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  • 2017/08/25 掲載

元アエラ編集長 浜田敏子氏が女性リーダーに捧ぐ「独身貯金」のススメ

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グローバル時代に競争力を確保するため、働き方改革やダイバーシティへの対応は企業の大きな課題となっている。元『AERA(アエラ)』編集長で、現在、『BUSINESS INSIDER JAPAN』の統括編集長を務める浜田敬子氏は「多様化の時代にこそ女性のリーダーが求められる」と語る。一方、グローバルのメディア・エージェンシーであるEssence Digital(エッセンス デジタル)のアジア太平洋地域 代表取締役社長の松下恭子氏は「リーダーシップのあり方が『分散型』にシフトしていく」と考える。今、女性のリーダーが求められている理由と、女性がリーダーシップを発揮するために必要なことを議論した。
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写真左から松下恭子氏、浜田敬子氏(Advertising Week Asiaにて)


離職後に「復帰しにくい」のが日本企業固有の課題

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 男女雇用機会均等法が施行されたのは、今からもう30年以上前の1986年。たしかに、さまざまな分野や業種に女性が進出を果たし、総合職の女性は増えている。しかし、結婚や出産というライフイベントにより、離職を余儀なくされる女性がいるのも現実だ。

 「実は海外のキャリアのほうが長い」と語る松下氏は、学生時代にドイツで生活費を稼ごうと広告代理店でバイトをしたことがきっかけとなり、広告業界に入った。このときのチームでものを作る体験が大きなインパクトとなり、メディアや広告でキャリアを重ね、数年前からはプロダクト全体を見るマネジメントを担当。現在はメディア業界でリーダーとして活躍している。

 20代前半にシカゴの広告代理店から東京に赴任していた時期もあるという松下氏は、当時の経験から「変わっていることと根本的に変わっていないことがたくさんあると感じる」と述べた。

「マネージャーレベルの女性が増えてきている実感はあります。統計では、20代前半から30代後半までの女性の約40%が結婚や出産で仕事を離れるという数字があるんですが、今のほうが、女性が残っている実感があります。ただ、仕事を離れた女性の約93%が戻りたいと思っているのに戻れていないという数字もあり、これが日本の特殊な事情だと思います。海外でも女性が仕事を離れるときがありますが、日本よりも戻れる環境は整っていて、戻るかどうかは個人の判断にゆだねられるからです」(松下氏)

 一方、浜田氏は新卒で朝日新聞社に入社、28年間の勤務のうちの17年間を『アエラ』編集部で過ごし、女性初の編集長に就任。2017年3月末に朝日新聞社を退社し、4月からデジタルの世界に飛び込んだばかりだ。浜田氏が指摘するのは、今の就活生が「あえて、一般職を選ぶ人が多い」ということ。といっても、旧来の腰掛けを目指してなのではなく、長く働きたいからこそという点だ。

「総合職になると、ものすごいハードワークで長時間労働、とてもライフイベントと両立できる自信がないと、能力があるのに、総合職を目指さない状況が生まれているんです」(浜田氏)

 この点において、実際にリーダーとしてマネージしている2人が実践したのは、チームによる効率化、全体として成果を上げようというシステムだ。

 浜田氏の場合、自身は「全然良いロールモデルではなく、『アエラ』編集長時代は会社に一番最後まで残っていた」そうだが、編集部自体は30人中20人が女性、その半分がワーキングマザーという女性主体の陣容となり、必然的に個人の事情に合わせた仕事の進め方に切り換えた。

「18時や18時半に帰らないと保育園のお迎えに行けないというメンバーが多かったので、とにかく週刊誌の締切までに、自分が担当する企画を面白く仕上げてくれればよいという方針に切り換えました。早く帰る分、夜や朝を使ったり、子どもが病気のときは家で仕事をしてもかまわないということです。これは編集長の私の裁量で行いました。そうしないと、チームとして結果が出せないなと思ったので、とにかくみんなが一番働きやすく、パフォーマンスがあがることを重視するしかなかったのです」(浜田氏)

 これは松下氏も同様で、フレックスタイムを活用した協力体制を敷いている。仕事なので結果を出すことは重要だが、男性も女性もいる中で個々人の働き方をサポートしていくこと、それをコミュニケートしていくことを心がけている。

 なぜ彼女たちにそれが可能だったのかというと、自身にその経験があったからだ。子どもを抱えてことがどういうこと状況なのかがわかっていた点は大きい。

 たとえば、子どもが熱を出したら会社に出社できない。上司や同僚にこうした経験がない場合、なかなか理解してもらいにくい。何より、言い出す側が「子どもがいる人を雇うと面倒だと思われるのではないか」「責任のある仕事を任せてもらえないのではないか」というスパイラルに陥ってしまう。そうならないよう、メンバーとコミュニケーションを取りながら、問題に向き合っていくことが必要となる。

 メンバーがどういう悩みを抱えていて、どうすれば仕事を続けることができるのかを理解できるからこそ、サポートを行うことができるのだ。

リーダーシップが「分散型」に変わりつつある

 日本の職場にもさまざまなバックグラウンドを持った人が入ってきている。今後、少子化で労働力が不足してくるのは明らかで、人種や性別、年齢を問わず、多様性を受け入れていくことが企業の課題となる。

 そういう時代だからこそ、女性のほうがリーダーシップをとるのに向いていると2人は述べる。異なるバックグラウンドの人たちがどうすれば働きやすいかを考え、コミュニケーションを丁寧に取りながら進めていくことができるからだ。

「日本企業は男性が多数をしめています。これまでは従来のマネジメントでよかったと思いますが、今後、いろいろな価値観の人をまとめるときに、共感性を持って、コミュニケーションを丁寧に取りながらマネジメントを行うのは、より女性が向いているのではないかと考えます」(浜田氏)

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「情報の感度、好奇心は女性が向いている」と語る浜田氏は、課題として決断力を挙げる

 多様性の時代には、個性を持ったリーダーが強力なリーダーシップを発揮する従来型のマネジメントではなく、一つの成果にむかってメンバー全体、組織全体を押し上げていくようなマネジメントが求められているといえる。

 松下氏が提示するのは、分散型リーダーシップ(ディストリビューテッドリーダーシップ)だ。リーダーシップのあり方が、10年前のトップダウン型から、個々の専門知識、能力を集めてそれを全体としてマネジメントするという「分散型のリーダーシップ」に変化しているのだ

「みんなの持っているナレッジやスキルを集め、それをまとめて、次のステップの話ができるのがリーダー。もうトップダウンがリーダーではないんですね。特に、今後は一人ですべてを決められることは少なくなるでしょう。経営、エンジニアのナレッジが必要だったり、実際の流動的なマーケットの情報を持っている人だったり、その人たちとどうすればうまく連携していけるかを考えられるリーダーが求められていると思います」(松下氏)

 これは、日本および海外も同様の流れだ。

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「リーダーとして求められているのは、みんなが自分の力を発揮できる環境作り」と述べる松下氏

【次ページ】女性勧める「独身貯金」とは?
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