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- 2019/07/10 掲載
「突き詰めると人の問題」、なぜ日本企業のデジタル変革は遅れているのか
日本のデジタル変革の遅れは、課題認識のズレに起因
日本企業の多くのCIOの悩みは、突き詰めると「人」の問題である。デジタル変革を推し進める上で、的確な人材をいかに獲得するか、その人材をいかに活用するか。ガートナーがグローバルのCIOに対して行った調査によると、日本企業の約4分の3は、デジタル変革の取り組みにすでに「着手」している。また、デジタル変革を成し遂げた先の「拡大」「成果刈り取り/洗練」のフェーズにまで進んでいる企業は、2018年段階の14%から2019年には22%にまで伸びている状況だ。
藤原氏は「この状況を『すごいことではないか』と思われるかもしれません。しかし、グローバルにおける『拡大』『洗練』のステージにある企業の割合を見ると、2018年段階の17%から2019年には33%まで飛躍しており、残念ながら世界と日本との差は3%から11%まで広がっています」と日本企業の苦戦ぶりを語る。
この差の原因は何か。藤原氏はその最たるものとして「リソースの障壁」を挙げる。グローバルの先進企業で「IT/ビジネス・リソースの人数が不十分」であることがデジタル変革の障壁であると考えている企業は38%なのに比べ、日本企業でそれを障壁と考えている企業の割合は67%にも上る。一方で、13%もの先進企業が「ベンダー/請負業者から調達できない」ことを障壁と考えているのに対し、日本企業のたった5%しか問題視していない。
藤原氏は「これを見る限り、本当に人材が不足しているのではなく、市場にいる人材をうまく活用できていないことが問題なのではないでしょうか」と指摘する。つまり「リソースの障壁」は、ベンダー企業を最大限活用すること、さらに、今社内にいる人材を育成し、外からも必要な人材を取り入れて上手にリソースをやりくりすることで乗り越えるべきということだ。
どのようにデジタル人材を発掘するのか
デジタル変革は、従来のITのプロジェクトとは根本から異なる。ユーザーは社内の人間だけでなく消費者を想定しなければいけないし、人材面でもIT部門だけでなく、ビジネス部門のほかさまざまな分野の人を巻き込んでいかなければならない。こうしたスキルを獲得しなくてはいけないとすると、社内に今はまだない、または潜在しているスキルを発掘・育成していかなくてはならないだろう。
「デジタル変革をする時、デジタル部門・IT部門だけでやる必要はありません。ビジネス部門だけでやる必要もありません。むしろ単独部門で進めると失敗します。また、社員だけでやる必要はありません。いかに外部から調達するかがカギとなります」(藤原氏)
社外から調達する場合は、デジタル・ネイティブな会社にいる人材を口説きに行く、あるいはイノベーション関連のイベントや、スタートアップ企業対象のハッカソン、インキュベーション・イベントなどでのネットワーキングを通じて、スキルを取り込むことが有効だ。
社内に求める場合は、顕在化していないスキルを「発掘」する必要がある。
「事業部側でクリエイティブな人、イノベーティブな人を集めましょう。『そんな人はウチにはいない』と思われることが多いのですが、必ずいます。ただ、そういう人は、現時点で社内の評価が高い人とは限りません。どちらかというと協調性がない、あるいは文句ばかり言っている人こそ、実はアイデアを持っていることが少なくありません」(藤原氏)
そうして発掘した人を、デザイン思考、リーン・スタートアップやアジャイルのワークショップに参加させて実体験してもらうことで、デジタル変革のプロセスに馴染ませ、彼らが能力を発揮しやすくすることが肝となる。
「従来の人材採用も有効です。新卒採用では、情報技術やコンピューター・サイエンスを専攻した人、中途でも単にITの実務経験者というだけでなく、技術資格を持ち、それを最新化している人がターゲットです。特に最近の新卒学生は、リモートで作業できたり、副業が可能だったり、新たな学びが多い仕事環境・組織文化に魅力を感じる人が多い。そうした点をアピールするのが有効でしょう」(藤原氏)
【次ページ】デジタル化を推進するための9つのアクション
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