• 会員限定
  • 2018/04/16 掲載

Windows部門「格下げ」は当然のワケ、マイクロソフトが目指す先はどこか

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤 

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
マイクロソフトの名は消費者になじみが深い。多くの人の脳裏には自宅や勤務先や取引先で活躍するオペレーションソフト(OS)のWindowsがまず浮かぶ。だが、同社は3月下旬に「祖業」であるWindows部門を事実上格下げした。そこには、最終的にグーグルやフェイスブックをも超えるデータ企業に生まれ変わろうとする戦略の加速が見える。
画像
Windows事業の実質的な格下げが意味することとは
(出典:マイクロソフト)


Windows部門“格下げ”の衝撃

関連記事
 「マイクロソフトの『事業の太陽系』において、Windowsはもはや太陽ではなく、月となった」。

 米ブルームバーグ通信の解説記事は、マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が3月29日付で社員へのメールで、Windows部門の事実上の格下げを含む事業再編を発表した衝撃を、こう表現した。

 Windows担当副社長であったテリー・マイヤーソン氏は退社し、Windows開発責任者のジョー・ベルフィオーア氏はクラウドおよびAI統括責任者であるスコット・ガスリー上席副社長の指揮下に置かれるのである。

 振り返れば、1985年にMS-DOS上で動くアプリケーション・シェルの一種として登場したWindowsは、やがてMS-DOSに依存しない独立したOSとなる。そして、新バージョン開発と数年ごとのリリースがマイクロソフトの事業の核心となって行った。

 独自仕様のプロプライエタリ・ソフトウェア製品として、世界中のパソコンのデファクトOSへと成長を遂げて、経営の屋台骨を占めてきたのだから、格下げの衝撃はなおさらである。

画像
全世界のパーソナルコンピューターにおけるWindowsのOSシェアは2018年3月に88.8%と、依然圧倒的な強さを誇る

 マイクロソフトのセグメント情報によると、Windowsなどパーソナルコンピューティングは一番下位に位置付けられている。Windows 1.0の発表から30年余り。ひとつの時代の終わりを感じさせる出来事だ。

 格下げの大きな理由は、OSプラットフォーム間の壁の解消だ。以前は「WindowsのOS上で動作するアプリケーションでしかできないタスク」が非常に多かったが、今ではMac OSでもiOSでもLinuxでもAndroidでも、OSプラットフォームを超えてシームレスにこなせるようになってきた。アプリケーションがパソコンへのインストールではなく、クラウドサービスとして、あらゆるデバイスで利用できる環境になってきたからだ。

 事実、2010年に全体の売上の28%を占めた消費者向けWindows は直近で16%にまで縮小している。Windowsを含むパーソナルコンピューティング部門の売上もまた、2018年度上半期に全体の40% と、前年同期の44.5%から大幅に落ち込んでいる。とはいえ、マイクロソフトにとってWindowsは依然として15億人のアクティブユーザーと世界最大のシェアを誇るパソコンOSであり、重要な収入源であり続ける。

サービス提供の「器」としてのWindows

 今、WindowsはもはやOSとして存在するのではなく、マイクロソフトのほかのプロダクトと統合した「サブスクリプションサービス」として、同社のクラウドやAIを提供するアウトレットへと変身しつつある。時代の流れにうまく適応した例といえるだろう。

 なお、今回の事業再編は何も目新しいものではなく、ナデラCEOの考えがより鮮明な形で打ち出されたものにすぎない。「わが社にとってWindows以上に重要なものはない」と唱えたスティーブ・バルマー前CEOの後を継いだ2014年から、先見の明があるナデラ氏はクラウドとAIを同社のソフトウェアと統合して、エンタープライズ寄りのサービス提供者に生まれ変わることを志向してきた。市場はこの路線に好感を持ち、マイクロソフト株は過去1年で約40%も上げている。

 では、Windowsは今後どのような形で進化していくのであろうか。再編後の新たな事業の柱は、Windows やOffice 365、エンタープライズマネジメントを含む「体験とデバイス」、およびクラウドサービスのAzureとAIプラットフォームを含む「クラウドとAI」から成る。

 ナデラCEOは事業再編通知のメールで、「WindowsはすでにAzureクラウドの核心部分を占めつつあり、統一感のあるクラウド上のコンピューティングのインフラ作りを加速させる」「コンピューティングはもはやひとつのデバイスに縛られず、家庭から会社へ、そして移動中の体験に進化中だ」と述べている。クラウドベースで、特にビジネスに向けたマイクロソフトサービスを顧客に届ける器としてのWindowsのビジョンを描いているようだ。

 マイクロソフトが消費者を向いたBtoCから法人相手のBtoBへと重点を移す中で、Windowsと他のマイクロソフトサービスの境界線はぼやけつつある。

 2017年7月に発表したMicrosoft 365においては、「Windows 10 Enterprise(もしくはWindows 10 Business)」に、SaaS型オフィススイートの「Office 365」とセキュリティソリューション「Enterprise Mobility + Security」がシームレスにバンドルされている。つまり、Windowsがエンタープライズ向けクラウドサービスの「入れ物」のような扱いとなっているといえる。

【次ページ】マイクロソフトが「データの巨人」になる未来
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます