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- 2016/06/07 掲載
独シーメンスの「Sinalytics」は、どのようにインダストリー4.0を実現するのか
Sinalyticsは「デジタル化の可能性」を引き出す
「TERADATA UNIVERSE TOKYO 2016」で登壇したSkubacz氏は「これは単に消費者の世界だけの話ではなく、産業界においても同様だ」と指摘。「たとえば機械のメンテナンスは、以前の定期的な保全から、データ分析を活用した予測保全へ、さらには各機械の状態を見ながら保全する方向へと変わってきている」と説明する。
「デジタル化というコンテクストの中で、シーメンスはさまざまなテクノロジーを活用している。接続の技術、クラウドの技術、あるいはデジタルデータの技術、そして仮想と現実の世界を組み合わせて、顧客のバリューチェーンをすべてカバーしている」
そしてデジタル化の可能性を引き出すために同社が開発したのが、データ分析プラットフォームのSinalytics(シナリティクス)だ。
「Sinalyticsはデータ主導型サービスの基盤となるもので、リモート監視、データ分析、サイバーセキュリティなどの機能を1つのプラットフォームとして結集したものだ。Sinalyticsによって、我々のデジタルサービスや産業ソフトウェア、およびシステムに強力なデータ分析能力が提供されることになる」
現在Sinalyticsには、風力タービンやビル、列車など30万台を超える装置やデバイスが接続されており、そこにサイバーセキュリティのテクノロジーとアナリティクスの技術が組み合わされることになる。
「このSinalytics上で、我々は新たなアプリケーションを開発していく。それによってより可用性の高い、コストの削減が期待できる、あるいはパフォーマンスが向上するような高セキュリティのソリューションを顧客に提供している」
Sinalyticsが新たなビジネスモデルを可能にした
たとえばシーメンスの顧客企業であるスペインの鉄道会社Renfeでは、マドリード~バルセロナ~マラガを結んでおり、列車が15分以上の遅延をした場合、すべての乗客に対して払い戻しを行うサービスを提供している。「これは鉄道インフラの安全性が非常に高いレベルで保証されていなければ、実現できないサービスだ。シーメンスでは、Renfeとの間で可用性保証付きのパフォーマンス契約を結び、定刻通りに電車が運航されることを担保している。いわばまったく新しいビジネスモデルだ」
具体的には、列車に装着された数百種類のセンサーが列車の運行に影響を与える重要なパラメータを継続的に監視しており、収集されたモニタリングデータを分析することで、Sinalyticsがより高い可用性と信頼性を担保している。
「我々のパフォーマンス保証は、Sinalyticsによるアナリティカルなインサイトが可能にしているものだ。実際の定時運行率は99.9%以上を達成しており、60%の乗客が飛行機から鉄道に乗り換えたとのことだ。我々の極めて高度なアナリティクスが、Renfeの可用性を保証し、リスクの分担までを可能にしている」
【次ページ】新しいアイデアを試すために作った組織「Smart Data Lab」
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