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- 2017/05/15 掲載
人工知能のビジネス活用方法、AIエンジン20+6種のポジションをまとめて理解する
ガートナー 亦賀氏が指摘する「成功のカギ」とは?
人工知能に誤解のある企業の9割は活用を頓挫
そして現在の人工知能は、ガートナーのハイプサイクルによると過度な期待のピーク期にあり、今後現実とのギャップに直面する中で、短期的には幻滅期に向かうと予想される。人工知能に対する関心は高まるばかりだが、一方で多くの誤解を生んでいるテーマでもあるのだ。
具体的に世の中にどんな誤解が蔓延しているかというと、たとえば「すごく賢い人工知能が既に存在する」「IBM Watsonのようなものや機械学習、深層学習を導入すれば、誰でもすぐに『すごいこと』ができる」「人工知能と呼ばれる単一のテクノロジーが存在する」「人工知能を導入するとすぐに効果が出る」「『教師なし学習』は教えなくてよいため、こちらの方が良い」「ディープ・ラーニングが最強である」「アルゴリズムをコンピュータ言語のように選べる」「誰でもがすぐに使える人工知能がある」「人工知能とはソフトウェア技術である」といったものが代表的だ。
これらの誤解は、「結局、人工知能は使い物にならないため意味がない」という挫折を後々、招きかねない。
人工知能に関する誤解を抱えたままの企業の90%が、2020年までにデジタル・ビジネスの推進で頓挫するという予想もある。現在、人工知能の活用を検討している企業が、着実に次のステージに進むためには、まずは誤解や神話を払拭する必要がある。
人工知能とは何か?過去と現在、そして未来のテーマ
昨今、人工知能と併せて「シンギュラリティ(技術的特異点)」というキーワードが注目されるようになった。2045年に全人類の叡智を超える人工超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)が出現するというものだ。また、その前段階として2030年までに汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)が実用化すると予想されている。こうしたASIやAGIの実現に向けて、さまざまな基礎研究や技術開発が進められているのは事実である。だが、決して間違ってはならないのは、これらの技術を今すぐ入手できるわけではないことだ。しっかり時間軸を持って人工知能を捉えなくてはならない。
ASIやAGIを「強いAI」(GPMI:General Purpose Machine Intelligence)とするならば、現在の人工知能はまだ特定の目的にしか対応できない「弱いAI」(SPMI:Special Purpose Machine Intelligenceである。
現在、人工知能と呼ばれているもののほとんどは「赤ちゃん」か「子ども」である。上手く育てることができれば賢くなるが、そうでない場合はそれほどのものにはならない。役立つ「大人」にするためには、テクノロジーだけではなく、育て方も非常に重要であることを認識しておいてほしい。これが人工知能のリアリティだ。
したがって、必ずしも「教師なし学習」が優れているという話にはならない。「教師なし学習」は、機械学習におけるさまざまな選択肢の1つにすぎないのだ。
たしかに「教師なし学習」は、商品の分類やレコメンデーション、異常検知などデータのグルーピング(クラスタリング)には有効である。
しかし、スパムメールのフィルタリングや画像認識、将来予測、天気予報といった用途では、正解データを与えて学ばせる「教師あり学習」がはるかに効率的だ。また、ロボットや品質管理、ゲーム、ナビゲーションといった用途では、より良いアウトプットに対して報酬を与えて学ばせる「強化学習」という方法が一般的に採用されている。
同様にディープ・ラーニングが最強というのも大きな間違いだ。最近では100層を超えるディープ・ラーニングも登場しているが、層の数が多ければ多いほど優れているという単純な話ではない。たとえば装置の制御などの分野では、単層(1層)や多層(2~4層程度)の機械学習でも十分な精度を得ることができる。
【次ページ】AIエンジン20+6製品のポジション、手頃価格の深層学習用マシンとは?
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