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損保ジャパン日本興亜を中核に置く、巨大保険企業・SOMPOホールディングス。そのデジタル化を一手に担うCDO(最高デジタル責任者)の楢﨑浩一氏は、「SOMPOは“保険が必要ない世界”を目指す」「従業員7万8000名を全員デジタル化する」と息巻く。かつてないディスラプションの波の中で、SOMPOはどのように生き残ろうとしているのだろうか。
CDOとCIOの違いとはなにか
損害保険会社・損保ジャパン日本興亜を中核とする保険のコングロマリット企業・SOMPO。売上は3兆7000億、利益が1400億以上、運用総資産は約12兆円と、巨大な資本を持つ同社は、事業オーナー・CxO制を採用している。
損保ジャパン日本興亜の国内損保事業と、ひまわり生命の国内生保事業、介護ヘルスケア事業、海外保険事業の4つの事業が縦割りで存在するが、その中でCFO(最高“財務”責任者)やCSO(“戦略”)、CRO(“リスク管理”)、CBO(“ブランド”)、CHRO(“人事”)といったCxOが横串を刺して設置されている。
「CxOは、xのところのすべての責任を負います。CFOはファイナンス、CSOはストラテジー、CROはリスクの全責任を負っています。私が責任を持つのは、デジタルです。現在、約7万8000人のSOMPO従業員が働くあらゆる事業プロセスにおいて、デジタルといったら私が最終責任者となっています」と語るのは、CDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者)を務める楢﨑浩一氏。
楢﨑氏は2016年5月、SOMPOホールディングス初のCDOに就任した。それまでは米シリコンバレーに12年住み、スタートアップを4社経験している。
「元は三菱商事でIT系の事業開発をやっており、最終的には1997年にシリコンバレーに送り込まれました。いわゆる駐在員ですが、あまりにシリコンバレーが面白くて、ミイラ取りがミイラになってしまいました。2000年に辞めて、現地でスタートアップに転職したのです。そのため、(SOMPOホールディングスは)私にとって16年ぶりの大企業です。その中で、何をするのかというのが非常に大事なポイントです」(楢﨑氏)
なお、CIO(Chief Information Officer=最高情報責任者)もIT領域を統括する役割を持つが、楢﨑氏は「未来を予測して新しいものを作り、会社に積極的に新しい事業を作っていくのが、CDO」と話す。
ガートナーはITにおける「モード1」と「モード2」を提唱しているが、SoR(System of Records=記録のためのシステム)のように確実性が求められる従来のITは「モード1」で、これはCIOの領域。守りではなく、SoE(System of Engagement=顧客とのつながりを生むためのシステム)を実現するのが「モード2」で、こちらを担うのがCDOとなる。
保険業界が破壊される日は近い
シリコンバレーでの実績を見込まれ、楢﨑氏に託されたのはグループ全体のデジタル戦略を統括し、デジタル戦略による利益の貢献とグループのデジタルトランスフォーメーションの牽引する役割だった。具体的には、新しい顧客とのデジタル接点の獲得、新たなビジネスモデルの構築、さらには破壊的イノベーションをもたらすビジネスモデルの開拓を目指す。
楢﨑氏は、保険と言われて一般的にイメージする、自動車保険や火災保険、生命・医療保険などのすべてが、数年以内に破壊されてしまうと考えている。
なぜなら、たとえば自動車業界にはすでに「CASE」と呼ばれる波が到来しているためだ。CASEは、Connected(ネット接続)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェアリング)、Electric(EV)の頭文字を取ったもので、Uberやテスラが生まれた原因にもなった。当然、自動車業界が破壊されると自動車保険をかける対象と事故そのものも少なくなり、保険業界も破壊される。
「ディスラプション(破壊)はデジタルによって起こります。自動車保険だけでなく火災保険も同じです。IoTやセンサー技術が向上すれば、AIで災害の予知ができるようになり、今までのような風水害や火災はかなり少なくなるでしょう。被害が出てから査定に伺うのではなく、お客さまのリスクに対処していくというのが役目になって行きます。生命・医療保険も同じです。Fitbit(フィットネスをサポートするスマートウォッチの一種)などのデバイスが、お客さまの健康長寿をサポートします」(楢﨑氏)
また、現在、家における活動を自動化する「スマートホーム化」も進んでいる。火災が起こったから保険金の話になるのではなく、「センサーが大量に存在する時代には、生活や仕事を豊かにするのも保険の役割になってきます」と楢﨑氏。
【次ページ】SOMPOが目指すのは、“保険が必要ない世界”
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