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  • 2017/12/13 掲載

地方に眠る「埋蔵金」21兆円、財務省と総務省攻防のゆくえ

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全国の地方自治体が積み立てた21兆円を超す基金を巡り、財務省と総務省のさや当てが続いている。「新たな埋蔵金」と指摘し、年々膨れ上がる基金残高を問題視する財務省に対し、地方財政を所管する総務省は将来の財源不足に備えて必要な積み立てと反論する。2018年度の予算編成でも自治体に基金を取り崩させて地方交付税を削減したい財務省と、交付税を死守しようとする総務省の主張が正面から激突し、妥協点が見えない。甲南大経済学部の足立泰美准教授(財政学)は「自治体の多くが基金を積み増しているのは将来に不安があるからだ」と分析する。自治体の基金は積み過ぎなのか、必要な範囲なのか。
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基金積立額が全国の市区町村で飛び抜けて大きい大阪市。増え続ける自治体の基金を巡り、財務省と総務省がさや当てを続ける
(写真:筆者撮影)



麻生財務相と野田総務相が交付税めぐり論戦

 「借金をしながら貯金を増やす自治体が7割もあるのはいかがなものか」。「基金残高は浮いたお金ではなく、給与の削減など行革努力で作ったお金だ」。首相官邸で11月に開かれた政府の経済財政諮問会議で、麻生太郎財務相と野田聖子総務相が、自治体が積み立てた基金を巡って激しい論戦を繰り広げた。

 麻生財務相は国が赤字国債を発行して交付税で地方の財源不足を補っている点を挙げ、「国と地方で財政資金の効率的な配分を考えていくことが重要」と交付税を見直したい考えを示唆した。

自治体基金に対する財務省、総務省の主張
財務省
「帳簿上は政府に借金という負債が立ち、地方に資産が立っている。有効に使われているのかどうか見えず、政府からすると国債を発行しなくていいということを意味する。
(11月10日、麻生太郎財務相記者会見)
総務省
「自治体は将来の不安に対する備えとして基金を積み立てている。基金残高(の増加)を理由に地方財源を削ることは全く考えられない」
(11月7日、野田聖子総務相記者会見)

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 これに対し、野田総務相はやる気のある首長ほど行政改革で基金を多く積み上げているとし、「安易にたまったから削減するというやり方は、(頑張っている自治体を支援する)政府の方針に逆行する」と反論した。

 財務省が自治体の基金増加に懐疑的な視線を投げかけたのは、これが初めてではない。5月にも経済財政諮問会議で民間委員が地方の基金を「新たな埋蔵金」と呼び、物議をかもした。そこには、財政難のため交付税を少しでも減らしたい財務省の思惑が透けて見える。

 だが、自治体も財政事情が好転しているわけではない。人口減少で税収が減る中、老朽化するインフラ維持費や高齢化社会の進行による福祉予算は膨らむ一方。このため、総務省が交付税の削減に抵抗しているわけだ。

自治体の「貯金」は直近10年で約8兆円増

 議論の焦点となっている自治体の基金には

1.突発的な歳出増や急激な歳入減に備える財政調整基金
2.自治体の借金返済に備えて積み立てる減債基金
3.庁舎の建て替えなど特定の事業に備えて積み立てる特定目的基金

の3種がある。

 このうち、多くの自治体が財政調整基金を重視し、最近の積み増し率も大きい。自治体のうち約7割は、交付税不足の際に発行する臨時財政対策債の残高を増やす一方で、基金も膨らませてきた。借金を重ねながら貯金を増やしている格好だ。

 総務省は11月、全国自治体の基金積立残高を公表した。それによると、2016年度末の総積立額は21兆5,461億円。2006年度末の13兆6,022億円から10年で7兆9,439億円、58.4%も増えている。内訳は都道府県が6兆9,772億円、市町村が14兆5,690億円。都道府県は3兆円余り、市町村は5兆円近く増加した。

画像
全国自治体の基金積立額
出典:総務省「基金の積立状況等に関する調査結果」


 3種の基金ごとの内訳は、財政調整基金が7兆5,241億円。2006年度末に比べて3兆4,521億円、84.8%の伸びを示した。減債基金は2兆5,440億円で、4,042億円、18.9%の増加。特定目的基金は11兆4,781億円に達し、4兆876億円、55.3%増えている。

 特に伸び率が大きかった財政調整基金の積み増し理由について、多くの都道府県が景気変動による法人関係税の減少や災害発生時の財政出動に備えるためとしている。市町村では公共施設老朽化対策費や社会保障費の増大への対応を挙げる声が多かった。基金積立の原資としては、多くの市町村が行革、経費節減を挙げている。

【次ページ】将来のリスクにおびえる自治体の現状
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