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- 2018/04/20 掲載
広告なしSNS「Vero(ヴェロ)」は、フェイスブックに取って代わるか?
個人情報の不正利用で高まるSNSへの不満
ソーシャルメディアへの風当たりが強まっている。8700万件の個人情報が英国の調査会社ケンブリッジ・アナリティカによって不正に収集・利用されていたとして、フェイスブックに批判が集まっている。ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブック上でユーザーの「パーソナリティ診断」を行うアプリを通してユーザー情報、友だち、「いいね!」を押したコンテンツなどの情報を取得・利用し、2016年の米大統領選におけるトランプ氏のキャンペーンに使ったと報じられたのだ。Twitterでは「#deletefacebook(フェイスブックを削除しよう)」運動が立ち上がり、企業・個人がフェイスブックアカウントを削除する現象まで巻き起こっている。メッセンジャーアプリWhatsAppの共同創業者ブライアン・アクトンも同運動への賛同を示し、イーロン・マスク氏はなんと、260万人のフォロワーを持つスペースXとテスラのフェイスブックページを削除してしまった。
It is time. #deletefacebook
— Brian Acton (@brianacton) March 20, 2018
I didn’t realize there was one. Will do.
— Elon Musk (@elonmusk) March 23, 2018
ソーシャルメディア広告には全世界で300億ドルが費やされている。その一方で、1995年以降に生まれた「ジェネレーションZ」の31%は、パソコンに「広告ブロック」ソフトを導入している。彼らは広告よりも、インフルエンサーなどから購入するべき商品について学ぶのを好む。企業がどんなに予算をつぎこんでも、彼らは無理に見せられる広告に興味を示さないのだ。
さらに、フェイスブックやインスタグラムは独自のアルゴリズムによって、フィードに表示される順番を決定しているが、この手法についてもユーザーは不満を抱いている。コメントやシェアが多い投稿が優先的に表示されるため、家族や友人の近況よりも、刺激的なニュースが目を引いてしまう。
また、これはフェイスブックに限らずSNS全般にいわれることだが、フェイクニュースやデマが共有・拡散されてしまう問題も指摘されている。フェイスブックはフェイクニュースに対抗する取り組みを進めているが、膨大な投稿の中から情報の真偽を見極めるのは容易ではなく、その実現は難航しているという。
課金モデルのVeroが急速に成長中
こうしたソーシャルメディアへの不満を解消すると期待され、2018年2月頃から急速に注目を集めているのが「Vero」だ。2015年に立ち上げられた同アプリは、広告を表示せず、時系列に投稿が表示されるという特徴を持つ。インスタグラムと同様に、画像や動画を共有する機能があるため、写真家や映像作家、ソーシャルメディア・インフルエンサーの間で人気を呼んでいる。インスタグラムでも「#vero」のハッシュタグが付いた投稿は50万件を超え、口コミが急速に広がっている。アプリストアでも最も人気のあるアプリの1つとなり、米国のiOSユーザーだけでも50万人がダウンロードした。同社は2018年3月の段階で、ユーザー数が300万人に達しようとしていると述べている。
多くのソーシャルメディアが広告から収益を上げるビジネスモデルを取っているのに対し、Veroはユーザーから課金するサブスクリプション型のビジネスモデルをとっている。そのため、フェイスブックやインスタグラムのように広告ビジネスのために多くの個人情報を収集する必要がなく、転用される恐れも少ない。これがユーザーを安心させる要素となる。
Veroは初めに登録した100万人のユーザーは「生涯使用料無料」にすると発表している。アプリを導入する敷居を下げ、ユーザーが増えるごとにアプリの魅力を高める「ネットワーク効果」を実現する狙いだ。ただし、現在は急速なユーザー増加に伴う障害発生も起きているため、生涯使用料無料のユーザー登録を延長している。
Veroでは投稿公開設定を細かく指定できる。また、ユーザー同士の繋がりを「親友、友達、知り合い」の3段階で評価できる機能もある。同アプリが収集するのは、ユーザーの名前・Eメール・電話番号だけだ。
ユーザーは、写真・歌・映画・本・位置情報などを共有できる。また、ユーザー同士のチャットや通知機能もある。登録したユーザーは、電話帳に登録された友人を招待し、つながりを増やしていく。アカウント認証された著名人のフォローを推奨する機能も提供される。
資金を投じて投稿をプロモーションすることはできないが、企業がVeroのアカウントを作成するのは可能だ。魅力的な商品や投稿を通してフォロワーを増やし、「buy now(今すぐ購入)」機能によって、商品を販売できる。Veroは、成約時に手数料を徴収する仕組みだ。
【次ページ】乱立するソーシャルアプリは新たな価値を提供できるか
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