- 会員限定
- 2022/03/22 掲載
業績回復する「地元の企業」が中国で続出しているワケ、イメージとかけ離れた農村の実態
地方企業の追い風になった3つの要因
中国の地方企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み始めている。地方企業は「熟人経済」とも言われ、限られたお得意さまを相手にする伝統産業が主体で、顧客の高齢化も進んでいる。既存顧客は離脱する一方、新規顧客の獲得は難しく、時間とともに衰退していく先細りの運命だと見られていた。ところが、コロナ禍が思わぬ追い風になって業績を回復し、この機会を生かして積極的なDXに乗り出す地方企業が目立つようになっている。もちろん、すべての地方企業がDXに成功するわけではないが、生き残りをかけた最後のチャンスと見ている地方企業が多いようだ。地方企業の追い風になっているのは、次のような要因だ。
・要因その1:農村の経済成長
中国の都市と農村と言うと、天と地ほどの格差があるというイメージだが、その格差はかなり縮まってきている。
中国では「城鎮」と「農村」に分けてさまざまな統計調査が行われる。城鎮とは人口2000人以上で、農業人口が50%以下の行政単位のこと。最も小さな城鎮は町のイメージであり、これ以上の大きさの都市はすべて城鎮に含まれる。つまり、町と農村に区分されている。
2020年11月に実施された第7回全国人口普査(国勢調査)によると、城鎮人口は9億199万人で構成比63.89%、農村人口は5億979万人で構成比36.11%となっている。
それぞれの2021年の平均可処分所得は約4.74万元と1.89万元と2倍以上の開きがある。しかし、農村の多くは食料品に関しては自給ができることを考えると、そこまで大きな差ではなく、農村は思ったよりも豊かだ。平均消費支出は3.03万元と1.59万元と格差は2倍以下になる。
特に2017年以降、可処分所得、消費支出のいずれも伸び率は農村の方が上回っており、格差は解消の方向に進んでいる。特に、コロナ禍が起きた2020年、都市部では収入が減少する人が多かったが、農産物を生産している農村ではその影響が小さく、都市との格差はより縮まっている。
・要因その2:農産物の商品化
都市と農村の格差を解消するため、地方政府は農産物の商品化を促し、それに成功して現金収入を増やす農家が現れ始めた。特にソーシャルEC「拼多多」(ピンドゥオドゥオ)が積極的に地方農産品を扱い、都市の消費者が農村からECを通じて農産物を購入するようになっている。
中には、品質を高めてブランド化し、高級品として販売して成功する農家も登場している。また、2020年から急速に盛り上がったライブコマースを活用して、農地、養殖地などからライブ中継をして、農産物を直販することで成功する農家もいる。
商務部の統計によると、2020年の全国のEC販売額は11兆7,601億元で、前年比10.9%の成長だったが、県以下の農産物のEC販売額は3,507.61億元となり、前年比29.0%という高い成長を示している。
このようなEC、ライブコマースの活用は、地方政府も強力に支援をしているため、農民は従来とは異なる収入源を得られるようになっている。
【次ページ】コロナ禍でつかんだ「地元企業回帰」のチャンス
関連コンテンツ
PR
PR
PR