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  • 2016/11/10 掲載

ホンダ、ドゥサンはなぜ製造改革するのか?ダッソーが「価値ある体験」の重要性を解説

#3DEXPERIENCE

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仏ダッソー・システムズは11月3、4日の2日間、中国上海において同社のグローバルイベント「Manufacturing in the Age of Experience」を開催した。主に中国の顧客企業を対象にした同イベントの基調講演では、同社が提唱する「エクスペリエンス・エコノミー」の重要性が語られたほか、それを実現する「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」のユーザー企業が登壇。韓国の総合重工業企業であるドゥサンや、日本の本田技研工業(以下、ホンダ)が取り組む製造現場改革事例などが紹介された。
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仏ダッソー・システムズのグローバルイベント「Manufacturing in the Age of Experience」が中国上海で開催された

製造業も「モノ」より「価値ある体験」を重視する

 近年、ダッソー・システムズは「モノ」だけを売るのではなく、「モノ」を利用することで得られる「エクスペリエンス(体験)」を提供する重要性を訴えている。

 その体験には、製品の使い勝手や、デザイン、「利用する楽しさ」といったブランド体験、そして購入に至るまでの企業との対話も包含されている。ユーザーが求めているのは「製品の所有」よりも「製品が提供する価値を体験すること」であるという。

 こうした体験を提供する「エクスペリエンス・エコノミー」を実現するために製造業は、その生産プロセスを抜本的に変革する必要がある。そのためには、従来の製造プロセスである「基本計画」「設計・試作」「調達」「生産」「出荷」の各工程でのサイロ化から脱却し、迅速かつ俊敏なアジャイル化による開発プロセス/マニファクチャリングに移行し、ユーザーのニーズに対応しなければならない。

 さらに、エンジニアリングや製造現場といった異なる部門間でデータを共有/連携させ、個々のオペレーションを完全に同期させることも不可欠である。これにより、製造現場のダウンタイム削減や、状況の変化に応じた柔軟な対応が可能になるからだ。

 しかし、こうしたアジャイル化による開発プロセス/マニファクチャリングを具現化している企業は、世界でも少数である。11月3日の基調講演に登壇したダッソー・システムズで、デジタル・マニュファクチャリングの仮想工程設計ツールであるDELMIAブランド担当CEOを務めるギョーム・ヴァンドルー(Guillaume Vendroux)氏は次のように説明する。

「世界でも多様化する消費者のニーズに迅速に対応できる企業は少ない。今後の製造業は、デジタル化への移行を促進し、単一のプラットフォームで情報(データ)を管理/活用することが不可欠だ。それを実現するのが『3Dエクスペリエンス・プラットフォーム』である」

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ダッソー・システムズで、DELMIAブランドCEOを務めるギョーム ヴァンドルー(Guillaume Vendroux)氏

 3Dエクスペリエンス・プラットフォームとは、3Dモデリングや、製品開発、解析、シミュレーションといった製造業のビジネスに必要なソリューションを提供する統合プラットフォーム(基盤)である。基本、クラウドベースでの提供だが、オンプレミス環境にも対応している。

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ダッソー・システムズが2012年に打ち出した「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」の構成要素

 ヴァンドルー氏は、3Dエクスペリエンス・プラットフォームによるデータ管理/活用の重要性を力説する。IoT(Internet of Things)やセンサーから収集した膨大なデータをリアルタイムで分析してインテリジェンス(情報)に昇華させ、デジタル・プラットフォーム上でシミュレーションに活かす。適切な環境で分析し、必要な知見を得ることで、アジャイル開発/マニファクチャリングに必要な「モジュール化」や「分析予測」も可能になるというわけだ。

「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」で「計画」から「出荷のその後」までを把握する

 基調講演では、オペレーション・プランニング・ソフトウェアであるQuintiqブランドのCEOを務めるロブ・ヴァン・エグモンド(Rob VAN EGMOND)氏とエンタープライズ検索/分析機能を提供するEXALEADブランドのCEOであるモルガン ツィマーマン(Morgan ZIMMERMANN)氏を交え、3Dエクスペリエンス・プラットフォームによるバーチャル空間でのインダストリー・バリュー・チェーンの展開デモが披露した。

 デモの内容はこうだ。グローバルで複数の生産拠点を持つ製造企業の特定拠点(ブラジル)でトラブルがあり、部品の納期遅延が発生する。こうした有事でも、3Dエクスペリエンス・プラットフォームによって、全体の生産スケジュールを遅延させることなく製造するというものである。

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バーチャル空間でのインダストリー・バリュー・チェーンの展開デモ

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 DELMIAでは世界中の生産拠点の稼働状況が、地球儀上(の地図)で可視化される。ここでブラジルの生産拠点で納期遅延と工場の稼働に課題があった場合には、地図上の工場が、異常を示す赤色で表示される。ユーザーは異常拠点のアイコンをクリックし、同拠点に、どのような問題が発生しているのかを把握する。同時に、ブラジルの生産拠点で出した“穴”を埋めるのには、ほかのどの拠点で稼働率を上げるのが最適なのかを瞬時に判断し、変更をする。こうした変更決定は、あらゆるデータを包括的かつ高度に分析する必要がある。

 さらに、ブラジルの生産拠点では、どのような問題が発生しているのか、「どの生産ラインで」「どの設備に」「どのような不具合が発生しているのか」を、ドリルダウンして特定する。

 以前であれば、こうした情報はスプレッドシート上に表示され、ソリューションごとに分断されていた。しかし、3Dエクスペリエンス・プラットフォームであれば、データをシームレスに共有し、最適なソリューションでデータを活用することができる。また、ブラジルの生産拠点で発生したトラブルを分析することで、他拠点のトラブル(故障)予兆を察知し、事前に対策を講じるといったこともできる。なお、3Dエクスペリエンス・プラットフォームは、外部データを取り込んで市場の需要予測をすることも可能だという。

「デジタル・ツイン」による3Dサイクルモデルのシミュレーション

 この講演では、3Dエクスペリエンス・プラットフォームのユーザー企業として、韓国のドゥサン(斗山)インフラコア、日本の本田技研工業(以下、ホンダ)などが、それぞれの取り組みを紹介した。

 韓国の総合重工業企業であるドゥサンは、2020年までに世界の産業機械のトップ3になる目標を掲げている。そのために同社が実施しているのは、「デジタル・ツイン」による3Dサイクルモデルのシミュレーションだ。

 デジタル・ツインとは、実際の製品や製造ラインから収集したデータをリアルタイム分析し、物理世界の製品やシステムで発生していることをデジタル上で再現する手法を指す。これにより、物理世界で問題が発生した場合には、リアルタイムでデジタルに反映されるため、すぐに問題の特定、解消ができるというわけだ。

【次ページ】ドゥサン、ホンダ「製造改革」の取り組み
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