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  • 2015/05/21 掲載

カルビー前社長 中田康雄氏が解説、企業にイノベーション起こす「バカなる戦略」とは

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日本経済を支える消費が停滞している。2013年第3四半期から始まり、2014年の消費税増税で失速した。カルビー 前代表取締役社長兼CEO・CIOの中田康雄氏は「消費支出の継続的な拡大を続けていかなければ、成長を続けることはできない」と指摘、「新しい市場、新しい事業を創出するイノベーション戦略が今、問われている」と強調する。企業のイノベーションを実現するうえで中田氏が提案するのが「バカなる戦略」だ。

PB商品のイノベーションで圧倒的な差を付けたセブン-イレブン

photo
中田康雄事務所 代表取締役
カルビー 前代表取締役社長兼CEO・CIO
中田 康雄 氏
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 現在、消費に関する消費者の価値観が激変してきており、“多少高くても品質のいいものを購入する”という消費マインドが大きくなってきているという。「SAS FORUM JAPAN 2015」で登壇した中田氏は、その中でセブン-イレブンがこの流れをうまく掴んでいると評価する。

「この消費行動の変化に着目して大きな成果を挙げているのがセブン-イレブンだ。同社にはセブンプレミアムというPB商品群があるが、ある競合他社のPB商品が1品当たり1億3,000万円の売上高なのに対し、セプンプレミアムは1品当たり3億5,000万円。セブンプレミアムというイノベーションを起こしたことで、セブン-イレブンは他社に圧倒的な差を付けている」

 このセブンプレミアム実現のための戦略が、“PB商品の継続的な革新と進化を実現すること”だ。

「同社はこのビジネス目標に向けて、さまざまな打ち手を行ってきた。その起点となったのが、“メーカー名をPBに表記”するという取り組みだ。従来PB商品はメーカー名を隠して販売されてきたが、セブン-イレブンはこの常識を壊した」

 これによって同社はメーカーと小売とのチーム・マーチャンダイジングを実現し、協働で新しい価値を生み出すことに成功した。消費者に一番近い小売主導で消費者ニーズを吸い上げて商品を開発し、その結果を検証して、製品の進化につなげていく。これが各種メーカーが集まって原材料を共同購入するという取り組みにまで発展し、コスト削減にもつながった。

イノベーションは明確なコンセプトからスタートする

 中田氏が提案するのが、イノベーションを起こすための“イノベーション・サイクル”という考え方だ。これは、4つのイノベーションファクターを重層的に循環させていくというもの。

「主体となるのはマインド・イノベーション、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションの3つで、これらをきちんとした形で循環させていくドライビングフォース(駆動力)の役割を果たすのが、マネジメント・イノベーションだ」

画像
(出典:中田康雄氏講演資料)


 これを先のセブン-イレブンの例で見てみると、まずマインド・イノベーションについては、低価格よりも高品質を狙うという開発マインドの変化が挙げられる。これがセプンプレミアムというプロダクト・イノベーションを生み出し、チーム・マーチャンダイジングというプロセス・イノベーションにつながった。そしてこの一連のイノベーションを駆動したのが、仮説検証というマネジメント・イノベーションだ。

 こうしたイノベーションを実現するための成功要因は、大きく3つ挙げられる。それがコンセプト、戦略構想、そして戦略実現力だ。

「まずはコンセプト、つまり目的は何かを明確にしなければならない。その際には3つのファクターが大事になる。1つめが“誰に”、2つめが“何を”、3つめが“なぜ”だ。この中でも一番重要となるのが、なぜ、というファクターで、これが一番の競争優位ポイントになる」

 セブンプレミアムで見ていると、“誰に”というのは、店舗を中心に半径500メートルの地域に住む生活者、“何を”は、こだわりの品質を持つPB商品、“なぜ”は、顧客は高くても品質のいいものを求めているからだ。

「この3つのファクターから結果的に“PB商品を継続的に革新、進化させていく”というコンセプトが生まれてくる。こうして初めて、イノベーションがスタートする」

【次ページ】「バカなる戦略」とは何か?
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