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- 2022/03/25 掲載
大逆転したローカル企業は何をした? 日本企業には耳が痛い、DX失敗パターン「7つの格言」
前編はこちら(この記事は後編です)
コロナ禍で急成長した漢方薬の「発揚大薬房」
きっかけは、テンセントが運営するSNS「WeChat」だった。前編で紹介したように、中国ではWeChatペイ、アリペイなどのスマホ決済が主流となっており、ほとんどの商店がデジタル決済に対応し、顧客との連絡手段もWeChatが常識になっている。
コロナ禍が始まるとWeChatで商品を注文してから取り置きをしてもらい、受け取りにくるお得意さんが増えた。お得意さんの中には、コロナ禍の最中は店に商品を取りに行くのも避けたいという人がおり、ファーヤンでは美団(メイトワン)などのデリバリー企業と提携をして、配達にも対応した。
漢方薬店というのは漢方医が店内にいて、病院と薬局の両方の役割を担っている。体の不調を感じた人は漢方医の問診を受け、漢方薬を処方してもらう。この問診にもWeChatが利用された。チャットと通話により問診を行い、それで処方が可能な場合は、WeChatペイで支払いをしてもらい、漢方薬はデリバリーで配達する。
外出を避けたいお得意さんのために始めたサービスだが、すぐにWeChatでのプロモーションが始まった。体質改善などで長期服用が必要なお得意さんには、薬が切れるタイミングでプッシュ通知を行い、タイムセールなどの告知、知人を紹介すると割引されるクーポンの配布なども行った。
扱う品目数、在庫数を最適化。DXに成功した最大要因は何か
こうしたWeChatの活用が進む中で導入されたのが、SCRM(Social Customer Relationship Management)だ。要は、今まで手作業でやっていたWeChatでの顧客対応、プロモーションを自動化してくれるツールだ。さらに、商品が動くようになったためWMS(Warehouse Management System)も導入した。いわゆる在庫管理システムで、商品には原則電子タグが付けられ、スマホやタブレットを使った自動管理が進んだ。在庫が見える化されると動きの鈍い商品も可視化され、扱う品目も1万4000種類あったところから8000種類にスリム化された。
さらに、オンライン注文用のWeChatミニプログラムを公開し、店舗の在庫は2000~3000種類程度にまで減らした。店舗在庫にない商品は、ミニプログラムで注文し、店舗受け取りか宅配を行う。このような手法で、ファーヤンは「地方の漢方薬屋さん」から、「会員制漢方薬新小売りチェーン」に変貌した。
ファーヤンがDXに成功できた理由は明らかだ。先に必要な業務を構築し、それを自動化できるSaaSを選定していったことにある。この手順を間違えて、先にツールを選定し、それに業務を合わせようとすると、かえって業務を非効率にしたり、ベテラン社員から反発されたりする。コロナ禍という非常時にお得意さま対応の一環として試行錯誤をしながら進めてきたWeChatの活用が先にあったからこそ、その後で適切なツールを選ぶことができたのだ。
【次ページ】断トツの坪効率で話題の小売チェーンは何をしている?
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