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  • 2021/02/22 掲載

「新基建」とは何か?アフターコロナに向けた中国の動きを解説

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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新型コロナの影響により約2か月半遅れの2020年5月に開催された中国の全国人民代表大会(全人代)において、コロナ禍でダメージを受けた中国経済の復活のけん引役として「新型基礎設施建設(新基建)」という新たなインフラ建設を進める方針が示されました。今回は、「新基建」の発表から約半年が経ち、共産党結成100周年、第14次5か年計画の開始年でもある2021年を迎えた中国の動きを取り上げます。
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中国のインフラ方針を示す「新基建」とは何か
(Photo/Getty Images)


中国のこれまでの動き、「中国製造2025」と「互聯網+」

 2015年3月の全人代で発表された、「中国製造2025」と「互聯網+(インターネットプラス)」。中国はこの2つの国家政策で第4次産業革命の動きを加速してきました。

 このうち、中国製造2025はドイツのインダストリー4.0型、インターネットプラスはGAFAに代表される米国のシリコンバレー型の発展を目指したものと考えられ、これらを同時に実践していることが特徴と言えます。

 この2つの政策により中国は、労働集約的な製造業(製造大国)から、ITなどを活用した付加価値の高い製造業(製造強国)への移行とともに、インターネット技術を活用した国際市場の開拓を進めてきました。

 中国の製造業においては、インダストリー4.0の概念を導入してスマートマニュファクチャリング化が進められ、独中間合意に基づき、インダストリー4.0のリファレンスアーキテクチャーである「Reference Architecture Model Industrie4.0(RAMI4.0)」の中国版も作られています。

 世界経済フォーラム(WEF)はコンサルティング会社のマッキンゼーとともに、第4次産業革命の指標となるベンチマーク工場「ライトハウス(灯台)」を選定しています。

 デジタル化、予知予兆分析、AR/VR、産業用IoTなどのデジタル技術の導入のみならず、自動化による生産効率向上、人材育成や働き方、企業や業界の持続可能性、社会や環境へのインパクトといった観点から評価し、2020年末までに世界54工場、アジア24工場がライトハウスとして選定されています。中国からは、アジアの過半数の15工場が選定されました(日本からは2工場が選定)。

 さらに、2013年に習国家主席が提唱した広域経済圏構想である「一帯一路」(OBOR:One Belt, One Road)に基づき、インフラ整備や通商拠点の整備が進められ、新たな経済圏の確立や関係各国間の相互理解を推進することで、中国製品の輸出強化を促進してきました。


2020年の全人代で発表された「新基建」

 例年3月に開催される中国の全人代ですが、2020年は新型コロナ感染拡大のため、およそ2か月半遅れの5月に開催されました。

 毎年公表される経済成長率に関する目標は発表されませんでしたが、政府活動報告では、財政赤字総額を2019年のGDP比2.8%から2020年はGDP比3.6%以上(3兆7,600億元(約60兆円))とし、別枠で感染症対策特別国債1兆元(約16兆円)、地方政府の地方特別債を3兆7,500億元(約60兆円、前年比約1.74倍)の発行などにより財源を拡充し、これらを公共投資に使うことで、内需刺激による早期の経済立て直しを図る方針が発表されました。

 特に地方特別債に関しては、一定の便益をもたらすインフラ、公共サービスプロジェクトを集中的に支援するとしており、公衆衛生、バイオセーフティ、緊急対応物資の保障、物資・エネルギーの備蓄、物流施設、農林・水上運送、都市・農村のインフラなど従来のインフラ分野の脆弱部分を補完するとともに、コロナ禍からの経済復活のキーワードとして掲げられた「新型基礎設施建設(新基建)」(新型インフラ建設の意)による投資を推進するとしています。

 米中貿易摩擦の煽りを受け、「中国製造2025」という表現がほとんど使われなくなる一方、急浮上しているキーワードがこの新基建です。

 新基建の重点分野は、「5G」「AI」「データセンター」「産業IoT」「超高電圧送電網」「高速鉄道」「電気自動車充電」といった情報・交通インフラとされています。2020年の「新インフラ」7重点分野への投資は約1兆2000億元(約19兆円)にのぼると見られ、2020年から2025年までの6年間で総額は10兆元(約160兆円)に達すると予測されています。

新基建が注目される、2つの背景

 新基建について初めて言及されたのは、2018年末に開催された中央経済工作会議でしたが、今注目を集めている背景には、新型コロナによって失速した中国経済の立て直しがあります。


 また、もう1つの背景は、リーマン・ショック後に発動された財政政策である「4兆元(当時のレートで約57兆円)投資」への反省があると言われます。当時「世界を救った」と言われたこの政策は、一方で、負の遺産として、余剰な生産能力を生み出したり、不動産バブルによりゴーストタウンなどの巨額な債務を発生させるといった課題を残しました。

 この4兆元のうち、中央政府の財政支出である「真水」の部分は3分の1以下の1兆1800億元にすぎず、残りの1兆2500億元は地方政府が負担し、1兆5700億元は国有銀行や民間企業からの借り入れに頼る内訳だったと言われます。

 この際に設立された投資会社を通じて地方政府の借金が膨らみ、余剰資金が不動産や効果の不明確な事業に流れ込んだと言われています。新基建には、こういったばらまき型の景気対策が生み出した過剰な債務や生産力の整理という役割もあると見られます。

 全人代での新基建推進の方針を受け、5G向け通信設備やスマートフォン、企業向けクラウドなどを提供する通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や、ネット大手の騰訊控股(テンセント)など、多くの企業が新型インフラへの投資に食い込もうと名乗りを上げています。

【次ページ】世界経済低迷の間に競争力を高める中国
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