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売上高2兆円超、空調事業では世界一のダイキン工業。しかし、同社の執行役員 米田裕二氏は「われわれは勝ち組になっているわけでもなんでもなくて、むしろ遅れていると思います」と危機感をあらわにする。ダイキンが「遅れている」のはなぜなのか、これからダイキンはどのようなイノベーションを目指すのか。デジタル革命への取り組みを語った。
構想10年、ダイキンのイノベーションセンター
東洋経済新報社『デジタル×CxO』にて登壇したダイキン工業執行役員 米田裕二氏は、1987年の入社から家庭用・業務用エアコンの技術開発や商品開発に携わり、2014年に同社執行役員に就任、2015年には空調商品開発担当となり、同年11月にテクノロジー・イノベーションセンターのセンター長に就任した人物。
テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)は2017年11月、大阪府摂津市に開所した研究施設である。人員数は700人規模で、投資額は約380億円にのぼる。オープンイノベーションという言葉が出始めた2004年頃、グローバル市場における今後の成長を見据えて研究開発を行うコア施設の必要性を感じていたダイキンが、構想10年、建築2年をかけて設立した。
「イノベーションセンターでは、既存事業への貢献と新価値の創造をやっています。差別化や夢のある商品を考えるために、新たな技術やその売る先を一生懸命探しています。ダイキンの持っている得意な領域に加えて、『健康』『快適』といった、新たな領域に提案しようと活動しているのです」(米田氏)
イノベーションセンターの成果の例として、米田氏はグローバル対応のローコストインバーターを挙げる。インバーターとは、コンプレッサーを制御する装置のことで、室温を安定させることができる。日本ではほぼ100%がインバータータイプだが、世界のルームエアコンに目を向けると、インバーター化率はまだまだ低い。
「アジアの人は、必ずしも日本の最先端テクノロジーを必要としていません。それよりもむしろ、ローコストで効率の良いものを望んでいます。このようなところに向けて、ローコストインバーターを開発しています。電解コンデンサーとリアクター容量を小さくしてコストもダウン、インバーター化率を上げようと市場に投入しています」(米田氏)
得意な「モノ作り」から苦手な「コト作り」へ
「大事なことは、変われないと、生き残れないということ。ダイキンはモノ作りが強いからといって、モノ作りだけをやっていたら、この先置いてけぼりを食ってしまいます。われわれは勝ち組になっているわけでもなんでもなくて、むしろ遅れていると思います。しかし、空調ならではのところで、まだまだできることはあると考えています」(米田氏)
ダイキンは現在、住宅用から商業用、産業用まで、ありとあらゆる空調の環境・快適・安全・安心・衛生というニーズに対応するソリューションを実現している。そんな大企業であるダイキン、モノ作りは得意だが、コト作りは非常に苦手とするという。しかし近年は、ビルを中心とした集中監視やメンテナンスといった、サービスソリューションを大きくしていこうと考えている。
「ビルの集中管理やメンテナンスサービスは、インテリジェントタッチマネージャや空調機、そしてクラウドやサーバーとつながるようになっています。空調機が『コネクテッド』される理由はいくつかあります」(米田氏)
1つは、空調機器がビルの使用エネルギーの3分の1という大きなポーションを占めているという点。効果的な運用や制度で省エネ化が進むという。さらには、環境影響を考慮して冷媒漏えい問題に取り組んだり、適切に維持管理したりすることで健康維持や快適性を向上させようとしているのだ。
1924年の創業から90年以上の歴史を持つダイキン、売上は2兆円を超える。そのダイキンがこのようにイノベーションに力を注ぐに至った危機感とは何だったのか。
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