- 会員限定
- 2025/01/14 掲載
アシックスのERP刷新、テンプレート導入でぶち当たった「最大の壁(人)」とは
連載:マンガとアシックスに学ぶDX成功法
標準化を徹底した「テンプレート作成」
第1回、第2回で説明したように、アシックスでは2005年ごろを境に、国内と海外の売上比率が逆転し始め、2009年ごろにはこれまでリージョン(地域)ごとで成り立っていたシステムが限界を迎えていました。このような背景の中で、実際にアシックスがすべてのリージョンの基幹システムを、新しいグローバル基幹システム(SAP FMS)へ置き換えると決定したのは2014年です。「誰もが同じシステムを使用できることを目指す」という大きな志を持っていたということから、プロジェクト名を「Taishi(大志)」と名付けました。
効率的な基幹システムを運用していくために重きを置いていたのは、世界で統合されたプロセスとシステムソリューションの設計・確立です。すべてに適用できる大きな基準が必要でした。
そのために作成したのが、我々が「グローバルテンプレート」と呼ぶ、グローバルで統一された、システム構築をスムーズに行うためのビジネスルールです。地域特有のカスタマイズを許容せず、プロセスをテンプレートに合わせてもらうアプローチを徹底しました。
一貫性を維持しながらも、地域の税制度や商習慣で売上に影響するなどの理由がある場合は、カスタマイズを許容します。テンプレートソリューションを取り入れることで、ビジネスプロセスを調和させ、全リージョンが同じソリューションを利用でき、また同じように恩恵を受けられるようにしたのです。
グローバルテンプレートで「業務を標準化」
このグローバルテンプレート導入のメリットは、テンプレートに合わせてもらうことで、業務自体がおのずと標準化されることです。これにより、売上や在庫情報などのレポートも標準化できるようになりました。システムの保守・運用をサポートするIT側としても、メンテナンスや修正がしやすくなります。このテンプレートを用いて、2015年後半にオランダでプロジェクトをスタート。オランダには、ヨーロッパ販社を統括する拠点があり、導入を決めたSAP社の本社があるドイツにも近い立地でした。ヨーロッパにはさまざまな国が集まっており、国が違えば税金や制度は異なり、商習慣も違います。
グローバルスタンダードを作っていく上で、あえて複雑なヨーロッパを選択。アシックスのオランダ子会社と神戸本社、SAPの精鋭部隊が協力して、統一されたグローバルテンプレートを作成しました。
このようにシステム設計を進めましたが、メリットがあるとは言っても、システム導入は、文字通りのシステム導入にとどまりません。実際の運用に関わる人にとっては大きな変革が必要であり、それに対する人々の抵抗感もあったのです。 【次ページ】最も苦労したのは「チェンジマネジメント(変革)」
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR