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- 2018/06/25 掲載
「Flipkart(フリップカート)」をアマゾンとウォルマートが取り合った理由
ソフトバンク・ビジョン・ファンドは15億ドルの利益獲得
Flipkartのビジネスモデル
インドのEコマース市場は寡占状態にある。業界最大手のFlipkartが約39%、アマゾンは32%、そして、Snapdeal(スナップディール)、ShopClues(ショップクルーズ)、Paytm(ペイティーエム)が10%以下のシェアで後に続く。
業界1位のFlipkartは7500万人の登録ユーザーを有し、毎日約1000万回の閲覧を記録している。8万社以上の企業が3000万種類の製品を掲載し、本から電化製品まで、あらゆるものが1つのサイトで購入できる。
Flipkartは多くの分野でリーダー的な地位を獲得してきた。モバイル機器・大型家電では取引額で市場1位に輝いており、 特に、ファッション業界ではMyntra、Jabongというファッション専門サイトを買収し、6割以上のシェアを獲得した。
Flipkartは「マーケットプレイス型」のビジネスモデルを採用している。自社で直接販売は行わず、消費者と小売店を結びつける取引形態だ。小売店側に対しては、商品の販売促進や販売手数料によって収益を上げる。早く配送してほしい消費者には、その都度、手数料が加えられる。また、PayZippyというオンライン決済の仕組みを提供し、決済額に応じて1.5%~3.5%程度のマージンを得ている。
Flipkartの特徴は、配送システムを子会社として持っている点にある。もともとは自社内で築いた配送ネットワークだったが、2009年に子会社Ekartとして分離し、Flipkart以外のEコマース企業の配送も取り扱うようになった。これにより、1000都市で800万個の商品を配送する能力を有する。インドでは一般的ではなかった、即日配送や現金着払いといった仕組みも導入している。
Flipkartは卸売部門も有しており、小売店への仕入れを行っている。これはキャッシュ・アンド・キャリーと呼ばれる方式であり、現金購入持ち帰りを前提としている。ユーザーは必要なときに最低限の在庫を保有できるようになる。配送の削減や小売店によるセルフサービス化により、低価格での商品提供を可能にするのだ。
共同創業者であるBinny Bansal(ビニー・バンソール)氏、Sachin Bansal(サチン・バンソール)氏はアマゾンに勤務していた経験を持ち、その経験を活かしてFlipkartを設立した。しかし、そのビジネスモデルは直販を主要なチャネルとするアマゾンよりも、マーケットプレイス型を軸に据える楽天やアリババに近いものがある。
実際、サチン氏は、アリババとの関連性について「我々のロールモデルはアマゾンよりもアリババだ」と述べ、数年前の中国と比較してインドの市場環境が似ている点を理由に挙げている。
ウォルマートが160億ドルを投じてもFlipkartを欲しがった理由
2018年5月、米大手スーパーマーケットチェーンであるウォルマートによるFlipkart買収が発表され、業界地図が大きく変わろうとしている。これまで、インドでは地元の小売業者を守るため、外国企業が直接消費者にモノを売ることができなかった。2016年の規制緩和により、外国直接投資の要件が変更され、外資による電子商取引が可能になった。いち早くインド市場へと参入していたアマゾンは、マーケットプレイス型の事業を拡大させ、2014年では10%だった市場シェアを、2017年には32%へと成長させた。 そして、インドでのEコマース事業拡大を狙うアマゾンおよびウォルマートがFlipkartの買収を提案し、160億ドルを投じたウォルマートが競り勝ったのだ。
ウォルマートは新たな成長機会に飢えていた。アマゾンは売り上げが1,779億ドルで時価総額は6,800億ドルと、アップルに次いで2番目に高い評価額の企業だ。一方で、ウォルマートはアマゾンを上回る5,000億ドルの売り上げをあげながら、時価総額は2,500億ドルにすぎない。投資家から見ると、アマゾンに比べ、ウォルマートは今後の成長が期待できず、それが株価に反映されている可能性がある。
ウォルマートにとって、大きな成長の見込める新興国でのビジネスは、喉から手が出るほど欲しかったのだろう。Flipkartの買収によって、インド市場におけるウォルマートの立ち位置は大きく変わってくる。
【次ページ】インド市場でもEC企業から投資収益を上げたソフトバンク
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