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LCC(格安航空会社)の台頭や国際航空物流の増加など、近年、航空業界では熾烈な競争が続いている。そのような状況下、他社との差異化を打ち出し、利用者から選ばれる航空会社となるために、経営を支えるITはどのような役割を果たすべきか──。全日本空輸(ANA)は、IT推進に携わる部門を「業務プロセス改革室」に名称変更し、社内のワークスタイル革新から基幹システムの刷新まで、全社レベルで業務改革に取り組んでいる。その“旗振り役”である取締役 執行役員 業務プロセス改革室長 幸重孝典氏に話を聞いた。
後編はこちら(この記事は前編です)
(聞き手は編集部 松尾慎司)
ITは会社を変えるための「大きな道具」である
──2014年度は過去最高の売上高を達成し、当初の計画を上回る増益を達成しています。業績好調の要因は何でしょうか。
幸重氏:大枠で見れば、日本経済および世界経済の安定です。特に国際線はインバウンド(訪日外国人旅行)の増加が顕著です。ANAの国際線のお客さまの内訳を見ると、外国からが4割を超えています。この比率は2016年には5割を超えるかもしれません。当社の国際線が、本当の意味でグローバル化しつつある「証」であると考えています。
2015年の国際線戦略ポイントは、首都圏の「デュアルハブ機能」をさらに強化することです。つまり、羽田便は日本市場の需要に応えて定着を図りつつ、成田便は三国間(乗り継ぎ)需要の取り込みに注力します。現在は東南アジア5カ国、および中国からの旅行者に対するビザの緩和措置や、円安などで外国のお客さまが日本を訪れやすい環境が揃っている大きなチャンスでもあるのです。
──LCCの台頭など、航空業界の競争は熾烈との印象もあります。
幸重氏:確かに、航空業界の競争環境は急速に変化しています。その中で当社は、安定した国内線ネットワークを堅持しつつ、国際線のネットワークも確実に拡げています。2015年は、ヒューストン(米国)、クアラルンプール(マレーシア)、ブリュッセル(ベルギー)に路線を拡大していきます。また、中国にも強いネットワークがあり、成長著しいミャンマーにも直行便があります。こうしたバランスのよさをお客さまに訴求し、グローバルの中でも選んでいただける航空会社を目指します。
──ANAは「IT部門」を「業務プロセス改革室」と名称の変更をしました。
幸重氏:当社の経営トップは、「ITは会社を変えるための大きな道具」であると理解しています。営業、オペレーション、整備など、社内のあらゆる部門がITに対して要望を持っていますが、そうした要望に個別対応すると、部分最適になってしまい、ITのサイロ化が発生します。そうならないためには、会社全体のITを鳥瞰的に捉え、一気通貫で最適化することが重要なのです。
IT推進に携わる部門を「業務プロセス改革室」に名称変更した理由は、「ITで会社全体の業務プロセス改革を断行する」という意志を全社に伝えたかったからです。それまでの「IT推進室」は、ある程度業務のフレームワークが決まってから参加するような立場でしたが、「業務プロセス改革室」と銘打っておけば、プロジェクトの最初から首を突っ込める雰囲気になります。
組織にとって人事交流はとても重要です。既に業務プロセス改革室のメンバーをユーザー部門へ 配属したり、ユーザー部門のメンバーにも業務プロセス改革室で働いてもらったり、そうすることで人的ネットワークが会社中に広がり、会社全体の業務プロセス改革が実現できると考えています。
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