• 会員限定
  • 2021/11/08 掲載

ヴィトン、ディオール…ハイブランド買収しまくったLVMH会長はなぜ、無謀すぎる野望を実現できたのか

連載:企業立志伝

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
2
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、ティファニー──誰もがその名を聞いたことがある70以上のブランドを傘下に持つ、フランスのLVМH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)。ラグジュアリー企業では世界トップを誇っています。この華麗なるブランド帝国を一代で築いたのが、会長兼CEOのベルナール・アルノー氏です。父親の建設会社を経営していた青年が、世界的企業を育て上げるまでには、どのようなストーリーがあったのでしょうか。今も名立たるブランドの買収を続けるアルノー氏の経営哲学の真ん中には、フランスのブランドに対する揺るがない自信と信頼、「本物」を追い求める野心がありました。
画像
“本物”を追い求めるベルナール・アルノー氏の譲れない信念とは
(写真:AP/アフロ)

今さら聞けない、LVMHとはどんな企業?

 LVМHは傘下に70以上のブランドを抱えていますが、大きく5つの事業に分けることができます。

1)ワイン・スピリッツ
 アルコール類は、シャンパンとコニャックの2つの事業から成り立っています。シャンパン事業には、有名なモエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコ・ポンサルダンなどの企業が含まれ、シャンパンの代名詞とも言えるドンペリニヨンはモエ・エ・シャンドンの製品です。コニャック事業ではヘネシーが有名です。

2)ファッション・皮革
 LVМHの売上の半分を稼ぐのがファッション・皮革部門です。ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオール、セリーヌ、ジバンシィ、ロエベ、ケンゾーなどから構成されています。

3)パフューム・コスメティック
 香水や化粧品の分野は、パルファン・クリスチャン・ディオール、ゲラン、ジバンシィなどから構成されています。

4)ウォッチ・ジュエリー
 時計・宝飾品分野は、タグ・ホイヤーやエベル、ゼニスといった高級時計に加え、ブルガリなども含まれますが、2021年1月に米国宝飾大手ティファニーを買収したことで売上が急増しています。

5)セレクティブ・リテーリング
 LVМHは、グループの持つブランドの流通をコントロールするために、免税店やデパートなども傘下に抱えています。

 これほどの世界的ブランドを抱えていれば、アルノー氏がフランスファッション界の「帝王」「法王」などと呼ばれるのも当然のことですが、そんなアルノー氏も元々はファッション界とは何の縁もない若者でした。


名門校卒業後は父の建設会社経営へ

 アルノー氏は1949年、フランス北部のルーペに生まれています。父親ジャン・アルノー氏は、フェレ・サヴィネルという社員1000人ほどの建設会社を経営していました。

 裕福な家庭に育ち成績も優秀だったアルノー氏は、フランスの名門エコール・ポリテクニク(理工科学校)に進学します。エコール・ポリテクニクは科学者を育てるための学校でしたが、アルノー氏自身は科学者になる気もなければ、卒業生の一部が関心を示す高級官僚にも興味はありませんでした。

 アルノー氏の関心は「ビジネス」に向かっており、同校での勉強が企業経営に役立つとは思えませんでした。ですが、「どうせ勉強するなら、一番上を目指したかった」(『ベルナール・アルノー、語る』p32)と考えたアルノー氏は、両親が一番いい学校だと勧めてくれた最難関のエコール・ポリテクニクへの挑戦を決め、見事に合格しています。

 「(ビジネスでも学問でも)勉強しなければ、成功できない」(『ベルナール・アルノー、語る』p33)がアルノー氏の変わらぬ信念です。

 当時から起業への関心が高かったアルノー氏ですが、父親は大学を卒業したアルノー氏に会社経営を任せたばかりか、25歳の時には早くも社長の座に就けています。


ニューヨークのタクシー運転手との会話が転機に

 父親の期待通り、アルノー氏は若い頃から経営者として頭角を現し、建設業から不動産開発へと業容を拡大しますが、1981年にフランソワ・ミッテラン氏がフランス大統領に就任したことで「フランスの自由主義経済システムの崩壊が懸念されていた」(『ベルナール・アルノー、語る』p68)ことも影響してか、1982~1984年までの3年間、米国ニューヨークで暮らし、建設会社を経営しています。

 このニューヨークでの経験がアルノー氏にとって転機となります。ニューヨークに移り住む前、初めてニューヨークを訪れたアルノー氏は、乗り合わせたタクシーの運転手に「フランスの何を知っているか」と質問します。「大統領の名前は」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「知らないね、でもクリスチャン・ディオールなら知ってるよ」(『ベルナール・アルノー、語る』p38)

 何気ない会話でしたが、この一言はアルノー氏に強い衝撃を与えます。

【次ページ】ディオール目当てに、無名の青年が巨大グループを買収
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます