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日本企業のCEOの多くが、人材の確保、保護主義的な政権の台頭、過剰な規制などに懸念を持っているが、それは世界の経営者も同じようだ。PwCが行った「第20回世界CEO意識調査」によれば、特に人材に関して懸念を抱くCEOが20年間で2倍以上になったという(1998年の31%から、2017年には77%まで増加)。中でもデジタルとSTEMに長けた人材の確保は、過半数のCEOが採用上の課題とした。日本のCEOも71%が今後5年、テクノロジーが競争のあり方に非常に大きな影響を及ぼすと回答。その一方で、日本のCEOが「高度なデジタル・スキルを身に付けているかどうか」への回答は世界最低水準となった。
日本は「短期の売上拡大に自信ある」が大幅低下
PwCが行った「第20回世界CEO意識調査」によれば、今後12カ月間の自社の成長見通しに対し非常に自信があると回答したCEOは38%(2016年は35%)で、2017年に世界経済の成長が上向くと回答したCEOは29%(27%)だった。
一方で、売上拡大に自信があると回答した割合が低下した国はスペイン、メキシコ、日本で、なかでも日本は2016年の28%から14%まで大幅に低下した。
世界のCEOは今後の経済に強い自信を示しているものの、82%が経済の不確実性、80%が過剰な規制、77%が鍵となる人材の確保に対して強い懸念を抱いていることもわかった。中でもトランプ大統領誕生をはじめ、59%のCEOは保護主義への懸念を表明するなど、保護主義に対する懸念を強めており、米国とメキシコのCEOでは、その割合が64%まで上昇した。
日本のCEOは、88%(世界は77%)が鍵となる人材の確保、82%(世界は70%)が技術進歩のスピード、73%(世界は59%)が危機に対する備え、72%(世界は61%)がサイバー攻撃といった面で懸念を抱いていることがわかった。
またグローバリゼーションが貧富の格差是正あるいは気候変動の問題解決に貢献してきたかという点について、世界のCEOは懐疑的な結果となった。こうしたグローバリゼーションがもたらした結果に対する見方は、PwCが1998年に実施した「第1回世界CEO意識調査」とは対照的な結果となったという。
「CEOは成長の機会に対する自信を深めている一方で、次の3つを重要課題として挙げています。それらは、『デジタル時代に適した人員を育成するための人材・テクノロジー戦略』、『バーチャルな取引が一段と増えつつある世界でのビジネスにおける信頼維持』、『これまで以上に社会との関わりを深め問題解決に向けて協働することで、グローバリゼーションがすべての人に恩恵をもたらすようにすること』です」(PwC グローバル会長 ボブ・モリッツ氏)
テクノロジーは企業の競争や成長に切り離せないものに
モリッツ氏が指摘するように、ビジネスにおいてテクノロジーの重要性はますます増している。CEOの23%は「テクノロジーが今後5年間で、自社の業界における競争のあり方を完全に変えてしまう」と考えているという。
一方で、CEOの87%はソーシャルメディア活用にはリスクがあり、業界の信頼に悪影響を与えかねないともみている。また、CEOの91%は今後5年間において、データの機密性や倫理の問題が自社に対する人々の信頼に影響を与える可能性があると回答した。
さらにセキュリティの問題が大企業で複数発生したことを受けて、サイバーセキュリティ、機密情報の漏えい、ITシステムの大きなトラブルをステークホルダーの信頼に対する主要な3つのテクノロジーの脅威と位置付けた。
なお、日本のCEOは、51%(世界は60%)がテクノロジーが過去5年間で、自社の業界における競争のあり方を完全に変えた、あるいは大きな影響力があったと回答。また、71%(世界は75%)は、今後の5年間も非常に大きな影響を及ぼすと回答した。
ただし、日本のCEOのITリテラシーは「ソーシャルメディアを積極的に活用」は37%(世界は43%)、「活字メディアよりもデジタルメディアを多く利用している」は31%(世界は69%)、「高度なデジタル・スキルを身につけている」と回答した割合は29%(世界は55%)、プライベートでの買い物はほぼオンライン上で行う割合は21%(40%)といずれも世界を大きく下回る結果となった。中でも「高度なデジタル・スキルを身につけている」の回答は、世界最低水準となったという。
【次ページ】CEOがもっとも重視しているのは「ソフトスキル」
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