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世界195都市で基幹交通として採用されているバス高速輸送システム(BRT)導入に向け、国内の大都市で模索が始まった。神戸市が7月から実証実験に入ったほか、福岡市や新潟市など全国で試験走行が進んでいる。BRTは地下鉄や鉄道ほどコストがかからず、路線バスより輸送力が大きい。福岡大工学部の辰巳浩教授(交通計画・都市計画)は「都市のにぎわいは常に動くが、その変化に対応しやすいのもBRTの強み」とみている。しかし、BRTが実力を発揮するための専用レーン確保が進んでおらず、新時代の都市交通として定着するための高いハードルとなっている。
輸送力と高速性、定時性がBRTの3大機能
BRTはBus Rapid Transitの略で、国土交通省は2両のバスをつないだ連節バスとバス専用レーン、専用道路などを組み合わせた交通システムと位置づけている。
連節バスの輸送人員が通常のバスより多いうえ、専用レーンを走れば渋滞に巻き込まれず、高速で時間通りに目的地へ到着できる。BRTは輸送力と高速性、定時性という3つの機能を兼ね備えているわけだ。しかも、専用道路を建設しなければ地方自治体の投資を抑えられ、地下鉄や鉄道に比べてはるかに安く整備できる。
本格的なBRTは1974年、ブラジル南部のクリチバで最初に登場した。人口176万人、パラナ州の州都となるこの街では、幹線道路にバス専用レーンが設けられ、3両編成の連節バス「ビ・アルチクラード」が走っている。
乗車定員270人とかなりの輸送力を持ち、ラッシュ時には1、2分間隔で運行することもある。乗り場は専用レーン内にあり、そこで運賃を支払う形式のため、乗降に余計な時間を取られることがない。BRTの乗り場からは郊外向けの路線バスが運行、市内の交通網を形成している。
クリチバの事例は欧米各国で導入されたほか、台湾などアジア、アフリカ諸国にも広がってきた。米シンクタンク世界資源研究所のまとめでは2015年8月現在、世界195都市で400を超す路線が運行している。
国内では、茨城県、岩手県などで廃線跡や東日本大震災で被害を受けた線路に専用レーンが設けられ、BRTと称して通常のバスが運行を始めた。しかし、ともに地域の基幹交通というより、鉄道代替バスの色合いが濃い。
神戸、福岡では一般道路を連節バスが試験走行
神戸市の実証実験は神戸開港150年の記念事業として開かれる「海フェスタ」に合わせ、市中心部の三宮地区から会場のメリケンパーク、神戸空港へ116人乗りの連節バスを1日7往復走らせた。神姫バスが協力している。
運行初日の15日はJR三ノ宮駅前に試乗希望の市民が列を作り、メリケンパークまで15分、神戸空港まで20分の旅を楽しんだ。ルート上には急角度の右左折が複数あるが、特に問題なく運行でき、乗降場での停車もスムーズだった。
神戸市内は三宮、元町、新開地など中心部をJRや私鉄、地下鉄、ポートアイランドをポートライナーが走っている。しかし、混雑が常態化しているうえ、神戸市が三宮地区の再整備を計画していることから、将来のBRT導入に向けて実証実験を進めた。
神戸市公共交通課は「専用レーンの確保など今後の方針は固まっていないが、実証実験の結果を踏まえて前向きに検討していきたい」と語った。
神戸市よりひと足早く2016年8月から連節バスの実験を続けているのが福岡市だ。西日本鉄道と連携し、ウォーターフロント地区の博多港国際ターミナルと天神地区、JR博多駅を個別に結ぶ第1段階、博多港、天神、博多駅を循環する第2段階の実験を終えた。
6月からは第3段階に入り、循環ルートの運行便数を1日12便から62便に増やした。従来の運行間隔100~110分が20~30分になり、実際に導入した場合に近い形にしている。
福岡市はウォーターフロント地区再整備に合わせ、公共交通による都心拠点間の交通アクセス向上を計画しているほか、天神地区再開発で予想される交通渋滞の緩和策も検討している。そこで白羽の矢が立ったのが連節バスだ。福岡市公共交通推進課は「実験結果を精査したうえで、バス優先レーンの拡充など次の方策を考えたい」と意欲を見せた。
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