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  • 2018/09/18 掲載

「カジノ法案」と言われている時点で失敗 日本でIRが定着しないワケ

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国内外の観光客の新たな目玉施設として注目される、カジノを含む統合型リゾート(IR)。日本でもIRの経済的メリットや実施法案の成立に期待し、すでに複数の地方自治体が誘致を表明している。その一方で、カジノ設置におけるギャンブル依存症への対応や治安の悪化などを懸念する声も大きく、議論が激化することは間違いない。IRは日本に定着できるのか。長らくIR事業に携わっている識者が、日本での可能性と課題、未来について語った。
執筆:谷崎 朋子
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IR実現に向けての課題や将来性について議論された。アルゼゲーミングアメリカ 取締役最高財務責任者 兼 最高戦略責任者 木下 雄吾氏(左)、PwC シニアマネージャー IRエキスパート 寺田 匡宏氏(中央)、イグナイト 代表取締役社長 Executive Producer 笠松 良彦氏(右)

ラスベガスの売上、64%はカジノ以外

 2016年12月6日に衆議院本会議で可決された「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(IR推進法)は、2018年4月27日に閣議決定され、6月19日には衆院を通過した。当面は3ヵ所を上限に整備し、入場回数や入場料など各種制限が設定されるが、2024年頃の開業に向けて、各地で動きが活発化するとみられる。だがその一方で、最大の収益源になるとされるカジノについては、ギャンブル依存症や治安の悪化といった懸念の声も多く聞かれる。

 果たして日本でIRは開業できるのか。東京・六本木で開催された「Advertising Week Asia」の講演「ラスベガスが日本に?! カジノブランディングとマーケティングの可能性」では、IR事業に携わる識者を招いて、イグナイトの笠松良彦 氏をモデレーターに、日本における課題や今後について議論が展開された。

 国内の課題を検討する前に、PwCのIRエキスパートである寺田匡宏 氏が、ラスベガスのIRの歴史をひもといた。都市開発に長く携わってきた寺田氏は、2011年にフィリピンのマニラでIR事業立ち上げに関わった経歴の持ち主だ。

 ギャンブルの街として始まったラスベガスは、1週間の利益平準化を目指し、1980年代に入るとIR開発・運営の大手Las Vegas Sandsが展示会場を設置。大規模な展示会やビジネスカンファレンスの街へと脱皮した。

 そして1990年代にはさらなる利益を求め、ファミリーデスティネーションに変容。ジェットコースターやゴルフ場、巨大噴水など、遊園地のようなリゾートホテルがメイン通りの一角“ラスベガス・ストリップ”に続々登場した。

 2010年代に入ると、ショーやショッピングなどのエンターテインメント要素はさらに強まり、今ではラスベガス・ストリップのIRの売上のうち、64%はカジノ以外といわれるまでになったと、寺田氏は説明する。

「今やラスベガスは、エンターテインメントの街と言っていい。ただ、ここに至るまでは長い時間を要している」(寺田氏)

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PwC シニアマネージャー IRエキスパート
寺田 匡宏氏

カジノの延床面積は全体の3%以内、施設の建設には地元の同意が不可欠

 日本のIR法案を見ると、IRは宿泊施設、国際会議場や展示施設、エンターテインメント施設を意味する観光魅力度増進施設などで構成され、カジノはこうした施設の1つとしてカウントされている。カジノの延床面積は、全体の3%以内に制限される。

 そもそもIR開発整備では、まず自治体などが民間事業者を選定して区域整備計画を国に申請。承認された場合、自治体は民間事業者と実施協定を締結し、その民間事業者はカジノ免許を国に申請するという流れで進む。つまり、地方議会での議決と地元の同意が必須で、「昔のリゾート法(総合保養地域整備法)のときのように、地元の同意なくリゾートマンションや国際展示場が乱立するようなことはない」と寺田氏は説明する。

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IRにおけるカジノの立ち位置

カジノを利用する4つの顧客セグメント

 カジノ客に限定して考えた場合の顧客セグメントは、4つに分けられる。1つは、IR区域から4時間県内に住む居住者を含む「地元市場」、2つ目は既存の国内外の観光客などの「一般観光市場」、3つ目はカジノでプレイした「誘発市場(VIP/プレミアム)」、そして4つ目はIRがもたらす付加価値(ホテルの客室やサービスなど)に期待する「誘発市場(マス)」だ。

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IRのカジノにおける顧客セグメント

 ここで注目したいのは、カジノ事業者と日本企業がそれぞれ担当する領域だ。

【次ページ】マカオでは1回に1億円以上賭ける“ホエール”の存在で全体の90%の売上を占める
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