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  • 2023/07/28 掲載

【単独】ダイソンCTOに聞く「日本企業との大きな違い」、世界トップたる理由とは何か

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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日本の大企業では少ない、エンジニア出身者が経営を率いるダイソン。電気機器の世界的メーカーとして確固たる地位を築き上げた今でも、常にトップであり続けるために、他社と差別化できる技術領域の開発に注力している。その技術開発について、ダイソンのCTO(最高技術責任者)、ジョン・チャーチル氏は「経営者がエンジニア出身だからこそ、短期で投資回収するのではなく、長期的な目線を持って重要な技術開発に多額の投資を行っている」と語る。技術部門トップのチャーチル氏に、技術者視点で見たダイソンの強みや日本企業との違いなどについて単独インタビューで話を聞いた。
執筆・聞き手:MBAエンジニア/Tech系YouTuber 倉嶌 洋輔、写真:大参 久人

執筆・聞き手:MBAエンジニア/Tech系YouTuber 倉嶌 洋輔、写真:大参 久人

AI時代のキャリア生存戦略』著者。1985年生まれ。大学卒業後、ワークスアプリケーションズに入社し、エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、転職し、スマホアプリのエンジニアやSEとなり、Tech領域の知見を広げる。MBA通学を機にビジネス系の知見を広げ、2017年に「テクノロジー×ビジネス」のマルチスキルを活かし、コンサルタントとして独立。法人向けに、グルメレビューサービス企業や東大系AIベンチャー、ゼネコン企業等をクライアントにしたコンサルタントとしての活動をしながら、一般向けにはYouTubeやUdemyを通して「ビジネスで使えるTech系リテラシー」を育てるための情報発信を行っている。

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ダイソン CTO ジョン・チャーチル氏
2001年、英ブルネル大学を卒業し、工学デザインの学士号を取得。同年にデザインエンジニアとしてダイソンに入社。フロアケア、空調家電、ハンドドライヤー、ロボット掃除機など、さまざまな技術やカテゴリーにまたがる50以上のテクノロジーおよび製品開発に従事してきた。2012年には東南アジアに拠点を移し、デザインディレクターに就任。またフロアケアおよびロボティクス担当のバイスプレジデントとして、コードレスおよびロボットによる新しい掃除機マシンの革新と開発を推進してきた。現在はCTOとして、ダイソンのグローバルなエンジニアリング活動をリードして問題解決に取り組み、新世代のダイソンテクノロジーを開拓する責任を担う。

「尊敬するソニー」とダイソンの共通点・相違点

 ダイソンは日本法人を設立して25周年を迎えました。日本市場においても強力な競合他社は多数存在しています。たとえばソニーは競合ながら私たちが非常に尊敬する企業で、彼らのイノベーションと多様な製品カテゴリーには敬意を表します。実際、私の家にもソニー製品がいくつもあります(笑)。

 5月にダイソン初のウェアラブル製品である空気清浄機能付きヘッドホン「Dyson Zone 空気清浄ヘッドホン」の日本での発売を開始しましたが、これにより参入したオーディオに関してもソニーとは競合に当たります。彼らも、独自に有するコアテクノロジーを武器に、幅広い商品カテゴリーを展開しており、ダイソンと似た開発方針を持っていると感じています。

 一方で、他社とダイソンは何が違うのか。それは、私たちはコアテクノロジーの研究開発への投資により注力しており、実際の使用環境を注意深く考慮した開発を行っている点です。

「世界一を常に意識」、カギはコアテクノロジー

 コアテクノロジーという言葉を強調しましたが、これは当社で言えばモーター動作やバッテリー技術、サイクロン技術などが挙げられ、ダイソンの大きな強みとなっています。

 製品ラインナップが多様化しているダイソンでは、すべての技術を垂直統合で開発することは困難です。その代わり、重要な技術領域、つまりコアテクノロジーに関しては自社で開発・管理することに焦点を当てています。

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 コアテクノロジーを確立・発展させるには長期的な投資が必要なため、5年や10年のスパンで計画を立てています。他社製品との差別化につながる技術を明確に把握し、それに基づいて投資を行うのです。またどの製品に向けてどの技術を開発するのか、あるいはどの技術を垂直統合せずに導入するのかなど、さまざまなことを考慮しながら進めています。

 そして我々にとってのチャレンジは、世界により良い製品を出していくことです。どんなことでも、常に世界記録を超えなければならない、という考え方が会社に浸透しています。なので、他社の新しい技術や製品を見ても、私たち独自の手法でアレンジを加えながら、別の技術や製品を確立させたくなるのです。

 そのためにも我々は世界中にある技術や製品を常に把握しつつ、それらをダイソンの技術や製品と比較するようにしています。我々がトップメーカーでいられるように、常に意識しているのです。 【次ページ】ダイソンの強みは「エンジニア出身の経営者」
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