- 会員限定
- 2018/03/14 掲載
アシックスが「JUST DO IT」ではないワケ
Vizeum グローバルCEO トマ・ル・シエリー氏インタビュー
重要性を増すメディアエージェンシー
──まず、Vizeumのことをお聞かせください。トマ・ル・シエリー氏(以下、シエリー氏):Vizeumは世界40カ国以上に展開するメディアエージェンシーで、電通イージス・ネットワークの一員として、世界的なブランドのコミュニケーション活動をグローバルレベルで支援しています。私は英国に本拠地を置くVizeumの創立メンバーの1人で、2012年末からグローバルCEOを務めています。私自身は基本的にパリで活動しています。
メディアエージェンシーというのはブランドのコミュニケーション活動を支援する組織です。ブランドのコミュニケーション活動には重要な戦略が2点あります。1つめは、顧客に向けて何を言うのか決めること。2つめは、それをどのように伝達するのかを決めること。1つめを支援するのはクリエイティブエージェンシーで、2つめを支援するのがメディアエージェンシーです。
Vizeumは後者に特化して活動するために2003年7月に創立されました。テレビや新聞などといった媒体志向ではなく消費者志向であること、デジタルエコノミーに特化していることが創立当初からのコンセプトです。
──最近のニュースがあればお教えください。
シエリー氏:ビール業界世界最大手のABインベブのグローバルにおける年間コミュニケーション予算(10億米ドル)の68%を獲得しました。同社は「バドワイザー」「コロナ」「ステラアルトワ」など200以上のブランドを持つビールメーカーです。もともと当社はヨーロッパを担当していたのですが、今回の契約で米国、カナダ、アフリカなどの市場も合わせて担当することになりました。
リアル店舗は販売のためにあるのではない
──なぜ企業はメディアエージェンシーを必要とするのでしょうか。20年前なら、消費者とのコミュニケーションはほぼマス広告を意味していました。ブランドを印象づけるテレビ広告を作って世の中に流す。しかし、これは良くも悪くも一方通行です。
考えてみてください。現在、日本の人口は約1億2700万人です。そのうち運転免許を保持している人は約8000万人。ホンダブランドに興味を持っている人はそのうちの数百万人かもしれないし、ましてシビックといった特定の車種になると対象者はもっと絞られます。それなのに日本人全員に向けたシビックのマス広告を発信することは効果的でしょうか。
今はデータを使って訴えたい対象者を特定することができます。消費者に個人的にアプローチしたければSNSがあります。さらに、以前はコミュニケーションといえば企業主導で行われていましたが、今はWebサイトやSNSを通じて消費者が自社のサービスや製品を必要としているときにアプローチできるようになりました。一方通行であったコミュニケーションが双方向へと変わってきているんですね。
こうした消費者との新しい“対話”をどう実行して、ブランド構築へつなげていくか。ビッグブランドこそコミュニケーション活動のより高い効率性を求めており、我々のような組織をパートナーにしたいのだと思います。
──コミュニケーションが双方向になると、どんな変化が訪れるのでしょうか。
シエリー氏:消費者の行動が変わってきており、ブランド構築のあるべき姿が根本的に変化しています。昔は一家そろってテレビを見るのが主流だったので、テレビ広告でブランドを訴求しておけば、消費者が外で買い物するときに効果を発揮しました。しかし、今は多くの人がテレビよりPCやモバイルにより多くの時間を割くようになり、買い物もオンラインで行うようになりました。
では企業はブランドをどこで構築するのか。それはリアルの店舗です。世界観を思う存分伝えられるフラグシップ店を通じて、ブランドを構築し、購入はオンラインで行ってもらう。Appleが好例ですね。数を絞って都心の一等地に大規模なアップルストアを構え、そこで最先端の顧客体験を提供しています。
この方法は大変理にかなっています。たとえば、ランニングシューズ。1つのモデルに数種のカラー展開があり、そこにサイズ展開が加わります。足幅も選べるかもしれませんね。そして、男性用、女性用があります。1モデルで100バリエーションぐらいだとして、モデルが数十あるとしたらストックすべきシューズの数は数千単位になります。
靴メーカーにとって、店舗ですべてのシューズのストックを維持し続けるのは大きな苦労を伴います。消費者からしても、せっかく店に出向いたのに、自分のサイズが品切れだったら、失望しますよね。ですから、店舗は世界観を伝えたり、シューズを履いて試走できるなど「顧客体験を提供する場所」とし、購入はオンラインでしてもらって自宅に発送するというスタイルを取る。そのようにしたら、企業にも消費者にもプラスの効果があるのではないでしょうか。
【次ページ】ブランドイメージを考える際には「擬人化」せよ
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
投稿したコメントを
削除しますか?
あなたの投稿コメント編集
通報
報告が完了しました
必要な会員情報が不足しています。
必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。
-
記事閲覧数の制限なし
-
[お気に入り]ボタンでの記事取り置き
-
タグフォロー
-
おすすめコンテンツの表示
詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!
「」さんのブロックを解除しますか?
ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。
ブロック
さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。
さんをブロックしますか?
ブロック
ブロックが完了しました
ブロック解除
ブロック解除が完了しました