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新型コロナウイルスの流行によって、リモートワークの普及など経済・社会のさまざまな側面で大規模かつ恒久的な変化がもたらされた。ゲームの普及もその一つだ。コロナ禍により、米国だけでゲーム人口は2015年から1億人近く増加。かつてゲームは一部の若者のみに限定されるものだったが、今では「万人の趣味」になったともいわれている。この変化を受け、マイクロソフトやメタ、ディズニーなどの米大手企業でもゲーム関連の取り組みが加速している。なぜこれらの企業がゲーム事業への進出を強化するのか、最新動向を探る。
「万人の趣味」となったゲーム
リモートワークが広く普及したように、パンデミックによって経済社会のさまざまな側面で構造的な変化が起こった。
ゲーム市場も例外ではない。最近発表されている複数の市場レポートからゲーム市場で起きている大きな変化を見てとることができる。世界最大のゲーム市場である米国の状況を見てみたい。
米国における直近のゲーム利用者数は2億1500万~2億2000万人と2015年比で1億人近く増加している。外出自粛の要請などが追い風となり、コロナ禍で利用者を伸ばした格好だ。
これは米国の有力なゲーム業界団体「Entertainment Software Association(ESA)」が毎年発表している調査レポートより明らかになったもので、ゲーム関連企業の多くが注目する数字でもある。
ESAが2015年4月に発表した
レポートでは、米国で週3時間以上ゲームをプレイしたという人の割合が42%であることが判明。ESAは、この数字をもって米国のゲーム人口を1億5000万人以上であると推計している。ただし、当時の米国人口は3億2000万人ほどで、42%という割合で計算すると、1億3440万人という数字となる。ブレはあるが、2015年当時の米国ゲーム人口は1億3000万~1億5000万人であったとするのが妥当と思われる。
そして、ESAがこのほど発表した2022年版レポートでは、米国で1週間に1回以上ゲームをプレイする割合が66%と、2015年比で24ポイント増加していることが判明。現在の米国人口は約3億3400万人、66%で計算すると、同国のゲーム人口は2億2000万人ほどとなる。米国ゲーム人口は、2015年の1億3000万人から2022年の2億2000万人と、約9000万人ほど増えていることが推測されるのだ。
ゲーム市場では、量的に大きな変化が起こっていることに加え、パンデミックの影響で質的にも大きな変化が起こったことが観察されている。
ESAのスタンリー・ピエール・ルイスCEOがProtocolの取材で
語ったところでは、米国ゲーム市場ではパンデミック以降、ゲームがストレス解消やメンタルヘルスの維持に効果的であると考える人が増加。同国では実に97%が、ゲームはメンタルヘルスに良い影響を与え、かつスキル開発やコミュニティー構築に効果的であると考えているという。
ピエール・ルイスCEOは、量的・質的な変化を示す一連のデータから、パンデミックによって「ゲームが万人の趣味になった」と指摘。この変化を受け、市場プレイヤーの取り組み・アプローチも今後大きく変わってくる可能性が見込まれる。
マイクロソフトは約10兆円でゲーム企業買収を計画
パンデミックでゲーム人口が増えたことに加え、ゲームと他領域の境界線が希薄化していること、またメタバースの盛り上がりなども手伝い、テック企業やエンタメ企業もゲーム市場を無視できない状況が生まれている。
「境界線の希薄化」に関して、ソニーのプレイステーションで映画やYouTubeを視聴できる点や、人気ゲーム「フォートナイト」で開催された音楽イベントが数千万人の集客に成功していることなどが、その具体例として挙げられる。ゲームが他のエンタメ領域へのアクセスポイントになっているのだ。
マイクロソフトは2022年1月にゲーム開発企業Activision Blizzardを687億ドル(約9兆2487億円)で買収する
計画を発表した。この額はマイクロソフトの買収案件の中で史上最大額。ゲームを中核としない企業がゲームを無視できない状況となっていることを表す好例といえるだろう。
またマイクロソフト/Xbox Game Studiosは6月12日、日本のゲーム開発企業コジマプロダクションと
提携。すでに新作ゲームを開発していることを発表するなど、ゲーム市場での取り組みを着々と拡大している。
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