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幅広い事業を手掛け「インターネットカンパニー」を掲げてきたディー・エヌ・エー(DeNA)は、2016年から長期経営方針に「AI」というキーワードを追加。AIを事業推進のドライバーとして全社横断的に取り組む姿勢を強調している。DeNA 経営企画本部 IT戦略部 部長、成田敏博氏にその真意を聞いた。
聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:翁長潤
聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、執筆:翁長潤
前編はこちら(この記事は後編です)
全社横断でAI推進、キモとなるのは2つの部署
──長期の経営方針に追加されたAIですが、現在どのような取り組みを進めているのでしょうか。
成田氏:当社には以前から、膨大なデータの分析に長けたエンジニアが多く在籍していました。2016年に全社横断でAI活用をドライブさせるため、AI施策を推進する2つの専門部隊を立ち上げました。先端AI技術の研究・開発、AIを活用したサービス提供やデータ分析基盤を提供する「AIシステム部」と、AI活用施策の立案や新規事業計画の作成、パートナーとの事業創出を担う「AI戦略推進室」です。
オートモーティブ事業では、タクシー配車アプリ「タクベル」にAIを活用した需要予測システムの準備を進めているほか、AIとビッグデータ分析技術を活用した運転手の運転行動改善による事故削減を目指す取り組みを展開しています。日産自動車と共同で、自動運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」の開発も進めています。
また、ヘルスケア事業では、製薬企業の化合物データを活用した共同研究による「AI創薬」などにも取り組んでいます。
──幅広い事業を展開する中で、御社の強みは何だと考えていますか。
成田氏:「インターネット+AI」「パートナリング」「事業化能力」の3つだと考えています。AIに関する技術力としては、以前からゲーム領域でも類したことに取り組んでいました。現在は、AI技術研究を強化したり、各事業領域での適用を開始しています。現在は、PoCを含めて大小さまざまなプロジェクトが数十件ほど実施中です。
また、ほかのIT企業と比べてさまざまな異業種や官公庁などとタッグを組むことにたけていると思います。最適な体制を敷く渉外力に優れていると自負しています。
さらに、新しい多種多様な事業を事業化して成長の源泉を変化させる柔軟性なども備えているのではないでしょうか。常にチャレンジして、変わり続けることを企業文化としています。
AIは投資フェーズ、Kaggleランク制度など独自の取り組み
──最近の取り組みを教えてください。
成田氏:2017年には「Tableau」の全社展開などで管理会計のBIレポートを刷新しました。また、KPI管理については以前から内製BIツールの「Argus」を活用しています。データ分析を担当していたエンジニアが開発したツールですが、基幹系業務システムのデータを集約してリアルタイムでの情報表示、分析などに現在も活用しています。
また、RPA(ロボットによる業務自動化)による業務効率にも取り組み、「Blue Prism」を導入しました。会計・人事に関するバックオフィス業務や、担当者が毎月繰り返す同じような作業を自動化することに活用しています。
活用するに当たっては、月に4時間以上やっていないことを自動化する意味がないと考えています。Blue Prismは初年度は研究開発費という名目で導入しています。今後はより現場で簡易に自動化できるSaaS型RPAを併用し、2本立てで進めていく予定です。
──AIに関しては人も金もかかる領域だと思いますが。
成田氏:人に対しても、環境に対しても積極的に投資することが重要なフェーズだと認識しています。当社では、世界中の機械学習・データサイエンティストが競い合うコンテストである「Kaggle」への業務時間での参加を認める「Kaggle社内ランク制度」を取り入れています。
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