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  • 2018/07/06 掲載

民泊新法が招いた大混乱、個人業者が撤退しても大手企業が参入の理由

楽天やパナソニックらが参入

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一般住宅に有料で旅行者を泊める「民泊」が、6月15日の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行で解禁された。新しいルールの下で日本の民泊がリスタートするはずだったが、手続きの煩雑さなどから、これまで違法民泊を続けてきた個人業者が次々に撤退している。その一方で、楽天、パナソニックなど大手企業が相次いで参入、民泊業界の風景を一変させそうな状況だ。京都外国語大国際貢献学部の廣岡裕一教授(観光学)は「新秩序が生まれ、これに適合できないものが弾き出されている。今後、新法に合わせたビジネスが出てくるのではないか」とみている。
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「民泊断固反対」の張り紙を掲げた京都市伏見区の民家。違法民泊に対する住民の反感は根強い
(写真:筆者撮影)

180日の営業規制と煩雑な手続きが障害に

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 「投資で手に入れた空き物件を民泊で運用していただけ。結構儲かったし、この辺が潮時や」。大阪市浪速区のマンションで2年ほど違法民泊を営んできた会社経営の男性は、民泊新法スタートを機に撤退した。

 マンションは男性の個人所有。通天閣に近く、1泊2,000円台の低価格に設定したこともあり、一時は予約で次々に埋まっていた。しかし、近隣との競争が次第に激しくなり、一時の勢いはなくなった。民泊に対する住民の厳しい目も気になっていた。

 新法の届け出をしても、営業日数が制限される。儲けが出るとはとても思えなかった。国家戦略特区の大阪市なら特区民泊の認定を受ければ、営業日数の制限を受けずに営業できるが、それでも適法で営業するなら、消防設備などそれなりの投資が必要になる。「個人で対応できない」。それが男性の結論だった。

 営業を継続するが、届け出手続きの煩雑さに不満を持つ家主も多い。東京都でWeb関連の企業を経営する渡部薫さんもその1人。渡部さんは全国約140の物件で民泊を営んできたが、届け出が済んだのは半分ほどでしかない。消防法令適合通知書など提出書類が約30種類もあり、手続きに悩まされているからだ。

 ある地方自治体では、民泊管理業者の印鑑を認印でなく、代表印に変えるよう求められた。別の自治体からは、マンション賃借人の同意書の上に所有者の同意書も要求された。「民泊新法は許認可制でなく、届け出制。書類に不備がなければ届け出るだけでいいはずなのに、受け付けてもらえない。民泊をさせないための手続きのように感じる」と不満を訴える。

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訪日外国人観光客らでにぎわう大阪ミナミの黒門市場。宿泊先の多くを民泊が支えてきたが、新法施行で民泊業者の撤退が相次いでいる
(写真:筆者撮影)

新法の届け出少なく、エアビー掲載数も激減

 民泊新法は一般住宅に有料で旅行者を宿泊させるためのルールを定めた法律。従来は旅館業法の簡易宿所として許可を得るか、国家戦略特区内で特区民泊を活用するしかなかったが、一定の基準を満たす住宅については、届け出るだけで年間180日までの営業が可能になった。

 しかし、届け出件数は予想外に少ない。観光庁によると、6月15日現在で届け出があったのは、全国で3,728件にとどまっている。今春には仲介サイト最大手の米エアビーアンドビー(Airbnb)に6万件を超す物件が登録されていただけに、ほとんどが新法の届け出を見送った格好だ。

 自治体の多くは条例で営業日数などの上乗せ規制を実施している。それでも一定の届け出があると予想していたが、肩透かしを食った。100件余りの届け出しかなかった東京都新宿区衛生課は「2,000件くらいはあると思っていたが、予想外に低調」、約60件の京都市医療衛生センターも「どうしたのだろう」と首をひねる。

 大阪市では、営業日数の制限を受けない特区民泊が2017年6月の新法成立以来、急激に増え、4月末で651件、1,899室に達した。京都市では簡易宿所が2017年度末で前年度より約3,000室増え、9,247室に及んでいる。規制の厳しい新法での届け出を断念し、特区民泊や簡易宿所を選んだとみられる。

 観光庁は仲介サイトに対し、違法物件を掲載しないよう求めている。このため、エアビーは新法の届け出に基づき発行される番号や、旅館業法、特区の許認可がない物件の掲載を新法施行直前に取りやめた。その結果、掲載数は一時、民泊調査会社の調べで約1万4,000件まで減ったという。

 しかも、観光庁がエアビーに対し、違法物件の予約取り消しを求めたことから、新法施行以前に成立した予約も一斉にキャンセルとなった。このため、SNS上で日本政府の対応に不満を訴える外国人観光客の声が相次ぐなど混乱が尾を引いている。

【次ページ】民泊に新たに進出するのは大手企業
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