- 会員限定
- 2017/09/19 掲載
「ボッチャ x デジタル」でパラスポーツはマネタイズできるのか
急ピッチで進む障がい者スポーツの支援体制
日本では1964年の東京大会や1998年の長野大会を契機に普及が進み、競技レベルの高度化に伴って、「もうひとつ(Parallel)のオリンピック」としてスポーツ競技に定着した。
一方、政府も2010年から「スポーツ立国戦略」の策定に乗り出し、スポーツ振興法から全面改正した「スポーツ基本法」を制定した。
同法では、障がい者のスポーツについて、「障がいの種類および程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない」と記載されている。
また2014年4月には障がい者スポーツに関する事業が、厚生労働省から文部科学省に移管された。この移管事業には、パラリンピックなどへの選手の派遣や育成強化、障がい者スポーツの裾野を広げる取り組み、全国障がい者スポーツ大会の開催などが含まれる。
これらは2015年の「スポーツ庁」の発足に伴い、同庁が所管することになった。以降、これまでは障がい者スポーツの対象ではなかったスポーツ事業でも、新たに障がい者を対象とする動きもある。
たとえば、メダル獲得が期待される競技を対象に、専門的な支援を行う「ハイパフォーマンスサポート事業」は、2014年からパラリンピック競技も対象になった。また、国が運営するナショナルトレーニングセンター(NTC)や国立スポーツ科学センターも、障がい者との共同利用や障がい者のための拡充整備などについて、文部科学省の有識者会議で議論されている。
さらに2020東京大会開催に向けた「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」により、すべての国務大臣が参加する大会推進本部が内閣に設置された。
障がい者スポーツ所管の変更や東京大会開催の決定などに伴い、障がい者スポーツ関係の予算も増加する傾向にある。文部科学省所管分の障がい者スポーツ関係予算を見ると、2014年度に約17億円、2015年度に約26億円、そして2016年度は約43億円(概算要求)が計上されている。
予算増加でも課題が山積する理由
ただし、国の障がい者スポーツ関係予算は増加しているものの、課題も山積している。その1つが運営の難しさだ。もともと障がい者スポーツの実施率は健常者に比べて低い。一般スポーツ競技団体と障がい者スポーツの競技団体との関係は、状況が異なる。たとえば、障がい者スポーツは、障がい者の身体的・社会的状況により実施状況が違う。競技を統括する団体は、各競技の規模や体制が異なるほか、同一競技でも身体障がいや知的障がいのレベルによって、別々の競技団体が併存することも多い。さらに後述する「ボッチャ」や「ゴールボール」など、障がい者スポーツから発祥した競技には、対応する一般スポーツ競技団体がないことも課題だった。
現在、日本障がい者スポーツ協会に登録・準登録する62競技団体のうち、法人格を有しているのは32団体だ。しかし、専用の事務所や専任事務員がいないことから、組織基盤が脆弱であると指摘されていた。そこで2015年に日本財団が「日本財団パラリンピックサポートセンター」を開設し、25競技団体の共同オフィスを設置したという経緯がある。
また、「教育機関における障がい者スポーツの普及活動の推進」も、取り組むべき課題の1つだ。これについては、東京都の学校教育でも「オリパラ教育」を推進中である。
たとえば、都立立川ろう学校や、各小学/中学/高校の「総合的な学習の時間」などでは、関連教育が実施されている。また国際パラリンピック委員会が、学校教育を通じて大会の魅力を伝えるため開発した教育教材「I'm POSSIBLE」なども役立っているという。
一方、競技参加者以外の課題もある。それが、ボランティアの養成、スポーツ用具の開発、施設のバリアフリー化、スポーツ観戦ファンを増やす施策などだ。障がい者スポーツの普及については、さまざまな障がい者の身体的・社会的な状況があるため、競技レベルや地域に応じた取り組みが不可欠だ。
今、問われているのは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会“後”を見据えた施策である。スポーツを通じた障がい者に対する理解や、障がい者のさらなる社会参加に向け、どのような社会を実現するのか。そのために実施すべき施策は何かを考える必要があるだろう。
【次ページ】デジタル技術を融合で「かっこいい」&「稼げる」パラスポーツを
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR