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- 2015/06/03 掲載
サントリーがコカ・コーラを逆転? ドリンク戦国時代、JTの次の買収先はあの企業
ドリンク専業メーカー業績不振の陰で
緑茶飲料発売30周年という今期の業績見通しは、売上高が6.8%増の4,600億円、営業利益が31.7%増の150億円、経常利益が24.7%増の140億円、当期純利益が19.3%増の87億円で、増収・2ケタ増益で前期の落ち込みを取り戻す構えだ。
伊藤園は経常利益ほぼ半減という前期の業績悪化の原因について、消費増税後の反動減の長期化、円安に伴う原材料・燃料コストの上昇とともに夏場の記録的な日照不足、台風や大雨など全国的な天候不順の影響を挙げているが、もう一つ、「競争激化」という言葉で業界環境の厳しさも指摘している。
1981年2月に世界初の缶入りウーロン茶を発売し、同年12月に発売したサントリーに先んじたことを自慢していたのも今は昔。現状は増収増益が続くサントリー食品インターナショナルに業績で大きく水をあけられた。
1週間前の5月25日には、ダイドードリンコも2016年1月期の第1四半期決算を発表した。前期2015年1月期は伊藤園と同じく売上減で、営業利益も経常利益も当期純利益も2ケタ減益。今期の見通しも売上高は微増で当期純利益は増益を見込むが、営業利益、経常利益は減益が続く。第1四半期も減収減益で明るい兆しはなかった。
主力はコーヒーだが、ダイドードリンコも伊藤園と同じく自販機のネットワークを有するドリンク専業メーカーで、同じような業績不振に陥った。
同じ5月25日、サントリー食品は日本たばこ産業(JT)の子会社で、飲料自販機ネットワークを持つジャパンビバレッジホールディングス(旧・ユニマットコーポレーション)を、7月をメドに約1,500億円で買収すると正式に発表していた。缶コーヒーの「ルーツ」や「桃の天然水」もサントリーに移籍することが決まった。
収益力で頭一つ抜け出したサントリー食品
ジャパンビバレッジの売上高は1,595億円(2014年4月期)で、ダイドードリンコ(1,495億円)とほぼ肩を並べる中堅クラスだが、それをサントリー食品の国内セグメント売上高7,223億円(2014年12月期)と合算すると8,818億円になり、国内ドリンク事業の売上規模で1兆円の大台が視野に入ってくる。ジャパンビバレッジについてはサントリー食品の他、日本コカ・コーラ、ダイドードリンコ、ビールが主力のアサヒ、キリン、PB(プライベート・ブランド)を強化したい小売のイオンや投資ファンドも揃って買収に名乗りをあげたといわれているが、結局、国内外でM&Aに積極的なサントリー食品が入札で最高額を提示して手に入れた。
国内のドリンク市場は、「コカ・コーラ」(日本コカ・コーラ)こそブランド全体では1兆円を超えて巨大だが、企業個別では売上規模にそれほど大きな差はなくシェアを分けあってきた。
上位クラスの売上高は、国内セグメント7,223億円でトップのサントリー食品の次は、コカ・コーライーストジャパン(EJ)5,232億円、アサヒグループホールディングス(GHD)の飲料事業4,714億円、伊藤園4,305億円、コカ・コーラウエスト(W)4,244億円と、ほぼ横並びだった。
しかし、国内のM&Aによってサントリー食品の国内売上が1兆円に接近すれば、「コカ・コーラ」に次ぐ規模を不動のものとした上で、他社を引き離すことになる。
サントリー食品は規模だけでなく、収益力でもドリンク業界で頭一つ抜けている。前期2014年12月期の国内セグメントの業績は売上高7,223億円で0.8%増、営業利益は466億円で2.7%増と増収増益。営業増益率はアサヒGHD(飲料事業)の37.9%、コカ・コーラEJの23.4%よりも小さいが、売上高営業利益率は6.4%で、コカ・コーラEJの1.7%、アサヒGHDの4.5%、伊藤園の2.6%、コカ・コーラWの2.5%、ダイドードリンコの3.4%を引き離し、「利益を出せる体質」が備わっている。
2015年12月期の企業全体の業績見通しは、売上高3.4%増、営業利益7.0%増、経常利益7.0%増、当期純利益15.9%増の増収増益で、全体の売上高経常利益率は7.0%の見通し。このように収益力が高い上に2013年7月には株式上場も果たし、その豊富な資金力を駆使して国内外でM&A攻勢をかけている。それに成功して売上規模が拡大すれば収益力も高まるという好循環になっている。
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