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  • 2019/09/03 掲載

クラウドとエッジコンピューティングで進む「混在化」、最適な管理手法は

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企業がデジタルビジネスへの歩みを加速させる中、I&O(インフラストラクチャとオペレーション)部門はクラウド利用を推進しつつ、IT基盤の柔軟性を維持・向上させるという難問に直面している。その解決の糸口となるのが、パブリッククラウドやプライベートクラウド、さらに今後の急速な普及が確実視されているエッジコンピューティングに対する「深い理解」だ。ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデントでアナリストを務めるトーマスビットマン氏が、混在環境下における“IT基盤のあるべき管理法”を解説する。
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IoTの潮流から、ITインフラの混在がさらに進みそうだ
(Photo/Getty Images)

複雑性が増すIT基盤、どうすれば柔軟性を確保できるか

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ガートナー
ディスティングイッシュト バイス プレジデント 兼 アナリスト
トーマス・ビットマン氏
 IT部門にとって、IT基盤が複雑化する状況は悩ましい問題だが、それは仕方のない面もある。IT基盤においては、OSやミドルウェア、ハードウェアなど各構成要素に対して複数の選択肢があり、それらの個々に良し悪しがある。そのため、目的に応じて異なる組み合わせを選択せざるを得ない。

 そして今、ビジネスのデジタル化により、IT基盤ではさらなる混在化が進みつつある。デジタルビジネスで、「圧倒的な競争優位性の獲得」を目指す場合、ITでしか成し得ない仕組みをいち早く形成する必要がある。その実現方法として「クラウド」が一般的に採用されるようになり、「混在化」に拍車をかけている。

 ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデントでアナリストを務めるトーマスビットマン氏は、「こうした状況下、I&O(インフラストラクチャとオペレーション)部門に、新たな難題対応が求めるようになっている。それが、デジタルビジネスの加速に向けた『クラウドの積極活用』と、『柔軟性に富んだIT基盤の実現』の両立だ」と指摘する。

 同氏によると、IT基盤の複雑性が増す中で、柔軟性の維持や向上は言うまでもなく至難の業であるという。その上で「プライベートとパブリックの両クラウド、さらに今後の急速な普及が見込まれるエッジコンピューティングについて、より深く理解することが求められている」と強調する。

クラウドの使い分けがより鮮明に

 ビットマン氏はプライベートクラウドの動向について触れ、「プライベートクラウドとは、場所を問わずリソースが隔離された状態であること」と説明した。

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 これは「自社で機器を保有するクラウド(オンプレミス型)」だけでなく、「他社が機器を保有するクラウドを専有利用するクラウド(ホスト型)」「パブリックなリソースを隔離技術によって占有利用するクラウド(パブリッククラウド型)」もプライベートクラウドに分類される現状を踏まえたものである。

 2016年に実施した調査によると、ホスト型やパブリッククラウド型が全プライベートクラウドの4割以上にまで達しているという。

 また、アプリケーション要件によってクラウドの使い分けも進んでいる(図1)。安定性やセキュリティを重視する、いわゆる「モード1」の場合には、技術力や経験を備えた外部ベンダーに運用を一任するホスト型やパブリッククラウド型が使われる。

 一方、柔軟性や俊敏性などを重視する「モード2」の場合には、リソースのすべてを自社で制御できるオンプレミス型が採用されている。

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図1:アプリケーション要件によるクラウドの使い分け

「ホスト型やパブリッククラウド型の方がオンプレミス型よりもセキュリティインシデント数が60%も少ない。利用が広がるのも当然だ」(ビットマン氏)

 加えて、環境整備に多額の投資が必要とされ、運用にも少なからぬ手間とコスト、さらに技術力も要すことから、オンプレミス型の利用は一貫して減少している。

 ガートナーでは、オンプレミス型で稼働するワークロードは、2020年までに全体の5%未満にまで減少すると予測する。それでもオンプレミス型を選択する企業には、それなりの理由がある。

「そうした企業の大半は、競争力に直結し、継続的な改修作業が発生してシステムをそこで稼働させている。つまり、ほかのシステムでは代替できないのだ。逆に言えば、定常業務を担うシステムについては、ホスト型やパブリッククラウド型への移行が賢明であり自然な流れだ」(ビットマン氏)

IT基盤のすべてをクラウドに移行させる必要はない

 ビットマン氏は次に「パブリッククラウド」の動向を解説した。パブリッククラウドの利用は冒頭のデジタルビジネスへの対応などを目的に、全企業の7割にまで広がっている。また、全IT投資に占める割合も現在の約20%から2022年には29%に達する見込みだ。

 もっとも、移行が容易なアプリの作業がほぼ完了したことで普及の勢いは失われつつあるという。それでも投資額が増加する背景としては、アプリ開発の基盤がオンプレミスからパブリッククラウドに移っていることが大きい。こうした中、パブリッククラウドでは従来から指摘されてきた「IT統制」にまつわる課題が顕在化し始めているとビットマン氏は指摘する。

「現場主導で利用されがちなパブリッククラウドは利用状況の一元把握が困難だ。そのため、ユーザーが予想の数十倍も存在したり、退職/異動した社員のアカウントが大量に放置されていたりといったことが監査で明らかとなることもしばしばだ」(同氏)

 それらはITコストやセキュリティの問題に跳ね返るが、管理を厳格化すれば、少なからぬ手間暇を要すとともに、迅速かつ効率的なリソース調達が可能というクラウドのメリットも削がれかねない。

 この課題解消に向けたビットマン氏の提案が、状況に応じたパブリッククラウドとオンプレミスとの使い分けだ。具体的には「SaaS(ニーズを満たす場合)」「短期的なニーズに向け導入障壁が低い」など、真にパブリッククラウドが有効な場合の条件を洗い出す(図2)。その上で、それらを満たす場合にのみ採用を認めるという方法だ。

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図2:パブリック・クラウドを使用すべき状況

「管理面で優れるオンプレミスのメリットを無視してまで、IT基盤のすべてをクラウドに移行させる必要はないはずだ。その上で、事前に条件を設けておくことで利用の可否判断も容易となり、管理負荷も格段に軽減できる」(ビットマン氏)

【次ページ】課題が山積みする「エッジコンピューティング」活用
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