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- 2023/06/29 掲載
激怒されいじめられ……物流と荷主の「暴力的パワーバランス」を生んだ不条理なワケ
連載:「日本の物流現場から」
荷主からよく言われた「嫌ならやめたら?」
ウチの仕事を続けるのが嫌なの? いいよ、やめたら? どうせ代わりはいくらでもいるから──このように荷主企業から言われた物流企業は、恐らく多いのではないか。たとえば、運賃の値上げ交渉。たとえば、荷役料金の値上げ交渉や、作業内容の見直し。たとえば、保管料や寄託料金の値上げ交渉。こうしたシーンでよく見られる光景だ。
ある物流企業(以下、A社とする)では、「貨物の出荷依頼を、遅くとも午後一番には出してもらえないでしょうか?」と荷主に訴えたことがあった。その荷主との取引では、早くても18時過ぎ、遅い場合には21時近くまで、出荷依頼が遅れることが日常化していた。このため処理を行う事務員は、出荷依頼が届くまで退社することができない。
そしてトラックの配車計画も立案できない。さすがにドライバーや倉庫作業員を出荷依頼到着まで待たせる(在社させる)ことはないが、出荷依頼がなければ、翌日の作業における見通しが立たない。ドライバーや倉庫作業員も、「明日は何時に出社すればいいのだろう?」「明日の作業計画は?」とやきもきしながら、自宅で連絡を待つ状況が続いていた。
さすがに耐えきれず、A社部長は荷主に直訴した。結果は先に述べた。
「ウチの仕事を続けるのが嫌なの? いいよ、やめたら? どうせ代わりはいくらでもいるから」
荷主の担当者から、このように言われてしまったのだ。
荷主の理不尽が招いた「無情な末路」
このエピソードには、まだ続きがある。このような状況に耐えきれず、A社から転職する倉庫作業員、ドライバー、事務員が現れ始めたのだ。当然、現場のオペレーションにも影響が出て、荷主の希望通りの配送をこなせないケースが生じ始めた。
「人が辞めたから配送がこなせない? A社さんが、ブラック企業だからじゃないの!? あなたの会社の問題で、うちの仕事に穴を開けるなよ!!」、荷主担当者は、このように言って、A社部長を叱責した。
「A社をブラック企業にしたのは、他ならぬあなただろう!!」、A社部長は叫びたい自分を堪えた。
荷主、あるいは配送先の過剰サービス要求や、理不尽な要求・行動に、ずっと運送会社・倉庫企業などの物流企業は耐えてきた。いや、耐えざるを得なかったのだ。
口答えをすれば、「代わりはいくらでもいるから」と言われ、実際に仕事を切られた物流企業もたくさんいる。 【次ページ】「暴力的パワーバランス」を生んだ根本原因
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