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  • 2023/08/31 掲載

打倒プレステのマイクロソフト、巨大買収で10兆円もかけた狙い、「ソニーの逆襲」は?

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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家庭用ゲーム機Xboxの発売元であるマイクロソフトが、Call of Dutyなどで有名なゲームソフト開発会社のアクティビジョン・ブリザードを買収すると発表してから約1年7カ月が経過した。独占禁止法違反の疑いが懸念されていたが、各国当局の審査や反トラスト裁判を経て、いよいよ買収承認の可能性が高まってきた。687億ドル(約10兆円)の巨額買収が正式に完了した後、ゲーム業界の勢力図はどう変わるのか。ライバルでPlayStationを提供するソニーはどう動くのか。マイクロソフトの真の狙いとともに、ゲーム業界の近未来をひも解いていく。
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マイクロソフトとソニーのゲーム勢力図はどう変わるのか
(Photo:Miguel Lagoa / Shutterstock.com)

独禁法違法の疑いに…マイクロソフトはどう動いた?

 独占禁止法の規制当局である米連邦取引委員会(FTC)は、マイクロソフトによるアクティビジョン買収が独占禁止法に抵触するとして、買収完了の一時差し止め請求を提起していたが、7月11日、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所がその請求を棄却した。FTCはこれを不服として控訴したが、サンフランシスコ連邦高裁(第9巡回区控訴裁判所)は7月13日、FTCの訴えを退けた

 判決は、「今回の大型ディールがゲーム機やサブスクリプション、クラウドを使ったゲーム市場における競争を阻害したり、消費者に悪影響を与えたりすることはない」と指摘した。

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マイクロソフトがアクティビジョンを買収する真の狙いとは。対するソニーはどう動く?
(Photo:FellowNeko / Shutterstock.com)

 これを受けてマイクロソフトは、矢継ぎ早に動いた。同社のアクティビジョン買収に一貫して反対してきたソニーと、「拘束力のある合意」を結んだ、と7月16日に発表した。これにより、アクティビジョンの看板ゲームタイトルであるCall of Dutyの買い切り型ゲームソフトを10年間、PlayStation向けに提供する。

 マイクロソフトは2月にも、Call of Dutyのリリースと同時に任天堂のゲーム機(次期Switch)向けに買い切り型ゲームソフトを提供する、という10年間の拘束力のある契約を任天堂と締結した。これらの動きに見られるように、独占禁止法違反の疑いに対する外堀を埋めてきた。

 こうした中、マイクロソフトとアクティビジョンは7月19日、この日に失効するはずであった買収の完了期限を3カ月延長することで合意した。

 一方のFTCは一連の敗訴と、マイクロソフトによるソニーや任天堂との契約合意を受けて7月20日、FTCが持つ行政法審判権限に基づくアクティビジョン買収阻止手続きを停止した。マイクロソフトは今後、買収計画への反対をすべて取り下げるか和解案を受け入れるよう、FTC委員への説得を試みる。

 翻ってEUでは、5月にアクティビジョン買収計画が承認された。クラウドゲーム市場の競争阻害を理由として最後まで同計画に反対してきた英国の競争・市場庁(CMA)も8月22日、マイクロソフトの再提案である「アクティビジョンのクラウドゲームの権利を仏ゲーム開発会社『Ubisoft』に売却する」を検討するとしたため、行政面からも独占禁止法違反の疑いに対する外堀はほぼ埋まった。

 マイクロソフトがアクティビジョンを傘下に収めることに対し、FTCやCMAなど各国の規制当局はこれ以上の買収阻止を試みず、競合ソニーもアクティビジョンのゲーム供給を受け続けることを条件に手打ちとする可能性が強くなってきた。

 では、アクティビジョン買収が成立した場合に、ゲーム業界の勢力図に大きな変化は起こるのだろうか。

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次のページでは、マイクロソフトのゲーム部門の現状を解説するとともに、アクティビジョン買収の真の狙いや、ソニーの戦略などについて解説します
【次ページ】アクティビジョン買収の「真の狙い」、プレステへの影響は?
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