0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
「中古車の自動販売機」と聞いて、その姿が想像できるだろうか。米国オーランドを始め、約10か所の自動販売機を建設したのが、オンライン中古車ディーラーとして成長するカーバナ(Carvana)だ。車内外の様子を360度撮影した画像をウェブに公開したり、独自の融資システムによって月々の支払額を素早く計算したりと、中古車購入のユーザー体験を大幅に刷新した。ネットとリアルを連携したユニークな購買体験により、新たなEコマース市場を作ろうとしている。そして、その先に待つのはアマゾンとの対決か?
「覇者」なき米国の中古車市場、トップでもシェアは1.8%
中古車市場の規模は巨大だ。米国における2017年の中古車売り上げは7,640億ドルに上り、2017年から2022年の年成長率は2%と予測されている。2018年第二四半期だけで1000万台が売られ、平均価格はおおよそ2万ドルだ。3年ものの中古車は平均して38日で成約する。その低い在庫回転率からは、需要の高さがうかがわれる。
この巨大市場にあって、中古車販売市場には独占的な地位を占めている企業がない。米国では4万3000ものディーラーがあり、最も市場シェアを占めている企業でもその占有率は1.8%に留まる。
実は、中古車販売は必ずしも最適化された購買プロセスになっていないのが現状だ。実に81%の消費者が中古車の購入手続きを楽しんでいないという調査がある。同調査によると、「販売員をとても信頼できる」と回答した消費者は8%しかいなかった。
消費者側の変化を見ると、中古車購入におけるオンラインでの活動が目立つようになっている。97%の消費者は、オンラインで中古車の情報を調べているという。販売代理店を訪れる前に、購入するクルマを決めている消費者も多い。中古車ディーラーはオンラインでの情報提供を強化すると同時に、オフラインで提供するべき価値を見直す時期に来ている。これまで通りの業務を続けていても、デジタル時代の消費者を満足させることはできない。
カーバナでは中古車を自動販売機で買う?
こうした状況下、オンラインでの購買プロセスを中心に中古車販売のビジネスモデルを構築したのが、米カーバナだ。Web上に公開された1万1000台以上の中古車の中から希望のクルマを選択すると、10分程度で購入が完了する。
2012年に創業されたカーバナは、2017年に株式公開(IPO)を果たしている。1株あたり15ドルで公開された同社は、時価総額21億ドルに達した。 売り上げおよび利益の増加とともに株価も上昇を続け、2018年9月には一株当たり67ドルの上場来高値を付けている。
カーバナの歴史をひも解くと、中古車販売を行うドライブタイム社の子会社として設立されている。ドライブタイムは1977年に創業されたアグリー・ダックリング社を基とする歴史ある企業だ。自動車ローンや自動車保険を取り扱う複数の子会社をスピンオフとして立ち上げており、カーバナはその一つとして独立して営業を行ってきた。
消費者は同社が持っている特許技術により、360度全方位から撮影した画像で、中古車の外観、キズ、内装をオンラインで確認できる。必要な書類をアップロードするだけで、わずか2分ほどで与信審査が行われ、月々の支払額が計算される。
購入した中古車の受け取り方法は2つ。自宅への配送、または「クルマの自動販売機」だ。ガラス張りの立体駐車場のような自動販売機では、特製のコインを投入し、自動車を受け取る。そのクルマに乗って、そのまま自宅へと持ち帰る流れだ。
【次ページ】コストダウンの秘密
関連タグ