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医療ITの領域で医師と遠隔でつながる「オンライン診療」が注目を集めています。メドレーやMICINといった注目のスタートアップがオンライン診療システムを提供し、2018年の診療報酬改正で正式に保険点数がつきました。また、LINEとエムスリーの合弁会社であるLINEヘルスケアも本領域に参入する、と名乗りをあげています。アジアの医療を見てきた筆者が、海外の事例を踏まえて、オンライン診療がもたらす未来について紹介します。
現在のオンライン診療は、持続的イノベーションの範囲
日本ではオンラインによる医療の形は、大きく「オンライン診療」と「遠隔健康医療相談」の2つに分かれます。
この中で、医療行為ができるのは、上記図狭義の「オンライン診療」だけと決まっています。
現状の国内におけるオンライン診療は、「初診利用不可」という原則があり、既存のクリニックが自クリニックの患者さんに対して提供する便利ツールに過ぎません。オンライン診療の対象にできる患者は、原則すでに対面診療している患者に限定されるため、既存の医療の延長線上に、オンラインを組み合わせて便利にする「持続的イノベーション」の範囲におさまっています。
アジアのオンライン診療では破壊的イノベーションが起きている
一方で、海外に目を向けてみると、いま中国、東南アジア、インドで起こっている遠隔診療は、これまでの医療を大きく変え得る「破壊的イノベーション」です。
たとえば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドも約450億円出資する中国平安健康医療科技が提供する「平安グッドドクター」は、24時間オンラインで専門医による問診を提供するサービスを提供しています。平安グッドドクターのユーザーは1.9億人を超え、1日あたりのオンライン問診数は37万件を登るほど驚異的に浸透しています。
同様に、約72億円の資金調達をして話題になったインドネシアの「Halodoc」、DeNAやテクマトリックスといった日本企業も出資するインドの「DocsApp」といったサービスも登場し、それぞれ各国で平安グッドドクターと同様のサービスを提供し、ユーザーを爆発的に増やしています。Halodocの月間ユーザーは200万人にのぼり、2018年の1年間で2500%増加したといいます。また、DocsAppもこれまで500万人以上のインド人に使われたという数字を公表しています。日本とは桁違いにオンライン診療が根付いていることがわかります。
筆者もこのGWに、インドネシアや深センでこれらのアプリを使ってきましたが、これまでの医療の常識を大きく覆すものでした。
「オンラインで評価の高い医師を自由に選び問診を受ける(最初から専門医の問診もOK)」、「医療機関での診断・治療が必要なときには、そのままの流れで医療機関の予約ができる」「薬だけで治せると判断された場合はオンライン問診で処方箋が発行され、医薬品のデリバリーまで対応している」、というまさにOMO(Online Merges with Offline)の思想でサービスが設計されています。
医療IT各社もこうした海外の状況を見据えながら、国内において、初診で利用ができるオンライン診療の形を模索しているように見えます。
たとえばメドレー社は、2019年6月にてんかんや心臓などの特定領域において、著名な医師のセカンドオピニオンをオンラインで受けられる「オンライン専門医外来ネットワーク」というサービスをリリースしました。セカンドオピニオンは、初診でもオンライン利用が認められている数少ない領域です。
またMICIN社も、規制のサンドボックス制度を活用し、「オンライン診療を活用した自宅でのインフルエンザ検査」といった取り組みを行っています。まだ実証実験の段階ですが、高熱が出た際に、オンライン診療で医師の指導を受けながら、インフルエンザの検査キットを患者自身で使い自宅で検査ができる、というものです。
今後、LINEヘルスケアをはじめ、巨大企業が参入もしていくことで、規制も少しずつ変わっていくでしょう。
【次ページ】オンライン診療は地方医療でこそ真価を発揮する
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