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  • 2016/07/11 掲載

ユーグレナ 出雲社長の「ミドリムシで地球を救う」という信念が未来を拓く

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ミドリムシ、ユーグレナ、最近では関連商品をよく見かけるようになった。しかし、こうして世の中に普及させるためにはユーグレナの大量培養が必須。そして、その屋外大量培養技術を確立し、事業化に成功したのが日本のベンチャー企業、ユーグレナだ。

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屋外大量培養に世界で初めて成功したユーグレナ 代表取締役 社長 出雲 充氏

世界の難問にユーグレナを持って取り組む

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 グローバルな視点でさまざまな課題の解決にチャレンジするアントレプレナー(起業家)はオープンイノベーションの鍵をにぎる重要な存在だ。そんなアントレプレナーの育成・支援を目的としたイノベーションアワードの5回目である「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2016」が開催された。6月7日に行われた受賞式では、ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充氏が登場し、「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」と題して講演を行った。

 「ユーグレナ」は東京大学発のベンチャー企業で、2005年に世界で初めてミドリムシ(学名:ユーグレナ、以下はユーグレナとする)の食用屋外大量培養に成功し、ユーグレナの粉末だけではなく、緑汁、クッキー、ヨーグルトなど、多種多様な商品を展開。2012年に東証マザーズに上場、2014年3月には東証一部へ市場移行している。また、ユーグレナから抽出・精製するオイルはバイオ燃料に適していることから、バイオジェット燃料、バイオディーゼル燃料への研究開発も行っているという。

 そもそも、屋外大量培養はこれまで長い間不可能とされてきた技術領域だ。世界中の研究者が試み、行きつけなかった成功に、出雲氏はどうやってたどり着いたのだろうか。

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世界の食料問題、栄養失調の問題を解決し、またエネルギーの問題を解決する。技術的なイノベーションを持って、社会的な影響を与えていくということが私たちの目的だという出雲氏。

バングラデシュで直面した課題

 出雲氏はごく一般的な家庭に育った。父親は会社員、母親は専業主婦、兄弟が一人。もともと起業志向だったわけではなく、何となく自分は父親と同じように会社員になると思っていたという。

 そんな出雲氏のターニングポイントとなったのは、バングラデシュを訪れたことだった。大学1年生の18歳のとき、グラミン銀行のインターンシッププログラムに参加したのだ。海外に行くのは初めてという青年にとって、南アジア、バングラデシュでの体験はショッキングだった。それは、「これまでの人生で思ってもみなかった経験」だ。

 出雲氏が事前に考えていた問題は貧困や飢餓だった。しかし、南アジアの国、特にバングラデシュでは食べ物は豊富だ。豆、カレー、お米、各種の炭水化物、食料品はたくさんある。多くの子どもたちはさまざまなカレーライスを食べることができるが、口にするそのカレーには新鮮な野菜や魚、肉などは入っていない。野菜や魚、肉の鮮度を維持したまま保存することが難しく、貴重だからだ。

 お腹を満たすことはできるが、新鮮な食材は高価なため、ビタミンやミネラル、タンパク質などを十分に摂取することができず、栄養不足に陥る子どもたちが多い。「食料問題は食糧不足なのだと考えていた。しかし、そうではなく、問題は栄養不足」なのだ。

 これはメディアやドキュメントによる情報ではなく、実際にその土地に行き、その生活を見聞きする過程でわかったことだ。世の中で言われているイメージでは本質的な課題は捉えられないのだ。

 こうして課題を捉えた出雲氏は、その課題を解決しようと決意する。

ユーグレナには人間に必要な栄養素の大半が含まれている

 日本に帰ると、栄養不足の問題をどう解決するか考え、研究のテーマを変えることになる。貧困により陥ってしまう栄養不足をうまく解消してくれるものはないかと探し、行き着いたのがユーグレナだったのだ。出雲氏は、東京大学農学部に転部した。

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59種類もの豊富な栄養素を持つユーグレナには、たとえばフルーツのビタミン、肉のタンパク質、それらが同時に含まれている。人間が生きていくために必要な栄養素の大半をユーグレナは含んでいるといっても過言ではない。

 ユーグレナは約0.05mmの単細胞生物で、豊富な栄養素を持つ。ユーグレナの特異な点は、藻類であると同時に動物性の側面もあることだ。

 ご存知のように、植物は太陽光を使って光合成を行い、動物は植物を食べることで植物が生成する有機物を身体に取り込む。私たち動物は植物やより小さな動物を食べ、内部に持つフードチェンジシステムでエネルギーに変えている。

 光合成を行う植物は動かないが、ユーグレナは植物であると同時に動物なのだ。ビタミン、タンパク質など、59種類もの豊富な栄養素を持つ。出雲氏は「人間が生きていくために必要な栄養素の大半をユーグレナは含んでいるといっても過言ではない」という。

【次ページ】ユーグレナの大量培養に成功した理由
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