0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
BIツールなどのデータ分析ダッシュボードは、組織の意思決定に必要であるが、肝心なのは“導入後”だ。「AIドリブンな組織を作る5ステップ」の第4回では、ダッシュボードを利用するユーザーからのフィードバックの収集方法と、ダッシュボードを改善して利用率を向上させる方法について、当社(mynet.ai)の取り組みを踏まえて紹介する。利用率改善には“ユーザーの声を聴くこと”だけが大事だと考えている方にはぜひ読んでほしい。
mynet.ai COO 中元 正也、CTO 野濱 哲也、CEO 梅野 真也
mynet.ai COO 中元 正也、CTO 野濱 哲也、CEO 梅野 真也
【mynet.ai】
マイネットグループの1社で、データ分析・AI(人工知能)活用サービスを提供するテクノロジーベンチャー。オンライン社会の”自動運転”により、その社会にいる人たちがより幸せになるサービスを生み出していくことを目指している。
【マイネットグループ】
コミュニティの永続発展をミッションに掲げる「オンライン時代の100年企業」。現在は国内最大数のオンラインゲーム運営を行うゲームサービス事業を主に営んでいる。多数のゲーム運営で蓄積されたビッグデータに基づくノウハウやAI基盤を活用することで、ユーザーの皆さまが長くワクワクできる「10年空間」の実現を目指している。運営ゲームタイトル数38タイトル(2019年3月時点)。
ダッシュボード導入失敗あるある
BIツールなどのデータドリブンプラットフォーム(データドリブンな意思決定をする上で必要となるプラットフォーム基盤)の導入後しばらく経ってから利用状況をアンケート調査すると、よく利用するユーザーはいるものの、あまり利用しないユーザー・まったく利用しないユーザーもいることがわかった。
そこで、私たちはユーザーの元を訪れ、ユーザーから直接フィードバックを得るよう試みた。よく利用するユーザーにはどのように利用しているのか、利用しないユーザーにはなぜ利用しないのか、またどんなものであれば利用すると思うか、という話を聞くことでリアルなニーズを得られると考えたのだ。そして、実際に聞いた話から考え得る改善策を実施したのだが、思うように利用率は向上しなかった。
このようなよくある失敗を犯してしまいお恥ずかしい限りだ。では、何がいけなかったのだろうか。
答えは「データドリブン」なやり方になってないことだ。ユーザーの話を聞くことは重要ではあるが、それだけでは不十分だったのだ。
利用状況とパレートの法則から、問題を特定する
その間違いに気が付いてから、私たちはアクセス解析ツールのデータから改善することを決めた。
まず最初にやるべきは、利用状況の把握をデータから行うことだ。ただし、ただアクセスログを眺めたり、漠然とログを集計するだけでは重要なことはわからない。そこで比較的簡単に問題点を把握する方法を1つご紹介しよう。
以下は指標の人気ランキングをグラフ化したものだ。横軸が各指標で、縦軸が指標ごとのアクセス数になっている。
このグラフに、パレートの法則を当てはめて考えてみよう。パレートの法則とは、全体の数値の大部分は全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論のことで、80:20の法則とも呼ばれている。売上の8割は全ユーザーの2割が生み出しているというような話を知っている方もいるだろう。
グラフを見て、人気上位20%にあるべき(参照されるべき)重要な指標が下位になってはいないだろうか。その指標が少数ユーザー限定のものになっているといった特別な事情がなければ問題だ。この考え方は、ユーザーごとのログイン頻度など、多くのシーンであてはまるのでぜひ確認してみてほしい。
データドリブンに課題設定&アクション
このようにして、利用状況から問題点を把握したら、次は問題の解決策を検討しよう。先ほどの人気ランキングで重要な指標が上位20%に入っていないとしたら、それは指標の存在が多数のユーザーに認知されていないことや、重要度が伝わっておらず利用の優先度が上がっていないことが要因かもしれない。
この要因こそが、データドリブンプラットフォームにおける「課題」である。そうして課題設定ができたなら、次は課題解決のためのアクションを検討しよう。
課題設定さえきちんとできていれば、解決のために取るべきアクションは容易に導くことができる。たとえば「多数のユーザーに認知されていない」という課題に対するアクションは「全ユーザーに新機能がリリースされたことをリマインドする」といった具合だ。
やるべきアクションが明確になったらすぐに実行に移したくなるかもしれないが、少し待ってほしい。単に何をどのようにやるかだけではなく、アクション後にどのような結果を目指すのかという「目標」も同時に設定しておくことがとても重要だ。目標には必ず定量目標も含めるようにしよう。
たとえば、「通知メール内にある指標ページへのリンクのクリック率が30%以上になることを目指す」というように、定量的な記述を含めて目標設定しておけば、アクションの成功・失敗がすぐに判断できる。もしアクションが失敗しても、目標と結果の間に生じたギャップを次の問題点とすれば良いため、また新たなアクションにつなげることができる。設定した課題・アクション・目標(アクション後に目指す状態)のセットを「仮説」とし、次ページでは具体的に当社の改善事例をテンプレートとともに紹介する。
【次ページ】事例で理解する利用率改善施策、テンプレートも
関連タグ