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  • 2015/07/01 掲載

機械学習で需要予測を誤差10%以下に、アサヒビール デジタル戦略部の挑戦

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縮小が続く国内酒類市場。モバイルやソーシャルの拡大に伴って、消費者の購買行動も大きく変化している。こうした中、酒類大手のアサヒビールが立ち上げたのが、経営直下の部隊「デジタル戦略部」だ。そのデジタル戦略部が目覚ましい成果をあげつつあるという。その1つが「新商品の需要予測」だ。商品によっては誤差率1%以内という驚きの結果も得られた「機械学習」を活用したその取り組みについて、アサヒビール 経営企画本部 デジタル戦略部 担当副部長の山本薫氏が語った。
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今やビールもデジタルなしでは語れない
(写真:Pittaya Sroilong

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 酒類大手アサヒグループの2014年における年間売上高は1兆7,854億円で、うち9,419億円をアサヒビールが展開する酒類事業が占めている。日本酒以外の酒類はすべて取り扱っているが、実際にはビール類の売上が8割以上にのぼる。

 一方で、国内酒類市場は縮小が続く。矢野経済研究所の調査によれば、2014年度の国内酒類市場規模(メーカー出荷金額ベース)は前年比99.3%の3兆6,054億円で、2007年の3兆9,068億円から3,000億円も縮小した。

 こうした中でアサヒビールが立ち上げたのが「デジタル戦略部」だ。ネット人口が拡大し、消費者自身が情報収集と発信を行い、消費者の購買活動も大きく変化してきた。さらに少子化に伴って、今後ますます国内酒類市場が縮小していく中で、営業活動や情報発信を強化し、消費者とコミュニケーションを取り続けることで関係性を強化していく必要性があった。

 「ガートナー ビジネスインテリジェンス&アナリティクスサミット2015」で登壇したアサヒビール 経営企画本部 デジタル戦略部 担当副部長の山本薫氏は、「デジタル戦略部」立ち上げまでの同社の課題を次のように語る。

「環境変化にいち早く対応しようとしても、社内には大きく2つの課題がありました。1つめが、全体最適の視点で戦略自体を取りまとめて推進する部署がなく、企業としての発信力やノウハウが不足していたこと、そしもう1つが、デジタルを分かっている人が上層部にそれほど多くなく、その中で新しい取り組みをするための予算を確保しなければならなかったことです」

 そこで2013年4月、まず経営企画本部の経営企画部内にデジタルコミュニケーション戦略室が設立された。経営に近い場所で迅速な意思決定を行い、グループ全体の売上の半数以上を占めるアサヒビールとして、全体最適でグループ横断の取り組みや横展開をしていくことを視野に入れたものだ。

 そして約1年半後の2014年9月、山本氏が異動してきたタイミングでデジタル戦略部に昇格した。部長1名/メンバー7名の体制で、“アサヒビールの継続的な成長をデジタル技術で支援する”ことをミッションに掲げている。主な業務は大きく4つだ。

「まずデジタル技術を活用して企業価値を向上すること、次にB2Bサイトの運営など得意先への情報発信を強化し、iPadなどのデバイスも利用しながら営業活動の効率化を支援すること。またEC事業者との取り組みを強化すること、そしてビッグデータの活用を促進すること。具体的な取り組み領域としては、対消費者、対取引先、対社内機能という3つの強化ポイントがあり、それらを支えるための共通基盤の構築も課された役割です」

 さらにデータ活用の観点からは、読者の属性分析やWebコンテンツと連動した飲食料店への送客キャンペーンといったO2O施策などにも取り組んでいる。

ビッグデータでアサヒビールの未来を創りたい

 設立当初、デジタル戦略部は、各部門の困ったことを聞いて改善していくという小さな業務改善からスタートした。将来的には業務改革レベルの取り組みを行うことで、売上や収益の拡大に繋げていくことを最終目的とした。

「個人的にはビッグデータを活用して、アサヒビールの未来を創りたいと思っています。またデジタルとリアルを融合して、アサヒファンをさらに増やしたい。そのためにお客さまと長期的にコミュニケーションを図り、一人一人のライフタイムバリューを長期にわたって最大化していきたいのです」

 具体的には、自社ホームページはもちろん、日経BP社と立ち上げた情報提供サイト「CAMPANELLA(カンパネラ)」のようなオウンドメディア、ECサイト、さらにはSNSなどの外部サイトといったオンライン情報と、日々の営業活動や顧客の声といったオフライン情報をすべて統合して、売れ筋商品や顧客属性などを各事業部門に適切な形で提供することだ。

【次ページ】機械学習を活用、新商品の需要予測で誤差1%も!
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