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- 2019/05/27 掲載
【1円も支出無し】森林保全のための税金配分は大都市への「ばらまき」か
吉野林業発祥の地、譲与額上位100に入らず
人口は2015年国勢調査で1,313人。ピーク時の1955年には約8,100人の住民が暮らしていたが、高度経済成長期以降、急激な過疎の進行に苦しめられている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2045年の人口は270人。減少率の79.4%が全国ワーストワンになったことで話題を集めた。
村は室町時代から植林が始まった吉野林業の発祥地で、江戸時代に最高級建築材としてもてはやされた吉野スギ、吉野ヒノキを生産していた。豊臣秀吉が大坂城、伏見城を築いた際に用いた木材は、吉野産だったと伝えられている。
奈良県林業統計によると、村内の森林面積は約2万5,600ヘクタールで、このうち約2万4,900ヘクタールを私有林が占める。私有林の67%がスギやヒノキの人工林。今も吉野林業の歴史と伝統が息づいている土地だ。
しかし、吉弘准教授が試算した森林環境譲与税配分額の上位100自治体に川上村の名前はない。林業費を全く支出していない大都市の自治体より配分額が少ないわけで、川上村林業建設課は「正式発表前に他の自治体のことをとやかくいうわけにいかないが、森林を多く抱える自治体により多く配分してほしい」と総務省の方針に首をかしげた。
譲与額の3割を人口で算定
森林環境譲与税は森林環境税とともに森林保全を目的に国税として創設された。このうち、森林環境税は納税者1人当たり年額1,000円を個人住民税均等割に上乗せして集める新税で、2024年度から徴収が始まる。国内の森林のうち、私有林は林業低迷による担い手不足から、放置されて荒廃が進むケースが目立ってきた。地元に所有者や後継者が不在の森林も増えている。手入れの行き届かない森林は土砂災害を引き起こしやすく、二酸化炭素の吸収機能も劣るだけに、森林環境税で集めた収入を原資に荒れた森林を公的管理することを想定している。
森林環境譲与税は森林環境税で集めた収入を都道府県や市区町村に配分するもので、2019年度からひと足早くスタートした。森林環境税の徴収が始まるまでは特別会計の借金を原資とし、2019年度から2021年度まで200億円、2022年度から2024年度まで300億円が計上される予定。森林環境税の徴収開始後に税収の一部を借金返済に充てる。
各市区町村への譲与額は5割を私有林の人工林面積、2割を林業就業者人口、3割を人口で算定する。林野率による補正が私有林の人工林面積で行われ、85%以上の自治体は1.5、75%以上85%未満の自治体は1.3が乗じられる。
使途は間伐など森林整備、林業人材の育成、木材利用の促進や普及啓発などに限定されるが、選定は市区町村に委ねられる。2019年度は9月と2020年3月の2回に分けて配る予定で、市区町村への配分総額は160億円になる。総務省は9月に配分額を正式決定し、公表する方針だ。
【次ページ】総務省は都市部で木材利用促進が必要と反論
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