• 会員限定
  • 2022/02/03 掲載

マイクロソフト対ソニーの「ゲーム戦争」、覇権奪取に“メタバース”が鍵を握るワケ

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
ゲーム業界の覇権争いが一層激化しそうだ。1月18日、マイクロソフトはアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表し、「コールオブデューティ」など人気最上位のタイトルを手中に収める。好意的な報道が多い一方で、「具体性に欠ける」「本当に買収するのか」などの懐疑論もチラホラ。これに続いて、ソニーが2月1日に、米ゲーム開発会社バンジーの買収を発表した。これにより、ゲーム業界の覇権争いが本格化したわけだが、米有識者の間では両社の真の狙いが「メタバース」と指摘されている。当記事では、買収の目的や意義について分析する。
photo
ゲーム業界の巨頭であるマイクロソフトとソニーによるゲーム会社買収が活発化し、覇権争いが本格化している
(写真:ロイター/アフロ)

マイクロソフトは「クラウド型ゲーム」で逆襲開始

 サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)率いるマイクロソフトは2021年、音声認識技術の米ニュアンス・コミュニケーションズを197億ドル(約2兆2500億円)で買収した。これをはじめ、同年だけで大小56社の企業を傘下に収め、クラウド型の生産性向上サービスを提供する企業としてさらなる成長を遂げた。

 しかし、今回のアクティビジョン・ブリザードの買収額は、2016年に子会社化したビジネス特化型SNSのLinkedIn(262億ドル、約3兆215億円)を大きく上回り、マイクロソフトとしては過去最高となった。アクティビジョン・ブリザード買収発表時の1株82ドルの時価に対して、プレミアをつけた95ドルの条件を提示したことからも、ナデラCEOがマイクロソフトの将来においてゲーム事業を重大視していることがうかがえる。

 2021年にゲーム部門で163億ドル(約1兆8780億円)を売り上げたマイクロソフトの推計によれば、世界のゲーム人口は現在約30億人であり、2030年には45億人に急伸する見込みだ。

 このうち、マイクロソフトはオンラインのXbox Liveプラットフォームのプレーヤー数が約1億人、サブスクリプション型ゲーム配信のGame Passは2500万人を擁する一方、アクティビジョン・ブリザードが各種ゲームで抱えるプレーヤー数は4億人に上り、同社の買収はマイクロソフトにとり有望な投資であろう。

 また、対抗馬PlayStationでマイクロソフトを圧倒してきたソニーへの巻き返し策としても、非常に合理的なものであると市場関係者は見ている。まず、ソニーは前世代のゲーム機PS4を総計1億1680万台出荷したのに対し、マイクロソフトのXbox Oneは5050万台と後塵(こうじん)を拝し、新世代機もPS5に及ばない。

 ところが、ソニーのサブスクリプション型ゲーム配信であるPlayStation Plusは2021年3月のメンバー4760万人から半年後の9月に4720万人へと微減傾向にあり、プレーし放題が売りのGame Passに押されているとみられる。配信と相性の良いアクティビジョン・ブリザードのゲームは、この「クラウド型ゲームで逆襲する」という戦略にうまく当てはまる。

 さらに、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザード買収の大きな狙いとして、揺籃(ようらん)期にあるメタバースの主導権を握ることが指摘されている。

 当局の認可が得られれば、2023年にアクティビジョン・ブリザードの買収が完了する予定であり、マイクロソフトの顧客と収益の裾野を広げる意味では、満足な結果を出し得るものであろう。

ソニーが“過去最高額”で米ゲーム大手バンジー買収へ

 一方、ソニーがマイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収に対し、即座に巻き返しに出たことは注目される。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は米国現地時間の1月31日、Xboxのみでプレーできるカルト的タイトルの「ヘイロー」シリーズを開発した米ゲーム大手バンジーを、同社のゲーム事業で過去最大額である36億ドル(約4100億円)で買収することを発表した。

photo
「バンジーが引き続き独立したスタジオとして成長していくことをサポートしていきます。プレイステーションのプレイヤーの皆さまに対する情熱と『最高の遊び場』の構築は今後さらに進化するでしょう」(SIE 社長兼CEO ジム・ライアン氏)
(写真:AFP/アフロ)

 興味深いことに、「テッククランチ」など米メディアの一部はこの買収の主目的を、メタバースを見据えたプラットフォーム強化であると推測している。事実、バンジーのピート・パーソンズCEOは買収発表に際して、「ゲームの世界は弊社の知的財産(IP)活用の始まりに過ぎない」と意味深な発言をしている。

 このように、2021年から続くゲーム業界における大型M&Aの加速という流れの中で、メタバース覇権のバトルを繰り広げる2大巨頭マイクロソフトとソニーの、知財と人材の獲得をめぐるせめぎ合いは激しさを増してゆこう。

【次ページ】鍵は「メタバース」、マイクロソフトの思惑は?
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます