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  • 2018/04/25 掲載

7割自治体で人口2割減の現実、それでも「現実離れ」人口ビジョン続々のワケ

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国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が新たにまとめた地域別将来推計人口で、全都道府県が2030年から人口減に陥り、2045年に市区町村の7割が2015年比で20%以上人口が減ることが分かった。全国の地方自治体はそれぞれ、地域の将来人口を示す人口ビジョンを策定し、V字型の人口回復を打ち出すところも少なくないが、明確に否定された格好だ。奈良女子大大学院人間文化研究科の中山徹教授(都市計画学)は「人口ビジョンとのかい離が広がり、このままでは地方創生の実現が危ぶまれる」と指摘する。
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市区町村別で最も人口減少が進むと推計された奈良県川上村。30年後に人口が270人に減ると予測されている
(写真:筆者撮影)


人口ビジョンを見直すべきか、京丹後市議会で論戦

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 「人口減少は加速しており、減少(の速度)を緩めるので精いっぱい。市の人口ビジョンは形がい化している。リセットして見直すべきだ」。3月の京都府京丹後市議会。一般質問に立った吉岡豊和議員が市の人口ビジョンに対し、疑問を投げかけた。

 市は2004年、丹後半島の峰山町など6町が合併して発足した。合併当時、人口は6万人を超えていたが、年々減少を続け、2017年10月現在で5万6,000人に落ち込んでいる。それでも、社人研が2060年の人口を2万6,000人と推計しているのに対し、市の人口ビジョンは7万5,000人とV字回復を打ち上げている。

 市の人口ビジョンは中山泰前市長時代の2015年、全国市区町村の先頭を切って策定した。他の自治体から「かなり強気の見通し」との声が出ていたが、中山前市長は当時、「シルク産業を興すなどすれば十分可能な数字」と主張していた。

 吉岡議員の質問に対し、三崎政直市長は「数字うんぬんではなく、今やるべきことをしっかりとやることが大切」と答え、人口ビジョンを見直す考えのないことを明らかにした。

 このやり取りがあった直後に、社人研から新たな人口推計が公表されたが、京丹後市政策企画課は「今のところ、見直す考えはない。人口減少をできるだけ緩やかにとどめるよう施策を進めていくだけだ」と述べた。

2030年から全都道府県で人口減少に

 社人研は2015年の国勢調査に基づき、2045年まで30年間の人口を都道府県、市区町村別に推計した。それによると、2045年の国内総人口は2015年比2,000万人減の1億642万人となっている。

 都道府県人口は2015年に39道府県で減少しているが、2020年からは東京都と沖縄県を除く45道府県、2030年からはすべての都道府県で人口が減る。合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの平均数)の改善により、5年前の前回調査に比べて全都道府県が人口減少に入るのが10年遅くなったものの、人口減少が急激に進む状況は変わらない。

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2045年の各都道府県人口予測

 2045年で最も人口が減るのは秋田県で、2015年比41.2%減。2015年の102万3,000人が60万2,000人になる。このあとは青森県37.0%、山形県31.6%と東北地方が続くほか、高知県と福島県も30%以上の減少が見込まれている。全国平均の減少率は16.3%。20%以上の減少は北海道、東北、山陰、四国、南九州に集中している。

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2045年の高齢化率トップ10の都道府県

 これに対し、2045年の東京都は人口減少に入っているものの、2015年人口に比べれば0.7%上回る。神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県も8.9~12.2%の減少幅にとどまり、総人口の31.9%が首都圏に集中する。2015年が28.4%だから、首都圏への人口集中がさらに加速することになる。

 総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、2015年の26.6%が36.8%にはね上がる。地域別で見ると、秋田県は50.1%に達し、県全体が限界自治体に。北海道と東北全県、甲信越3県、香川県を除く四国の3県も40%を突破する。30%台前半にとどまるのは東京都と愛知、滋賀、沖縄の3県だけだ。

 市区町村人口は東京都中央区が34.9%増となるなど都内の中心部で人口増加が予測されているのに対し、中山間地など過疎地域の人口減少が著しい。最も減るのは奈良県川上村で、1,300人の人口が270人になる。減少率は79.4%に達する。

 川上村は民間のスーパーやガソリンスタンドがなくなり、人口流出に歯止めがかからない。移住者誘致に力を入れ、2013年からこれまでに24世帯、60人を大阪府などから招き入れた。川上村定住促進課は「今後も移住者獲得に力を注ぐ」としているが、村の存続自体が危ぶまれる状況に陥っている。

【次ページ】現実離れした人口ビジョンが続々
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