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- 2019/01/31 掲載
消費税の増税延期論、リーマン級で「進むも地獄退くも地獄」となるワケ
絶好調の米国経済が世界を引っ張ってきたが…
一点の曇りもなかった米国経済だが、絶好調の景気が永久に続くということはあり得ない。最大の懸念材料は何と言っても米中貿易戦争である。
トランプ政権の発足以後、米国と中国は貿易戦争とも呼べる状況に突入している。今のところ直接的な影響は出ていないが、本格的な関税措置の実施から半年以上が経過しており、素材メーカーの業績など、一部にその影響が及び始めている。あくまで一般論だが、米国では輸入品の価格上昇が一般消費財に波及するまでに1年程度の時間がかかるといわれており、そうだとすると2019年の半ばにはその影響がはっきり見えてくることになる。
米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、2018年後半のFOMC(連邦公開市場委員会)において利上げの打ち止めを示唆したことや、クリスマスに米国の株式市場が大幅下落となった背景には、米国景気がスローダウンすることへの警戒感がある。米国の景気が足踏みすれば、輸出産業を中心に日本企業の業績が悪化するので、国内経済にも深刻な影響が及ぶ可能性が高い。
年明けの急激な円高も同じ文脈で解釈できる。
2019年1月3日、外国為替市場において円が急騰し、一時は1ドル=104円台まで円が買い進まれた。直接的な原因は、米アップルが業績見通しを大幅に引き下げたことである。
アップルは米国を代表する企業であり、日本メーカーは多数の部品をiPhone向けに提供している。同社の業績が頭打ちになるということは、当然、日本メーカーの業績も悪化することを意味している。日本の場合、製造業の業績低迷と円高がイメージ的に結びついているので、投資筋は円を買ってドルを売るという動きに出てくる。
ささやかれる3度目の消費増税延期論
足元の米国経済は依然として好調であり、すぐに米国の景気が停滞するという状況ではない。だが、困ったことに2019年の日本経済は消費増税という大きなイベントを控えている。本来、消費税というのは景気に対して中立的な存在であり、景気を悪化させるものではない。政府が徴収した税金は政府支出という形で最終的には家計に入るため、増税によって所得が減ることはないからである。だが、経済の基礎体力が弱い状況で増税を行うと消費者のマインドを悪化させ、消費が低迷するケースがある。日本経済は基礎体力が弱く、米国への輸出で何とかしのいでいる状況なので、増税がもたらす影響は大きい。仮に米国経済が足踏みし、そこに消費増税が加わった場合、予想外に景気が崩れる可能性があることは否定できない。
こうした状況から、一部でささやかれているのが消費増税の再延期論である。
2014年4月に消費税は5%から8%に増税されたが、この時は駆け込み需要や反動減などが発生し、経済はちょっとした混乱状態となった。同年4~6月期の実質GDP成長率はマイナスに転落。2014年度の成長率もマイナスになるなど、増税は景気に悪影響を及ぼしてしまった。
昭和の時代から、消費税は歴代政権にとって鬼門とされており、この扱いを間違えると政権崩壊につながる危険性がある。当初、消費税は2015年の10月に8%から10%に増税する予定だったが、安倍政権は2014年11月に衆院の解散と増税の先送りを決定。さらに2017年4月の増税スケジュールについても2年半の延期を決めた。
最終的に安倍政権は2018年10月に10%への増税を正式に表明したが、一連の景気に対する不透明感を背景に、3度目の増税延期がささやかれる状況となっている。
【次ページ】もし3度目の延期をした場合、増税は「もうできない」?
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