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- 2020/07/27 掲載
ニューノーマル時代のサービス業3大トレンドとは?「消費者行動」の変化を解説
消費者の行動変容調査から分かった非接触へのシフト
NRIが実施した「新型コロナウイルス感染拡大による生活の変化に関するアンケート」は、コロナ禍におけるモノの購入やサービスの利用などに対する消費者の行動変容を調べることが目的である。小売・流通と美容健康サービス、人材サービス、通信、放送・メディア、コンテンツ、ライブ・イベントなど12のサービス業を対象に新型コロナウイルス感染拡大の影響を分析している(有効回答数は5100超)。三宅氏によると、感染拡大を防止したり、封じ込めたりする働き方や「3密(密閉、密集、密接)」を避ける生活スタイルが小売業や飲食業、美容健康などのサービス業に変革を迫っているというが、筆者は2つに注目した。
1つ目は新型コロナ感染拡大をきっかけに、店舗での「支払い・レジ待ち」を嫌う傾向が強くなっていることだ。具体的には「面倒に感じる」との回答がコロナ前の56.9%からコロナ後では64.1%に増加した(図1)。また、「店内を歩いて商品を探す」ことを面倒だと感じる割合も27.3%から31%に増えている。
これらの回答結果から、NRIでは店舗内における接触の煩わしさをなくす非接触を担保する「キャッシュレス決済」などの自動化が進むと予想する。また、自動運転車による配達やロボットの活用を検討する企業も増えると考えられる。
2つ目は、専門的な知識を持つ人による施術や指導を提供するプロフェッショナルサービスに対する価値や必要性を感じない消費者が増えていることだ。特に美容・健康分野における消費意識に多大な変化が出ているという。
たとえば、商品のテスト利用や対面カウンセリング、エステ、スポーツジムなど美容や健康サービスの利用者にそうした傾向がみられるという。
たとえば、スポーツジムの利用ができなくなり、「家での運動やトレーニングで十分」との回答が7割弱になる。また、百貨店などでの対面カウンセリングの必要性を感じないとの回答も3割あった。店舗に行くことを前提にするサロンの「利用意向が下がった」との回答も半数以上になる。こうした消費者がリスクを感じたり、価値を認めなくなったりしたサービスは、リアルの提供形態から見直す必要があるだろう(図3)。
オンライン化の進展でサプライチェーンが変わる
サービスのオンライン化などデジタル活用は新型コロナ禍で加速する。たとえば、ECやネットサービスなど消費者へのアプローチを変えることは、商品やサービスの新たな需要を掘り起こしたり、新しい市場を創出したりすることにつながる。また、サプライチェーンも変える。映画などのコンテンツベンダーがネット配信サービスに乗り出し、自宅での「巣ごもり消費」需要を取り込むことなどが考えられる。
小売・流通業の対応も急ピッチに進んでいるようだ。NRIによると、新型コロナの感染が拡大した2020年3月、アパレル業の売り上げは3割から5割減少したという。中でもスーツやフォーマルウエア、皮靴などの販売が大きく落ち込んだ(図4)。
非接触時代の消費者ニーズにいち早く理解し、売れ行きを回復する上で、三宅氏は「オンライン化はビジネスチャンス」と説く。たとえば、店舗における相談を代替するビデオチャットを使ったオンライン接客サービスや、スマートフォンなどを使って体形を採寸するスーツのパーソナルオーダーなどが非接触型を前提にするビジネスモデルの一例だろう。
こうした消費者一人ひとりのニーズに応える受注生産は、小売・流通業の大量出店計画の見直しも迫るだろう。一方で、たとえばプロフェッショナルサービスに関する知識や経験、ノウハウを生かし、リアルなプロフェッショナルサービスを代替する消費者1人ひとりの要求に応えるオンラインサービスを編み出す。ライブ画像を使って、新たな効果を訴求する手もあるだろう。
【次ページ】「デジタルサービス」「家族消費」「共創関係」の3トレンドとは
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