- 会員限定
- 2016/08/05 掲載
ビッグデータに取り組むITベンダーランキング 成果の8割はスモールデータから得られる
ガートナー 鈴木雅喜氏が解説
デジタル・ビジネス、ビッグ・データ、クラウド、仮想化といった幅広いトレンドをとらえITインフラの中でも、データやコンテンツ周りを中心とした視点から分析と提言を行っている。製造業種で10年以上顧客と向き合う技術者あるいは開発者として経験を積み、その後事業企画に携わった後、1997年、ガートナー ジャパンに入社。ユーザー、ベンダーの双方と向き合うことで得られた知見を基に、戦略的なアドバイスを提供している。
ビッグデータから「アルゴリズム・ビジネス」へ
ビッグデータへの取り組みは高まっているものの、大きな成功を収めている日本企業はまだほんの一握りに過ぎない。ビッグデータ活用を成功へ導くためには、まず現在の自社の状態を正しく認識し、活用の方向性を正しく見定めることが重要だ。
ビッグデータへの取り組みは簡単ではない。しかし無視するわけにもいかない。ビッグデータをビジネスに活かすことは、デジタルビジネスという非常に大きなシナリオの中で重要だという理解は進んでいると考えて良いだろう。
デジタルビジネスとは、デジタルの世界と現実の世界を融合させて生まれる新たなビジネスのことを指しているが、多くの場合、ビジネスでは情報を集めて市場や顧客を分析し、理解し、それを基に判断を下して、実際の行動を進めるというプロセスを取っている。
この一連のPDCAサイクルを回していく中で、どんなテクノロジがマッピングされるかを見てみると、まずクラウド、ソーシャル、モバイルが重要なプラットフォームになることは間違いない。
その上で情報収集のフェーズでは、センサやモバイルデバイスを介して情報を引っ張ってくるIoTが今、注目を集めている。それから分析ツールを使ってデータを分析し、次に判断を下す場面では、人工知能のアルゴリズムを使って判断を自動化しようという動きが出てきている。行動の部分ではまさにロボットで、いよいよ現実のビジネスの中でロボットが「人がどう行動すべきか」というアドバイスし始めているし、ロボット自身が何か作業するということも見えてきている。
このうち特にガートナーでは判断の自動化を目指していくことが必須だと考えており、これからビッグデータの活用は、知見を得るところから予測、判断の自動化へと進み、そしてビジネスプロセスの自動化へと確実に動くと思われる。
ビッグデータ活動の成果の8割が「スモールデータ」によるもの
ビッグデータとは、Volume(量)、Velocity(速度)、Variety(多様性)という3つのVの観点から、これまでとは異なるデータを指すものだ。とはいえ、定義そのものにそれほど意味はない。それよりも重要なポイントは、「テクノロジの活用度合い」と「ビジネス上の成果」という2軸から、ビッグデータ活用の方向性をしっかりと頭に置いておくことだ。たとえばIT部門の視点では、ビッグデータに取り組まなければならないので、まずHadoopを使ってみようという発想になる。それはそれで必要だが、企業が最終的に求めるのは、売上や利益のアップといったビジネス上の「成果」だ。まずは求める成果や目標を社内に明示して、テクノロジの活用度合いとビジネス上の成果を共に上げていくことが重要だ。
しかし、すべての企業が、いきなり目指すべき方向に進むことができるわけではない。そこで最終目標に到達するまでの過程に目を向ける必要がある。
社内には、ビッグデータや高度なテクノロジーを使わなくても、場合によってはPCレベルでデータ分析ができ、リアルタイムに現場に分析結果を提供することで大きな価値が生まれるものが、まだ眠っているのではないか。
その際に利用するデータ群、それは1GBかもしれないが、こうしたデータ群を「スモールデータ」と呼ぶなら、ビッグデータ活用の方向性をしっかりと踏まえた上で、まずはスモールデータへの取り組みを開始し、スモールデータを活用して、ビジネス上の成果を生むことを目指していただきたい。
その取り組みの中で、IT部門は世の中で何が起こっているのか、どんなテクノロジが出てきているのかを把握し、また試行錯誤を繰り返すことで、経験値を高めていくのだ。
ユーザー調査の結果も踏まえて、ガートナーでは2018年までに、ビッグデータ活動の成果の8割が、スモールデータによるものとなると見ている。ビッグデータの活用で大きな成果を得るには、それなりの時間がかかることを見込んでおく必要がある。
【次ページ】ビッグデータに精力的に取り組むITベンダーランキング
関連コンテンツ
PR
PR
PR