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  • 2017/10/17 掲載

インフラモニタリングとは何か? 道路や橋梁の老朽化問題はIoTやAIで解決できるか

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道路や橋梁といった日本の社会インフラは、高度経済成長期に集中して建築され、すでに半世紀以上を経過したものも増えてきた。これらを継続的に監視し、適切かつ効率的なメンテナンスを行うためのモニタリング技術(インフラモニタリング)は喫緊の課題となっている。これまでインフラモニタリングの多くは属人的に行われてきたが、老朽化や人員不足などを背景に、IoTやAIの技術を活かした新しい手法に注目が集まっている。
執筆:田中 仁
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日本の社会インフラはもう限界に来ている

インフラモニタリングとは何か

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 インフラモニタリングとは、「構造物、建造物の状態の変化を客観的かつ継続的に把握するための技術」の総称を指す。国内における道路橋梁や道路トンネルなど、社会インフラは高度成長期に建設されたものも多く、30年以上経つ現在において、いよいよ老朽化に対するリスク管理が必要になってきている。そのような背景から、インフラモニタリングの技術や手法について注目が集まっている。

 これまでも、インフラモニタリングにはさまざまな手法が導入されてきたが、ここ最近で大きな期待を集めているのが、ITを導入したインフラモニタリングだ。IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)の進展、ビッグデータの活用、AI(人工知能)の実用化、ドローンやロボット技術の進化などにより、ITがインフラ市場のコアテクノロジーになろうとしている。

なぜインフラモニタリングが必要とされているのか

 先進国では1950年代から、急激に新技術を利用した建造物・構造物への投資が進んだ。しかし、一定のインフラができあがった後は、新設するよりもむしろ、「それをどう維持・管理し、補修していくか」ということに焦点があてられるようになった。

 特に複雑な建造物・構造物の経年変化に伴う老朽化への対応は、過去をさかのぼっても情報が少ないことも多いため、日本を含む世界の先進国において、大きな問題になりつつある。

 中でも日本では、「スクラップ&ビルド」でどんどん新しいものを作っていた高度成長期はとうの昔に過ぎ去り、人口と税収の減少が始まっていることから、いかに「サステイナブル」に、今あるものを長く使い続けて経済を維持していくかという部分に視点が推移している。

 インフラモニタリングの技術は、将来的には国と国民の暮らしを守るための必要不可欠なものといっても過言ではない。以下は、インフラモニタリングの主な課題や計画などだ。

・国内インフラ維持の現状

 内閣府発行「“使う時代”のインフラを支える技術開発」によると、戦後の高度経済成長期に建設された国内インフラ総額は800兆円にも達しており、この膨大なインフラの維持をいかに効率的に行うかということは大きな問題となる。ただ、属人的な作業でのモニタリングは、工数また予算的にも困難であり、そのためITを駆使して、効率的かつ包括的なインフラ監視を行っていく方法が模索されている。

・内閣府はSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)を計画

 内閣府は2017年4月に「SIP・戦略的イノベーション創造プログラム」というインフラ維持管理、更新、マネジメントに関する新事術の導入を柱とした計画を発表している。

 これは、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮し、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことによって、科学技術イノベーションを実現していくということを目的としたもの。

 その中でも、最新のテクノロジーを駆使してインフラモニタリング技術を早期に導入することが大きな課題とされている。

画像
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)概要
(出典:内閣府)


・インフラモニタリングの今後の国内市場規模について

 「国土交通省白書」によれば、今後20年を視野に入れると、「建設から50年を経過する施設の割合」は非常に高まってくるという。たとえば道路橋(対象:40万件)のうちの43%が、2023年3月には建築後50年以上を経過、その他トンネル(対象:1万本)の34%、河川管理施設(対象:1万箇所)の43%、下水道管(対象:約45万キロメートル)の9%、港湾岸壁(対象:5千施設)の32%が同年に50年以上経過するとされている。

 これら老朽化しつつある建造物に対する維持管理などに、これまで通りのコストを当てると、2037年には現在の投資額を上回り、必要な更新が追い付かなくなるという試算が出ている(国土交通省「国土交通省白書・第2章 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開」より)。

 インフラモニタリングの必要性は当然、こういった建造物全域が対象となるが、このうち特にインフラモニタリングが必要とされる建造物は、倒壊リスクの高い「橋梁」と「トンネル」に集中すると考えられている。

 また、矢野経済研究所の試算によれば、東京オリンピックが開催される2020年度累計で橋梁に対するモニタリングで約600億円、トンネルに対するモニタリングで180億円程度の市場規模に達すると見込まれていいる。この数字は当面のものだが、年数の経過とともに対象案件が増加するため、マーケットはさらなる拡大の可能性があるだろう。

・具体的なインフラモニタリング技術について

 これまでのインフラモニタリングの多くは「人」に依存してきた。たとえば、目視や打音検査など属人的な点検作業といった分野がそうだ。

 しかし、今後急激にモニタリング対象となる建造物が増えてくることを考慮すると、効率化とコストダウンを実現すべく、さまざまなセンサーデバイスの開発・導入を行っていくべきと考えられている。

 このようなIT利用でインフラモニタリングを推進していくことにより、従来のモニタリング市場にいたプレイヤー(行政、土木建設業、建設コンサル、大学、学会など)に加え、IT業界のプレイヤー(とくにセンターネットワーク、IoT/M2M、クラウド、ビッグデータ、データ解析など)が参入することになる。

 また、AIを利用したドローンやロボットの活用も視野に入ってきており、インフラモニタリング技術は大きな変化を遂げようとしている。各種の高機能センサーからデータを収集し、蓄積、加工、分析を行うことで可視化を実現し、高精度の診断と予測、統合管理を実現していく時代が到来している。

【次ページ】ITインフラモニタリングの5つの課題
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