略スキームだと言う。

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デジタルプロモーションに必要な要素を解説するナカヤマン。氏。トップクリエイターの裏側に隠された綿密なロジックに会場は引き込まれた


「企画というものは、曖昧なままにしている部分があると結果が出ないものです。曖昧さは、企画時点では都合の良い解釈をされ、実施時点では失敗の原因となります。その曖昧さをなくすコツは便利な単語を使わないこと。例えば『メディア』という単語。当社ではチャネルとコンテンツというワードで統一しています」(ナカヤマン。氏)

 具体的にはどういうことか。コンテンツとチャネルの関係性を説明するために、芸人の“ネタ”と“披露する場”に例えて説明がなされた。

「ボケて、突っ込む。この一連の流れがネタ、つまり”コンテンツ”です。昔は、演芸場で芸人さんがネタを披露するのが普通でした。時代が進んでテレビが登場すると、より多くの視聴者に届くテレビが主戦場になります。この演芸場やテレビが”チャネル”です。

 2017年現在、僕が駆け出しの若手芸人だとしたら、テレビ一本で勝負しようとはしないでしょう。今はインスタグラム、YouTube、あらゆるSNSを通じてネタの配信ができます。選択肢が増えていることを十分に利用します。

 視聴されやすい尺は? 画面は縦長、横長どちらが最適? 音声ありの視聴は何割? 渾身のネタを各チャネルに併せて最適化して提供するでしょう。各チャネルの向こう側にいる視聴者の好みや性質が各々違うからです。前提として、チャネルごとにネタ自体を作り分けることは創作の労力の意味で効率が悪すぎる。つまり重要なのは、演出の最適化を想定した『渾身のネタ』たった一つを保有すること。”Multiple Channel”市場で勝敗を決めるのは、”Single Powerful Content”です」(ナカヤマン。氏)

 閲覧されるチャネルごとに、コンテンツの演出を調整しながら配信する。その多面性が芸風やキャラクター、つまり“ブランド”に繋がっていくのが容易に予測できる分かりやすい例えだ。続いてナカヤマン氏。が手掛けたジーユーのインスタグラムプロモーション事例を通じ、コンテンツとチャネルをどのように組み合わせ、どのような演出を用いて売上までに繋げるのか、具体的な解説が行われた。

【次ページ】 実利を生み出す、視聴率の取れるスキームとは? また、理屈では分かっていても成功事例がパクれないワケ

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