- 2017/11/14 掲載
公共事業費が減少に転じる「東京五輪後」、インフラ保全の解決策は“人工知能とIoT”
社会インフラIT市場の定義と分類
この調査では、社会インフラIT市場として、道路・交通管制、鉄道、港湾、空港などの「交通」、上下水道/浄水場/排水処理などの「水」、治水・砂防などの「河川/ダム」、「防災・消防・警察」などの社会インフラ全般におけるIT関連事業を対象としている。市場規模については、ハードウェアやソフトウェア、工事(電気設備・通信設備)、SI、コンサルティング、回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含み、インフラ運営事業者(国や地方自治体、高速道路事業者、鉄道事業者など)の発注金額ベースで算出している。
2020年以降は公共事業費は削減に、期待される「スマート化」
調査結果によると、2016年度の国内の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は、前年度比3.2%減の5,986億円。同年度では、鉄道や空港など大きく伸びた分野があった一方で、道路や防災・警察関連での落ち込みが大きく、全体としてはやや苦戦を強いられたと評価している(図1)。同市場は、2020年を契機に拡大から微減に転換するとみている。その大きな要因に公共事業費を挙げている。ここ数年、公共事業費は拡大基調にある。
特に、防災・減災対策や水関連を中心とした老朽インフラ対策、東京五輪や訪日外国人客対応も含めた港湾や空港、鉄道、道路などの交通インフラ投資が期待され、中でもリニア新幹線需要のある鉄道分野への期待は大きい。地域的には、首都圏での交通インフラ投資の拡大が見込まれる。
これらの点を背景に、東京五輪開催前年の2019年頃まで公共事業費は堅調な推移が見込まれる。しかし2020年以降では、社会保障費の増大や財政再建圧力の高まりなどから、公共事業費は抑制されていくと推察している。
社会インフラITにおいては、IoTやセンサーシステム、クラウド、AIなどを活用した次世代型社会インフラITの研究が進められている。今後の社会インフラIT市場では、次世代型社会インフラITの採用(スマート化)が進むという。
これらの次世代型社会インフラITは、従来型の社会インフラITを代替する形で普及が進むが、その場合は逆に高い投資効果によりIT投資コストを抑制していくことになるとみている。
このIT投資コストの抑制効果は、行政サイドやインフラ運営事業者も重視するポイントであり、中・長期的に次世代型社会インフラITの導入が進むと予測している。
以上の点から、市場は微減基調を見込み、2022年度の国内の社会インフラIT市場規模(インフラ運営事業者の発注金額ベース)は5,720億円になると予測している。
【次ページ】保全技術者不足を次世代技術で解決
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