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- 2017/12/13 掲載
地方に眠る「埋蔵金」21兆円、財務省と総務省攻防のゆくえ(2/2)
将来のリスクにおびえる自治体の現状
自治体の多くは財務省の姿勢に不安の色を隠さない。福島県西部の中心都市・会津若松市は2016年度末で約33億円の財政調整基金を確保している。市の財政調整基金積立目標は、自治体が妥当な水準で行政を行うための一般財源の規模を示す標準財政規模の10%。目標額は約29億円で、市は苦しい財政をやり繰りし、10年で3倍以上に増やした。しかし、市の人口12万2,000人はピークの1995年より1万5,000人少なく、今後も減少が続くと予測されている。平成の大合併による特例措置で手厚く交付されてきた交付税も段階的に減る。
会津若松市財政課は「過去に税収不足で年間8億円取り崩したこともある。不測の事態を想定すると、どうしても目標額程度の基金が必要」と苦しい事情を訴える。
全国の市で飛び抜けて大きい基金残高なのが大阪市。うち、財政調整基金は2016年度末で1,600億円を超す。市は予算規模が大きく、景気変動で不安定になりがちな法人関係税に依存する率が高いとして、基金を積み上げてきた。
大阪市財務課は「弁天町駅前開発土地信託事業など損失を出した大型事業を抱えるほか、万博などに備えた臨海部開発など大型計画が控えている。一定以上の基金を確保せざるを得ない」と説明した。
2016年度末で390億円の財政調整基金を持つ愛知県豊田市も、法人関係税への依存度が高いのは大阪市と同じ。豊田市財政課は「リーマン・ショックのような大不況が再び起きないとはいえない。その際、基金が足りないと立ち行かなくなる」と打ち明ける。
京都市は2016年度末で財政調整基金が底をついた。円高で地元メーカーの業績がふるわずに税収が減り、やむなく基金を使い果たしている。京都市財政課は「この状態で交付税を削られたら、どうにもならない」と頭を抱えている。
対立の落としどころはどこにあるのか
足立准教授によると、都道府県より市、市よりも町村と財政規模が小さくなるほど財政調整基金を積極的に積み増ししていた。人口減少が深刻で財政力の弱い自治体や平成の大合併の交付税優遇措置が切れるところほど、基金を増やす傾向があるという。自治体側は交付税にトラウマを持つ。自民党の小泉政権が2003年から始めた三位一体改革で交付税が5兆円規模で削減されたことだ。多くの自治体が突然の交付税削減で財源確保に苦慮した。国の財政が危機的状態にあるだけに、同じ事態が再び起こりかねないと心配しているわけだ。
そこへ人口減少と高齢化、地域経済の停滞が追い打ちをかけた。先行きに明るさが見えない中、自治体には不安ばかりが募っている。足立准教授はこうした不安が基金増加の最大の理由とみている。収益を内部留保に回し、賃金に反映させない企業の心理と同じなのかもしれない。
財政調整基金をいくら積み立てるべきという全国一律の基準はないが、一般には標準財政規模の10%とされる。ただ、足立准教授はこの基準の学術的な根拠が弱いとみている。
財務省と総務省の対立は現時点で解決の糸口が見えない。足立准教授は「自治体が目安にできる基金の積み上げ目標について、両省の協議でより適切な新基準を設定することが、論争の落としどころになるのではないか」と提言している。
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