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- 2022/03/11 掲載
テスラやGMがEV自動車保険を自社提供、背景にある「保険料高騰」という深刻課題
高まる米国でのEVへの関心
EV販売で欧州や中国に遅れを取っていた米国だが、今後急速なEV普及が見込まれ、欧州や中国市場に追いつく公算が大きい。Canalysの調査データによると、2021年のEV世界販売台数は650万台と前年比で109%増となった。販売台数が最も多かったのが中国で、350万台。新車販売に占めるEVの割合は15%だった。次いで販売台数が多かったのは欧州で、230万台。新車販売に占めるEVの割合は、中国を上回る19%だった。
一方、世界最大の経済大国である米国のEV販売台数は53万5000台で、新車販売に占めるEVの割合は、4%のみだった。
しかし2022年以降、この数字が大きく変わる可能性が見えている。米国では広告効果も手伝い米国消費者のEVに対する関心が高まっており、様々な調査でもそのことが数字に反映されるようになっているのだ。
米国で1億人以上が視聴するといわれるNFLチャンピオンシップ「スーパーボウル」で放送される広告は「スーパーボウル広告」として毎年どのような広告が配信され、どのような広告効果を生み出したのか、The New York Timesはじめ、米メディアがこぞって伝えるトピックとなっている。
このスーパーボウル広告において、今年観察されたトレンドの1つが、自動車メーカー各社のEVシフトだ。スーパーボウル期間中、自動車メーカー7社が広告を配信したが、このうち6社の広告がEVブランディングを促進するものであったという。
米自動車検索サイト大手のCars.comは、スーパーボウル期間中、同社のEV関連ページのアクセス数が急増したと報告している。
テスラの自社EV保険、年内に45州に展開計画
ついにEV普及の波が起こる予兆が見えてきた米国では、EV各社による購入障壁を低くしようとする取り組みが始まっている。その1つが自動車保険の提供だ。
自動車保険は自動車メーカーではなく、保険会社が提供するものに加入するのが一般的。しかし、米国ではテスラやGMなどが自社で独自のEV自動車保険を作り、提供しようとしている。
テスラに関しては、すでにフロリダ、テキサス、イリノイ、オハイオ、カリフォルニアの5州で独自のEV自動車保険の提供を開始。2022年中には、45州に拡大し、国内顧客の80%をカバーする計画という。
一方、GMも独自のEV保険を開発し、州当局にデータシステムの承認を申請。2022年上半期までの認可を目指すとしている。CNBCによると、GMはこの保険事業だけで、2030年までに年間60億ドル(約6,889億円)の収益を目指すとのこと。
これらの保険事業が企業全体の収支に大きな影響を及ぼすことはないとみられるが、いくつかのメリットが考えられ、今後テスラやGMだけでなく他社も独自のEV保険提供を始めるかもしれない。
メリットの1つとして考えられるのは、顧客ロイヤルティを高められる可能性だ。
上記でも触れたように、EVの普及割合はガソリン車に比べまだ低く、部品の価格も高いことがほとんど。また、修理をするメカニックもガソリン車ほど多くなく、EVの保険料は高くなりがちになる。
しかし、自動車メーカーはEVの運転データにアクセスし、安全度を適切に評価できるため、保険料を通常より低く設定することが可能だ。通常より安い価格で独自の保険を提供することで、顧客の満足度を高めることが可能となる。
テスラは米国5州でEV保険を提供中だが、運転手に対しリアルタイムに安全運転のフィードバックを提供することで、事故率が若干下がったと報告している。Wedbushのアナリスト、ダン・アイブス氏がCNBCに語ったところによると、テスラは2025年までに米国内で30万台の保険加入を目指すという。
自社のEV保険であれば、EVのデータにアクセスし、迅速に事故分析を行い、短時間で保険を適用できることも強みとなる。GMの場合、保険適用まで通常18~25日かかるが、自社のEV保険システムであれば、被害状況を瞬時に把握することができ、迅速な保険適用が可能としている。
【次ページ】スマホベースの自動車保険
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